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2014/6/8更新

究極の監視社会がやってくる!?
秘密保護法、顔認証カメラ、そしてマイナンバー制… 

共通番号制と管理監視社会に反対する北摂ネットワーク 広瀬 正明

秘密保護法、顔認証カメラ、共通番号制を考える集い
◇6月27日(金)PM6:30〜
講師=高作正博(関西大学教授/憲法学)
エルおおさか視聴覚室
(地下鉄・京阪「天満橋」)500円
主催=6・27集会実行委員会
連絡・Tel.&FAX.06-6844-2280

カナダの社会学者=D・ライアンは、「情報社会は監視社会である」と断言する。それは、街のあらゆる場所に設置された監視カメラだけを指すのではない。「個人データの収集・保存・処理・流通」そのものも含む。インターネット利用に顕著なように、日常生活がモニタリングされる社会が既に到来している。「マイナンバー制度」は、「便利」な超監視社会への扉である。(編集部)

使わざるを得ない共通番号

来年(2015年)10月になると、各市町村から住民基本台帳と外国人住民基本台帳に住民登録をしているすべての住民世帯に、一通の封筒が送られてくる。なんだろうと封筒を開けると、そこには生まれたばかりの赤ちゃんも含めた世帯のすべての構成員に12ケタの共通番号(マイナンバー)が付番されたと書いてある。

この共通番号(マイナンバー)は、住民基本台帳ネットワークシステム(以下、「住基ネット」)の11ケタの共通番号(住民票コード)と同様に、使用せずに無視することができるのだろうか。実は無視することも、使わないこともできないようになっている。

住民票コードは、行政内部で使用するものだった。だから、私たちは無視することはできた。しかし、この共通番号は、住民票コードとは違って納税者番号となっている。それゆえ勤務先の会社、自営業者であれば報酬をもらう先にこの番号を告知して、源泉徴収票に名前と番号を記載してもらう必要がある。また、確定申告書にも番号を記載して提出する必要がある。そのために、否が応でも使用せざるを得ない番号となっているのだ。

ちなみに、この共通番号(マイナンバー)は課税の公正・公平の実現のためと言われていたが、それが不可能なことは「事業所得や海外資産・取引情報の把握には限界がある」と、2011年に政府与党社会保障改革本部自らが認めている。

持たざるをえない共通番号カード

共通番号が通知される文書には、市町村役場に出向いて写真を撮れば顔写真つきのICカードが無償で交付される、とも書いてある。このカードは免許証くらいの大きさで、表面に顔写真・名前・住所・生年月日・性別等が、裏面には12桁の共通番号が書いてあり、それらの情報はカードのICチップに埋め込まれる。

この共通番号カードも、無視できない。共通番号が納税者番号なので、共通番号カードを会社に提示しなければ雇用してもらえない、取引もできないことになる。雇用保険や労災保険などの労働保険や、厚生年金や国民年金などの社会保険にも、この共通番号は利用されることになっている。民間利用も考えられているので、本人確認のために銀行やレンタルショツプでも必要になってくる。共通番号カードを持たなければ普通の日常生活がおくれないようになってくるのだ。大部分の人が常時携帯するようになれば、警察は、「犯罪捜査」「テロ対策」といった名目で、ICチップ入りの共通番号カードの提示をいたるところで求めて来るようになる可能性がある。

住民の情報を一元管理

共通番号制は、住基ネットのインフラを利用して構築されている。共通番号の付番も、住民票コードを基に作成される。住基ネットの共通番号(住民票コード)が、憲法13条の幸福追求権の中身である個人情報コントロール権に違反する個人情報の一元管理であり、国による違法な個人情報の盗用であり、国民総背番号制だ、と私たちは批判してきた。

主権者である私たちが、自分の福祉のために地方自治体に知らせている自分の個人情報であり、各個別番号によって整理されている個人情報を、名寄せ・データマッチングのために各個人に共通番号を付け、その共通番号によって情報を結合し、各行政間で情報を連携させ、この共通番号によって一元管理しようとするのが、この共通番号制である。それを、住基ネットでは禁止されていたが、民間にまで利用させようとしている。

住基ネット訴訟の最高裁判決は、憲法13条の個人情報のコントロール権からみて共通番号による名寄せ・データマッチング、民間利用は憲法違反であると述べているにもかかわらず、である。

国は、住基ネットをはるかに超える総背番号制を導入し、共通番号をマスターキーとして、住民基本台帳と外国人住民基本台帳に登録されているすべての市民の巨大なデータベースを構築し、市民の監視を徹底しようとしているのだ。

