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2014/8/3更新

ガザからオバマ大統領へ、そして全世界の人々への公開書簡

オバマ氏よ、一晩ガザの病院で過ごしたら、歴史が変わるかも

北ノルウェー大学病院救急医(ガザのシファ病院でボランティア)マッズ・ギルバート(7月22日)
翻訳:脇浜義明

今、ベッドの上で、独り、止めどなく涙を流しながら書いています。苦痛と悲しみと怒りと恐怖の、しかし何の役にも立たない涙を。

昨晩は特にひどかった。イスラエル軍のガザ地上侵攻攻撃の犠牲者が、次々と車に満載され運び込まれてきた。手足がちぎれた人、噴水のように血しぶきをあげている人、蒼白の顔色で痙攣を起こして死にかけている人―あらゆる年齢層の男女で、みんな罪のない民間人だ。

犠牲者を運ぶ救急隊員や、犠牲者を受け取って必死に手当する病院スタッフは、本当に英雄的な人々だ。疲労で血の気を失いながらも、12時間〜24時間シフトで、とても人間技とは思えない大変な仕事をこなしている(このシファ病院は資金がなく、みんな過去4カ月無給で勤務)。

運び込まれてくる犠牲者を心配し、重傷度を判断し、単なる肉片のようにぐちゃぐちゃに崩れた肉体から何とか人の形を判別している。這っている者、歩ける者、歩けない者、辛うじて呼吸している者、もう息ができない者、血を流している者、もう血が流れきってしまった者―それでも、みんな人間なのだ!「世界で最も倫理的な軍隊」(イスラエル軍の自己規定)によって、再びケダモノのように扱われた人間なのだ。

2014年ガザ戦争―イスラエルの誤算

ガザ殺戮がハマースを敗退させることはない

7月13日『ガーディアン』アッザム・タミーミ
翻訳:脇浜義明

7月13日、ヘブロンや他の西岸地区の町々では、ハマース軍事部門が新型のミサイルをテルアビブに撃ち込むと約束したことの履行を見ようと、パレスチナ人が家の屋根に上がって見物していた。J80という新型ロケットで、「J」は、2012年11月14日にイスラエルによって暗殺された軍事部門指導者ジャバリを表している。このことは、ハマース運動が、イスラエルと徹底抗戦する決意の明確な表現である。

ハマースは、「3人のイスラエル人少年の拉致・殺害に関与していない」と一貫して主張しているが、ネタニヤフ首相は、何ら証拠もあげずにハマース犯行説をガザ攻撃の口実にした。

ハマースの対イスラエル方針が、《イスラエルに囚われているパレスチナ人囚人の釈放》であったことを思えば、そのような作戦を行うわけがない。「少年拉致事件が起きる前から、ネタニヤフはハマース攻撃を計画していた」と思っているパレスチナ人は多い。

和平交渉に行き詰まったアッバスが、ハマースと和解してパレスチナ統一を立て直そうとし、欧州がそれを歓迎したことに、イスラエルが激怒した。ガザ攻撃は、このパレスチナ統一を破壊するためのものだ。攻撃の前から新統一政府の機能を麻痺させようと、給料が公務員に渡らないようにする画策を行っていた。

去年の冬からすでにイスラエルは、エジプトの新軍事政府から非公式に、「今こそガザを攻撃して、ハマース統治を終わらせる絶好の時だ」というメッセージを受け取っていた。選挙で選ばれた政府をクーデターで倒したエジプト軍事政権は、ラファ国境検問所を閉鎖し、イスラエルの地・海・空の全面封鎖の中でもガザの人々に生活の糧を届けていたエジプト─ガザ・トンネルを徹底破壊していたのだ。

停戦への最大の難関はエジプト

イスラエルは、今回の攻撃―世界がイスラエルの武器がガザ市民を殺戮するのを恐怖の目でみているのを意識して―を、「ハマースからのロケット攻撃に対する防衛戦だ」と、いつもの弁解を繰り返したが、ハマースから仕掛けた戦争でないのは明白である。エジプト前大統領モルシの斡旋で休戦が成立して以来、ハマースは自制したばかりでなく、他の小党派がイスラエルの暗殺攻撃やミサイル攻撃に反撃しようとするのを抑えたほどであった。封鎖を解くことが優先されたのだ。

イスラエルは、民家破壊や女性・子ども殺害を、「ハマースが民間人を人間の盾に使っている」という、とんでもない理屈で正当化している。イスラエル戦闘機が障がい者施設を爆撃したのは、そんな正当化で弁解できるものではない。

このような戦争犯罪としか呼びようのない行為に対して、イスラエルを支持してきた西側の国々も当惑している。こんな蛮行を長く続ければ続けるほど、イスラエルやイスラエルのパトロンである欧米にとって悪い結果をもたらすことになる。オバマが慌てて休戦の斡旋を提案したのは、そのためであろう。

