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2014/5/11更新

鵜飼哲さん(一橋大学)インタビュー[全3回]

私たちはいまどこにいるのか、どこへ向かうべきなのか
安倍政権・歴史認識・アジアの未来に向けてA

安倍政権が戦争国家への根本的な改造を進めている。その全体像をつかみ、歴史的視点と世界構造の中で、どうすれば良いのか?を考える連載。第2回は、新たな帝国主義を目指す安倍政権を世界状況と歴史問題の両面から考えてみる。(園良太)

第3回「私たちはどうすべきか、未来に向けて」(1515号)

世界の中で、歴史の中で―軍事問題と歴史的レイシズム

日米安保越え、欧州とも軍事連携へ

急速に進む集団的自衛権と武器輸出は、日米安保の強化だけではないことを強調しておきます。武器輸出については、英・仏との共同開発が明確に謳われているし、日仏は、史上最も危険な政治的・軍事的共犯性を深めています。リビア・マリへ軍事介入したこと、シリアに介入しようとしたこと、原発をめぐる共謀も含め、帝国主義間の新たな連携が構築されつつあります。昨年夏のシリア危機で、ロシアと米国の対決局面がありましたが、この時にシリアの旧植民地宗主国である仏が関与する構造ができました。これと、現在のウクライナ情勢は、地政学的にひとつながりです。

日本についても「周辺事態」に関する議論が遠い昔のように、ソマリアの海賊問題をテコとして、今や自衛隊はジブチに基地を持つまでになっています。安倍政権の集団的自衛権容認は、「日本海で北朝鮮が」「尖閣で中国が」云々と言われますが、狙いはそこではなく、地球規模の軍事展開をできるようにすることです。

フランスは、マリに続いて中央アフリカにも軍隊を出していますし、国連が主導するPKOの枠組みと国益絡みの介入の区別が、本当になくなっています。米国が参加していない軍事作戦に、日本が欧州と共に参戦する事態がありえます。欧米の帝国主義国家は、「日本にどんな役割を果たさせるか」を考えていると思いますし、日本政府も、それをどう利用するかを考えています。集団的自衛権への反対運動は、自衛隊をグローバルな軍隊にする、日本の新たな帝国主義政策への抗議であるべきです。

戦前回帰する日本帝国主義

こうした安倍政権の歴史認識・軍事化・民衆弾圧は、戦前の日本に通底しています。私たちの側も、状況の新しさを認識するためにも、しっかりした歴史認識をもたなければなりません。安倍は国連で「現在の日中関係は100年前の英独関係と似ている」と発言しました。中国をドイツに当てはめ、自分をイギリスの側に置くというでたらめなアナロジーを持ち出し、中国から激しい批判を浴びました。第二次大戦の責任問題についてのドイツと日本の比較を糊塗するため、第一次大戦開戦100周年を利用してこんなことを言い出しているのです。

第一次大戦後に登場したナチスドイツがどういう体制かわかっていながら同盟を組んだのが、日本です。ナチス政権が成立する前から侵略戦争をしていたのも、日本です。国際連盟の結成以後の世界平和構築の国際的模索に日本が突出して対立しているなかで、ドイツでナチス政権が成立した、という方が正しいのです。

自衛隊は戦前の大日本帝国軍隊の記憶を継承しています。今のドイツとは比べようもありません。だから田母神俊雄のような人間が出てくるのです。

麻生太郎の「ナチスを見習って静かに改憲すべき」という発言からも明らかなように、第二次大戦のファシズム枢軸国の中で、日本は唯一、当時の思想が現在の政治体制の中枢に温存されてきた国です。日本帝国主義の新たな段階では、こうした思想が全面的に復活するでしょう。

帝国の根源にある天皇制の克服を

ハンナ・アレントが指摘しているように、第2次大戦後の西側同盟は公然たる嘘のうえに構築されたものです。西ドイツではアデナウアーが『ドイツ人の大半はナチスを支持してはいなかった』と言い、フランスではドゴールが『フランス人は総体としてナチスに抵抗した』と主張しましたが、同時代人にはそれが事実に反することは明白でした。

では、アジア太平洋戦線でこれに対応する巨大な嘘は何か?といえば、「昭和天皇に戦争責任はない」です。そうでなければ西側の同盟関係を形成できないので、アメリカが主導権をとって天皇を免責してしまったのです。この嘘のうえにサンフランシスコ講和条約は結ばれたわけです。

昨年まで自民党が4月28日を独立記念日として祝えなかったのも、講和条約3条で沖縄を切り棄て、朝鮮人・台湾人の日本国籍を一方的に剥奪した「恥ずべき日」だったからです。講和の過程で、大日本帝国的なものは天皇の免罪によって保存されました。現在の自民党改憲案が万が一通れば、天皇は元首になるわけですから、日本は名実ともに「帝国」に戻ることになります。冷戦の期間をまるまる天皇ヒロヒトが生き延びたことが、日本の戦争責任の問い直しの遅れに大きく影響しました。関東大震災時の朝鮮人虐殺を想起するまでもなく、日本の歴史的責任は戦争責任に限定されません。しかし、天皇制への批判を蔑ろにするならば、「いつまでも戦争責任が問われ続けるのは、問う側が悪いのだ」という根本的な歴史的誤認にそれだけ容易に導かれやすくなります。この構図の全体の克服を目指すことが、ぜひとも必要です。(次号に続く)

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