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2014/5/28更新

川内原発(鹿児島)再稼働阻止現地行動

多数派となった「反対」の声を可視化する

再稼働阻止全国ネットワーク  「川内の家」 岩下  雅裕

原子力規制委員会は23日、再稼働のトップバッターと名指しした川内原発1・2号機の審査を終了した。九州電力は今月末までに補正申請書を再提出し、規制委は審査合格の手続きを進めることになる。一方、鹿児島県の伊藤祐一郎知事は、適合審査終了後に予定している住民説明会を、原発から半径30キロ圏の5市町で計5回行う考えを表明。「地元同意」を前提に再稼働に突き進んでいる。

再稼働阻止全国ネットは、薩摩川内現地で集中行動を呼びかけており、4月、現地闘争本部として「川内の家」を立ち上げた。専従として活動している岩下雅裕さんに現地レポートをお願いした。

9月ともいわれている再稼働をめぐるせめぎ合いは、いよいよ頂点に達しつつある。こうしたなか川内原発の20km圏内にある鹿児島県いちき串木野市では、地元住民の圧倒的反対の声をつきつけるため、全住民の過半数を目指した全戸訪問署名が行われている。九電との安全協定で「誠実に対応」すると明記されているのは、薩摩川内に隣接するいちき串木野市と阿久根市だけだからだ。

署名は、6月議会に提出され、強行されようとしている再稼働の動きに「待った」をかける。(編集部)

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原子力規制委員会が川内原発の「優先審査」を表明(3月13日)、事実上、再稼働のトップバッターと名指しした。それは、九州電力が基準地震動を620ガル(※注)と回答したという、技術的な理由ではない。鹿児島県知事と薩摩川内市長の、積極的な再稼働容認姿勢による。

4月頃の原発労働者の話では、「九電から『お盆休みはない』と言われた。再稼働はお盆明けと、ずいぶん前から決まっている」ということであった。まず政治判断と政治日程があり、9月とも言われる再稼働が目指されているのである。

最初に結論を言っておく。

川内原発現地での闘いの成否が、全国的な再稼働の「嵐」の行方を決める。それゆえ各地の方々が川内を見つめ、そこへの集中を検討、実際に行動を開始している―と。

この小文では、鹿児島での世論状況を紹介し、どう住民間の議論を活性化し、闘いの顕在化を図っていくか考える。

再稼働反対59%成が36%と大差

5月5日の『南日本新聞』は、鹿児島県民を対象とした、原発再稼働に関する世論調査の結果を発表した。「反対」が59%、「賛成」が36%―大差で再稼働への拒否が表明されている。

反対理由のトップは、「福島の事故原因が究明されていない」(44%、複数回答)で、「安全性」への疑問が強い。また、再稼働への同意権(=拒否権)に関しては、県と薩摩川内市に限るという意見は7・4%に過ぎない。すなわち、放射能被害が広範囲に及ぶことへの認識、自治体や住民の自己決定権の主張が顕著である。「地元を設定するのはおかしい」という意見も、28%にのぼった。

しかし、世論調査への回答は、内心の意思の表明にすぎない。それが住民相互の自由な「会話」に発展するか、さらに目に見える運動に転化するかは、また別の問題だ。

住民の対立を強制し自由な討論を阻む九電

この点では第1に、特に薩摩川内市内で作り出されている、賛否の対立状況を考える必要がある。

いま市議会に、「原発再稼働の促進を求める請願」が提出されている。「薩摩川内市原子力推進期成会」が提出したものだが、その実体は、商工会議所。その重鎮は、九電川内営業所。72団体の構成だが、陳情は理事会のみで決められ、中小の構成団体には不満もあるという。

