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2014/6/8更新

これからの日本を考えるのにまず福島が前提になる
「美味しんぼ」は原子力の闇に真実の一灯を投じた

たむら市民ネット 代表世話人 鈴木 匡

『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)に掲載中の漫画「美味しんぼ」の「福島の真実」篇に、多方面からの抗議が寄せられています。その最中、私は福島県内の障がいを持つ人の自立生活支援として現在、「京都・関西自立生活視察研修プログラム」を行っている京都市の研修受け入れ団体との交流を行っていました。その中で、京都の研修受入れ先の一人から、次の質問がされました。

「美味しんぼの鼻血については、どう思われますか?」それに対して、福島県の20代半ばの男性は、こう答えました。

「鼻血については、事実だと思いますが、そのことから新たな風評被害が発生して、福島の商品が売れないなども事実だと思うんです」。

一国の首相、関係大臣までもが、この騒動の火消しに躍起になる心理は、正に彼が答えた内容に等しいことと思います。鼻血だけではなく、さまざまな症状が出ていることは事実だし、福島とその周辺の県からのさまざまな商品等の販売が落ち込み、経済活動が滞る恐れもあり、さらに被災地の復興が遅れることも事実だと、首相、閣僚等多くの政財界人が主張しています。

一方では、福島県下18歳以下(約36万人)の甲状腺がんは、50人に達し、なおかつ、甲状腺がんの疑いがあるとされた子どもは39人、合わせると、実に89人になった、と福島県立医科大学(県民健康調査検討委員会・5月19日)により発表されましたが、医大側は、「将来にがん化するところを現在、最新の検査を行っていることから、予見しているのであり、放射能由来ではない」との従来の見解を押し通しています。

原発は真実を覆わないと成り立たない

甲状腺がんは、チェルノブイリ原発事故(1986年)後にICRP(国際放射線防護委員会)等が放射能由来であることを唯一認めた健康被害ですが、医大は、それすら関連付けることを頑なに拒む、という態度です。この態度を前提にすると、たかが「鼻血」であっても、到底容認できるものではありません。そして、それはこの「美味しんぼ」を非難する人の共通の態度ではないでしょうか。

さらに言えば、事故後東電幹部、自民党議員曰く「放射線により死んだ人はいない」とは、今後とも放射線(能)による死人を出さない政治姿勢から、言論統制、報道規制等さまざまな黙殺を謀ることは必須でしょう。真実を覆うことでしか成り立たない原子力発電・原子力産業の闇構造が、またあらわになりました。

他方、事故前から法律で定められていた、公衆追加被ばく線量限度、年間1_Svを、20倍に引き上げて対応している日本政府の姿勢は、予防原則に基づかない無責任な姿であり、隣国の沈没客船に同じく、「安全のために、その場を動かないように」と客に指示した船長ら乗組員らは、救命作業を全く行わずに、命乞いを行った態度と大差ないものになると思います。

「美味しんぼ」の作者は、主人公らを通して次のようなメッセージを伝えています(作品から引用)。

「真実を語るしかない」「福島の未来は日本の未来だ。これからの日本を考えるのにまず、福島が前提になる」「特に子供たちの行く末を考えてほしい。福島の復興は、土地の復興ではなく、人間の復興だと思うからだ」。

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