治安目的に利用可能

この3月31日に公布された共通番号法の施行令では、この個人情報を提供できる相手として捜査機関などが広く認められた。公正取引委員会や少年法上の調査をする警察のほか、具体的な刑事事件が発生していなくても、公安調査庁が治安調査の名目などで共通番号を利用して個人情報を収集できるようになった。裁判所の令状も必要としないし、自分の個人情報が悪用されないために自分の共通番号がどう利用されたかをインターネット上で確認できる「マイ・ポータル」や「特定個人情報保護委員会」のチェックの対象外にもなっている。

警察や公安調査庁が無制限に市民個人情報を収集できるという、国民主権の法治国家をかなぐり捨てるような暴挙が行われようとしているのだ。捜査機関が個人の情報を収集するには、必ず捜査令状が必要とされているにもかかわらず、だ。

顔認証カメラによる監視

この4月1日より、独立行政法人・情報通信研究機構が、JR大阪駅の駅ビル「大阪ステーションシティ」で、約90台の高性能カメラのネットワークを使って、通行する膨大な数の市民を無差別に撮影して、撮影した市民の顔と歩き方を認証してID番号(個人識別番号)をつけ、自動的に追跡する実験をしようとしていた。私たちはこの顔認証実験に反対するとともに、西成監視カメラ訴訟の弁護人である大川一夫さんを講師として、3月16日にこの顔認証実験に反対する学習会を行った。大川弁護士は、この顔認証実験について「明白に憲法13条のプライバシー権・自己情報コントロール権に違反している」と述べられた。

防犯カメラは犯罪防止に役立たない

日本では2002年に、成田空港と関西空港の税関に顔認証システムが導入されている。2006年には、霞ヶ関駅構内で国土交通省により「鉄道を標的としたテロを防止するため」として、顔認証システムの実験が行われた。

2007年、内閣府は「イノベーション25」を閣議決定し、2025年を目標として「高度の顔認証技術や自動検知システム、ICタグやセンサ等が、港湾、空港等それぞれの施設環境に合わせて活用されることにより、テロ未然防止のための保安体制が確立されている」ことを目標とした。これを受けて東京都は「[10年後の東京]への実行プログラム2008」を策定し、「テロリストや指名手配犯を迅速確実に検挙するために、写真等の2次元顔画像を立体画像に変換した3次元顔データを警視庁のサーバーに登録し、防犯カメラ等で送信された顔画像と登録データとを自動照合できるシステムを開発すること」等を決定する。

現在、日本には「犯罪防止」の名目でNシステム(現在はナンバーだけではなく、運転席と助手席の顔情報も記録できる)をはじめとして違法な監視カメラが街にあふれかえっている。

しかし、監視カメラが450万台、住民15人に一台すえつけられている英国において、「監視カメラは犯罪予防に役立っていない」という報告がある。

2002年のイギリス内務省報告は、「監視カメラによる犯罪防止効果は、駐車場に設置された監視カメラによって車上荒らしについては5%減少したが、繁華街に設置された監視カメラや公共交通機関に設置された監視カメラについては、効果が認められていない」と述べている。イギリス内務省は、1992年には「監視カメラは、犯罪全体の減少につながっているのか、あるいは監視地以外に移動させているだけなのかは、定かではない」とも述べているのだ。

防犯ではなく監視自体が目的

東京都は今年度から、都内のすべての公立小学校約1300校の通学路に、防犯カメラを設置する事業に乗り出した。2018年度までに完了させる方針で、都道府県単位で全小学校の通学路に防犯カメラを取り付けるのは全国初となっている。

防犯カメラが犯罪防止に役立たないとすれば、東京都の目的は何なのか?それは、防犯ではなく監視そのものなのだ。私たちの個人情報を違法に収集しながらの監視なのだ。「テロ対策」という、定義もない、どうにでも解釈できる言葉を使っての。本当に「犯罪」をなくすつもりなら、その一番の原因である、貧困や差別をなくし、収奪や侵略を止めることが先決のはずだ。

国は共通番号制によって私たちのあらゆる個人情報を丸裸にして一元管理し、ICチップ入りのマイナンバーカードを常時携帯せざるを得ないようにし、顔認証カメラによって私たちの日々の動向を監視する。常に私生活を覗かれ、見張られているこのような超監視社会は、どんなに息苦しいことだろう。かたや秘密保護法によって、国の情報は秘密にする。主権者はだれなのだ。

共通番号制については、その実施に向けて、自治体を国の下請け機関とする法定受託事務として、各市町村がすでに動き始めている。私たちは現在、私たちが住む市の行政に対して反対の声をあげるとともに、市民にその恐ろしさを伝え始めている。各地で反対の声をあげ、共通番号制の稼働を阻止していきましょう。

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