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2014/5/20更新

パギやん吠える

「差別と貧困」を共に乗り越えよう
「抵抗しない民」に甘んじることは「生きること」の否定 

浪花の歌う 巨人 趙 博

眼前で進行する「全体主義運動」

私たちは「原発あかん・橋下いらん・弾圧やめて!〜フクシマとむすぶ 音のちから 命のことば」と題して、大阪市内でささやかな集会を年に2回のペースで続けている。来たる6月22日は、その5回目(『真喜志好一講演会』)を迎えるのだが、その切っ掛けになったのは、Fさんの不当逮捕・起訴だった。

罪状は「免状不実記載」、つまり運転免許証に記載された住所と実際のそれが異なるという「微罪」で、当局の意図が見え見えの別件逮捕劇。原発事故から1年目を迎えた2012年3月、関西でもさまざまな行動が計画される中、「F逮捕」に関連した家宅捜査(ガサ入れ)は、実に15カ所にも及んだ。今思えば、これが「関西大弾圧」の嚆矢だったのである。

ガサ入れのとばっちりで、予定していた京都の反原発集会へ行けなくなってしまった3月10日の顛末を、以下、当時の『ぼやき日記』(所収)から添削して転載する。

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9時50分、どこから来るかと耕正橋のたもとで待ち受ければ、平野運河の南側からデカらしき5人が来る。こちらに視線を送るも、何も言わない。あれ?コヤツら、ガサ入れする当人の顔も確認できないのか…一群の後をつけていって、我が家の前に屯せんとするところを、背後からすかさず「おいでやす」と声を掛ければ、一同驚いて振り返る。

捜査令状をしっかりと確認して、捜査開始。数千冊の蔵書と枚挙に暇などありえない文書類の山に捜査員一同、戸惑う。拙宅の2階・3階に上がろうとするも「それでなくても悪い夫婦仲を、また一層悪くさせるつもりか!」と一喝すれば、「わかった」と退散。結局、何も出ず。

11時20分、稽古場兼事務所である「コラボ玉造」のガサ入れ開始。Fさんの私物保管箱からお目当ての「自動車購入の領収書」が出て、そこで捜査終了(パチ・パチ・パチ)。趙博本人の任意調書を取りたいというので、了承する。口頭でFさんのことを話すこと20分。その後、担当刑事が「調書」を作成するのに長時間を要した。何故か?彼が文章力と漢字の知識に乏しかったからである。「出版」「演奏」「鴫野」が書けない。その都度、教えてやる。出来上がった調書を見れば、「迷惑」を綴れずに「迷わく」となっている…いやはや、いかんともしがたい。

随行してきた若い4人のデカは「趙さん、井筒監督と対談したんですか」「全国廻ってるんですね」「あのギターは高いんでしょう」などと、語りかけてくる。微笑ましいくらいに従順で、そこいらの大学生のようにウブだ。

12時5分、家宅捜査終了、押収物3点。

15時30分、3時間以上かかって調書作成終了、署名押印。

憲兵的威圧でもって「弾圧してやろう」だの「こいつらイテこます」とか、そんな大それた意識や態度は一切なく、「権力」の末端にいる人間が、ただただ粛々・淡々と自分の「仕事」をこなしている、そんな様子だった。「権威主義的パーソナリティ」「権力を笠に着る犬」「虎の威を借る狐」等とはほど遠い。加えて、趙博に関して、事前調査をしているとは思えない今日の捜査とその対応だった。つまり、キャツ等は予習すらしてこなかったのだ。趙博に大学と予備校での講師歴ありと知るや、態度がコロッと変わる…要するに、その程度の「末端」なのである。

紳士的に過ぎる彼らの所作に「アイヒマン的人間」(H・アーレント)を見てとることは、この上なく容易い。正直、驚いた。と同時に、「人民が自ら首を絞めるとわかっているときに直接の弾圧など無用ではないか」(『ポストモダンの共産主義』)というジジェクの言辞が脳裏に浮かんだ。

今回一連の暴挙と「橋下(ハシゲ)現象」とは、無関係≠ナかたづけられないことは、二言を要さぬ。いま、眼前で「全体主義運動」が進行している。「ごく普通の日常」の位相で抑圧と弾圧が横行する中で、ファシズムへの「合意の体系」(グラムシ)が社会の中に醸成され、人々の意識に深化していくことが恐ろしい。

貧困・格差の拡大を背景に「戦争」への道を突き進む日本国

あれから2年以上経ち、状況は確実に悪化し続けている。「出直し大阪市長選挙」で橋下徹に投票した有権者が38万人。消費税を上げても原発再稼働を表明しても、「安倍内閣の支持率」は、なんと48%。5千万円で猪瀬が辞任し、8億円で渡辺が代表を降りる、等々、政治は「最悪度」を日々更新し続け、スキャンダルには事欠かない。

かと思えば、「割烹着のプリンセス」とばかりに持ち上げたマスコミが、手のひらを返したようにバッシングに殺到し、「悪い韓国人も良い韓国人もみな殺せ!」と、今日もヘイト・スピーチが罷り通るこの社会。鈍感なのか無関心なのか、考えようとしないのか考えたくないのか?日々重大事件が発生しているのに、多くの人が平然とこれまでどおりの生活を反復してしまう現実とのギャップ…。

そんな中で、止まるところを知らない「貧困の深化」と「格差の拡大」を背景に、日本国が確実に「戦争」への道を突き進んでいることだけは、間違いない。ファシスト安倍・暴走政権は「集団的自衛権行使の容認」を閣議決定しようと目論んでいるが、実現すれば、改訂手続きを経ずして「憲法九条」は自ずと抹殺される。ましてや「何が秘密か、それは国家が決める」のだとすれば、私たちは、知る権利も異議申し立ての正当性も、一切合財奪われてしまう。菅原文太は言った「秘密保護法でとどめを刺されてしまう」と。

「物言えぬ社会」で「一切抵抗しない民」に甘んじることは、民主主義どころか「生きること」そのものの否定だ。なのに、80年代のフィリピン、ポーランド・東欧、韓国で起きたような大規模な「民主化運動」「民衆革命」がこの国で勃発する兆しは、毫もない。

安倍や橋下の言う「国民」は、一部の富裕層のみを指しているに過ぎない。大多数の庶民は、大増税と「賃下げ」と「社会保障の切り捨て」で息も絶え絶え。フクシマとオキナワに犠牲を強いる「構造的差別」を凝視し、「差別と貧困」を乗り越える術と方法を共に模索する…その意志を捨てた時、真の敗北が訪れる。私たちは「終わり」の「始め」を生きているのか、はたまた、「戦前」にこのまま甘んじるのか?!

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