しかし、陳情を出したことによって、市内の対立状況が「演出」され、それが住民の口をふさぐことにつながっている。

だが、個別ビラまきのなかで、私が「よそ者」であると見ると、意見、情報、苦情が驚くほど集まってくる。4月中で1200枚ほど地域でまき、ほぼ1%の人々と20分程度話し込んだ。例えば、ある女性は言う。「原発に通じる県道は事故時、渋滞で使えない。山越えの市道で逃げるしかないが、崩れて車がすれ違えない。市に頼んでも直してくれない」―と。見に行ってみると、軽自動車でもすれ違えないことが判った。また、「この地域で住民投票ができれば必勝。投票にもちこむまでが大変だが」と、構想を語る人もいた。

「外」に向かった運動拡大の必要性

第2の問題は、皮肉なことに、70年代以来の建設阻止闘争の歴史、反対運動の組織(労組・市民団体)の強さではないか。

川内原発建設反対連絡協議会(反対連協)は73年11月、14団体で結成された。以後、千余の労働者・市民の市議会包囲行動(74年)、市長選での勝利(同)、原発敷地の地質問題(ボーリング・サンプルの差し替え)の暴露(75年)、起工式抗議行動(78年)という闘いの歴史をもつ。

労線統一と連合の電力総連支配をへても、現在も屋内集会には常に100人近くの参加者がある。その実力が、かえって「外」の人々に対するイニシアティブを鈍らせている可能性がある。

これについては、地域ビラまきなどの「実例」をもって、「外」への展開を働きかけていきたい。

内心の意思を対話へ   対話を眼に見える行動へ

こうして内心の意思を「会話」へと解放すること、そして再稼働阻止の眼に見える運動へと展開すること―再稼働が9月とも言われる状況下、これがここ数カ月の基本的な課題である。

「ストップ再稼働!3・11鹿児島集会実行委員会」は、6月13日の県議会開会に当たり、千人規模の抗議行動を予定している。「経産省前テントひろば」等が呼びかけた東日本決起集会実行委員会は、29日の大衆集会を経てこの行動に参加、翌日には原発ゲート付近の行動を計画している。これら鹿児島〜全国の人々の立ち上がりは重要だ。

しかし、それだけでは足らない。反対連協を中心にした川内市街地や、いちき串木野市など周辺自治体の住民の闘争参加―これは避難問題の焦点化と批判の行動により、「枠」が拡大しつつある。「原発が無ければ原発事故はない」という、当たり前の事実を運動に転化する必要があるだろう。

原発直近地域の運動再建夢見ることと実現すること

そして私が「夢想」するのは、原発直近の住民の闘い、70年代の運動の再建である。

もちろん、原発直近の、かつて闘いの中心地だった久見崎町寄田地区は、最年少の住民が40代後半という「限界集落」だ。だが、少し離れた高江町では、かつて反対運動を担ったという3人の方々が、熱く闘いの歴史を語ってくれた。40年前の「青年行動隊」の再結集を目指している方にも出会った。出会いと会話の重要性を、改めて確認した。そして、「夢想」し、行動しないことには具現化はありえない。

手前勝手かもしれないが、まず川内の闘いにフォーカスすることが重要であると思う。原発直近の地域、薩摩川内市街地と周辺自治体、鹿児島県全域、そして全九州や全国の闘いへと連帯を積み上げる必要があるだろう。軸になるのは、再稼働阻止全国ネットワークに結集する、16の原発現地であろう。まさに全国の人々が「私も『現地』である」と声をあげ、立ち上がることが求められている。

最後に「川内の家」について。

何日か前、「『川内の家』って団体ですか?」と質問された。しばらく迷ったが、「イエス」と答えた。訪問者は多く、諸団体がスペースを利用し、また地域情宣への協力者も何人かになった。宿泊者もいる。とはいえその実態は、阻止ネットから派遣された私1人が常駐する事務所に過ぎない。

市役所や駅、地域でのビラまき、さまざまな会議・集会への参加や議会傍聴などで、けっこう多忙。日本列島の西端にある薩摩川内市だが、何か協力していただけそうなことがあれば、ご連絡ください。もちろんカンパも大歓迎。

●電話・090─4759─2927

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