英国のウィリアム・ヘイグ外相も同じような提案をしているが、彼のハマースに対する敵意とイスラエル贔屓は有名で、斡旋者としては不適だろう。ガザの民衆は、ヘイグに「お前は我々を、自決権を有する同じ人間だと思っているか?!」と問いたがっているだろう。

いずれにせよ、仲裁にとって最大の難関は、エジプトであろう。現エジプト政権は、ムバラク以上にハマースに敵対的であるから。トニー・ブレアーがそのエジプトに何か働きかけているらしいが、ブレアー自身、大の反イスラム主義者だ。

ハマース自体は、休戦仲介については何も語っていない。未確認だが、「カタールかトルコが仲裁役を担うかもしれない」という新聞報道はある。だれが仲裁に入ろうと、ハマースは自分たちの要求が考慮されないのなら、仲裁に応じないであろう。その要求とは、前の休戦条件の復活、そして、海と空の封鎖解除だ。しかしイスラエルは、それを繰り返し破ってきたのだ。

イスラエルの攻撃が、数多くの死傷者を出し、民衆の生活の大規模な破壊をもたらすことは、はっきりしている。イスラエル側のダメージは、心理的、政治的、経済的なものになるだろう。

それに、この戦争でハマースの人気はもっと高まるだろう。さらに、ガザはいうまでもなく、西岸地区でも外国でも、すべてのパレスチナ人の間の士気が高揚し、一体感が促進されるであろう。第3次インティファーダの出現が目に見えるようだ。

私は傷を負った犠牲者、苦痛と悔しさとショックの中でぐっと自制心を発揮し、固い決意で耐えている犠牲者に、無限の尊敬心を抱く。また、私は献身的に動く病院のスタッフやボランティアに、無限の尊敬心を抱く。彼らの「スムド」(訳注…アラビア語で「確固たる信念」の意)に接し、私はどれだけ励まされたことか。

でも、本当のことを言うと、無実の被害者を一目見ただけで、恐怖の叫び声をあげ、誰かにしがみついて泣き出したい衝動に駆られた。流血の赤ちゃんを見て、抱き上げ、頬や髪の毛に接吻したい衝動に駆られた。みんなと永遠に抱き合って、お互いに慰め合いたい衝動に駆られた。でも、そんな余裕はないし、それに両腕を吹き飛ばされた犠牲者が抱擁できるわけがない。

おぞましい惨劇を続けさせるな

また灰色の顔の群が到着―オー、ノー!手足を失ったり、血を流している車いっぱいの被害者を、もう受け入れる余裕がなかった。ER(救急救命室)の床は血の海だし、血染めの包帯やガーゼやシャツが所狭しと積まれていた。それでも、何とかしなければ!みんなで、シャベルで血を汲み出し、血で染まった包帯、ガーゼ、衣服、髪の毛―すべて死者が残したもの―などを片づけ、新しい重傷者を受け入れる準備をした。こういうことを何回繰り返してきたことか!

この24時間で100人以上の重傷者がシファ病院へ搬入された。100人といえば、完全設備の大病院でも処置能力を超える。シファ病院は、長年のガザ封鎖でほとんどが不足だらけ。電気、水、消毒ガーゼ類、薬品もほとんどなく、手術台、医療器具、モニター等は錆び付いて、まるで歴史博物館から取り寄せたようなものばかり。でも、誰も不平を言わずに、懸命に働いている。大きな山のような決意で、まっしぐらに患者に立ち向かっている。ああ、この英雄たち!

冒頭に記したように、私は泣きながら、この文を世界のあなた方に書いている。こんなおぞましいことがあってはならないのだ!あ、今またイスラエルの戦争マシーンの不気味な音が聞こえてきた。海からの艦砲一斉射撃、F─16戦闘機の轟音、無人機の爆撃音、アパッチ・ヘリコプターによる機関銃の速射音―みんな、米国が国民の金で製造し、イスラエルへ供与したものだ。それらが、無造作に罪のない人々を屠殺しているのだ!

ミスター・オバマ、あなたは人間の心をお持ちですか? もし心があるなら、私はあなたをこのシファ病院へ招待したい。一晩だけでよい、清掃人にでも扮してみんなと一緒に過ごしたら、歴史が変わるかもしれない。人間の心を持ち、権力をもっている人がシファで一晩過ごしたら、もうパレスチナ人殺害を止めさせなければならないと思うだろう。

しかし、人間の心がなく、非情な人々が、冷酷な計算で、この何度目かの「ダヒーア」―ガザの大虐殺を計画したのだ。明日も明後日も血の河が流れるだろう。心なき人々が死の楽器をチューニングしている音が聞こえる。

世界の皆さん、何かできることをしてください。こんなことを続けさせてはいけません。

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