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2014/2/27更新

放射能汚染木材チップ不法投棄─鴨川事件

30億Bqの放射能木材チップ琵琶湖畔に不法投棄
全国にばらまかれる放射能汚染廃棄物

「放射能に汚染された木材チップが全国にばらまかれている」と推測される不法投棄事件が、滋賀県で進行している。ところが関西の水瓶=琵琶湖を管理する滋賀県が秘密主義で、「環境派」として名を馳せる嘉田知事の名を汚す逃げ腰対応にも批判が起こっている。

放射能汚染チップ300dが発見されたのは、昨年3月。琵琶湖に流れ込む鴨川河口河川敷だ。不審に思った周辺住民が市に通報。高島市土木事務所が確認した。不法投棄したのは、コンサルタント企業=「ホームサーバー企画」(東京)で、社長は元郵政省(現総務省)キャリア官僚の田中良拓氏。

滋賀県琵琶湖環境部は、チップの汚染濃度を3000Bq/sと発表したが、市民環境研究所(石田紀郎代表/京都市)が計測したところ、最高値が12000Bq/sで、その他も7000Bq/s以上だったという。計測値の差は、県が台風大雨後でたっぷりと水を含んだサンプルを測定したのに対し、市民研究所は常温常圧で自然乾燥させた試料を測定したからだ。

これについて石田氏は、「なんとしても基準値である8000 Bq/kg以下に見せかけることによって、全国に高濃度の放射能汚染物を撒きちらす方策を示した」と批判している。8000Bq/kg以上の放射性物質は、放射性物質汚染対処特措法で「指定廃棄物」となり、特別な処理が必要となるからだ。

高濃度放射性廃棄物を福島から不法に持ち出し、水分を十分に含ませて放射能濃度を下げ、一般廃棄物として処分するという手法を示したのが滋賀県方式なのである。汚染物は既に全国拡散している。(編集部・山田)

フクイチ由来300dの汚染チップ

不法投棄された汚染チップは、鴨川河口付近に幅3・5b、長さ600bの範囲に厚さ20〜30aで敷き詰められていたという。総量約580立方b=300d。週刊誌『フライデー』によると、チップ排出元は福島県本宮市の製材業者で、東電から4億7千万円の処理費用を受け取っている。不法投棄したのは「ホームサーバー企画」で、社長は元郵政省キャリア官僚の田中良拓氏だ。同氏が3月15日に河川敷入口の門扉の鍵を借り受けていることが確認されている。

原発周辺の樹木は、表皮に大量の放射性物質が付着している。この製材業者は、田中社長と事務代行契約を結び、東電との交渉を委任。表皮を剥ぎ、線量を下げる作業を東電から受注していた。契約は、約9000dの樹木を処理し、1dあたり5万3000円を受け取る内容で、合計4億7700万円の処理費が支払われたことになる。本来なら、放射性物質が付着した木材は国の許可した最終処分業者によって処分されねばならないが、田中良拓氏は、琵琶湖畔に不法投棄したことになる。

「田中社長は東電内にいる東大時代の同級生から製材業者の話を聞き、契約を結んだんです。製材業者の社長は田中社長の経歴を聞いて、すっかり信用した」(東電関係者)という。別の関係者は、「福島から出た木材は鹿児島の堆肥製造会社にも運ばれた。既に堆肥として流通している可能性が高い」(『フライデー』)とも語っている。

不法投棄には、莫大な利権が絡んでいる。木材チップは、建材・土壌改良材などとして利益を生む有価物。闇から闇に放射能チップとお金が動いているようだ。

支離滅裂な県の対応夜陰に乗じて県外搬出

こうした実態を把握しているはずの滋賀県の対応は、支離滅裂である。昨年9月、嘉田由紀子知事は、「命の水源である琵琶湖を預かる知事として、絶対に許せない。心の底から怒りを感じる」と発言し、県議会でも関係者の刑事告発を検討する方針を表明した。

11月13日に同知事は、県庁で年内撤去を求めた福井正明・高島市長に対し、「トラックに積んで東電に持っていきませんか。クリスマスプレゼントです」とまで述べている。環境派知事として、原則的対応といえる。

ところが、こうした県の態度が変わるのが昨年12月頃からだ。12月、県は、放置に関わった業者が「1月末までに自主撤去する計画書を提出した」と発表するが、その後、放置とは関係ない「善意の第三者」である県外企業が自ら費用を負担して作業する、と修正。

さらに「原状回復命令が履行されない場合は行政代執行になるが、受け入れる処分場がなく、撤去できない」(12月27日)と態度が変化していく。

年が明けると、不法投棄した「ホームサーバー企画」が処理しないことになった理由や、代わりの業者が名乗りを上げた経緯などについて、「相手方との関係で一切明らかにできない」と、不法投棄者を庇うような発言も出てくるようになる。

1月30日、市民団体が県に対し、「問題の早期解決と、経緯に関する情報公開」を要求するが、県循環社会推進課は、撤去作業の内容を明らかにせず、業者への対応についても「県は河川を管理する立場で、直接の被害者というわけではない。調査は続けている」と述べたのみだ。

こうした県の逃げ腰な対応を象徴するのが、汚染測定法だ。県が、市民環境研究所より低い測定値にこだわるわけは、「指定廃棄物」の適用を避けるためだが、汚染濃度測定について、環境省・廃棄物対策課は「雨後など極端な状態での測定は適切ではない」と指摘。汚染濃度の測定法マニュアルを策定した山本貴士・国立環境研究所主任研究員も「含水率70%は試料の取り方としてあり得ない」と話している。政府すら「雨後の県測定、不適切」と首をかしげているのだ。

批判を受けて、県は再調査をしたが、「最高3900Bq/sで、特段の管理を必要とせず、不法投棄だけが問題である」と強弁している。

石田氏に対し恫喝をかけてもいる。12月に滋賀県知事は、直接石田氏に電話をかけて「1万2000Bqを撤回せよ」と迫っている。その後、滋賀県河川港湾課の担当者から、「許可なくサンプルを採取したのか」との電話もあったそうだ。よほど市民環境研の測定値が邪魔のようだ。

隠密裏に進められる汚染チップの搬出

こうした変化にともなって、秘密主義が横行する。年が明けて1月、チップをはぎ取り、袋詰めする作業が始まったが、現場周辺が立入禁止に指定され、県職員を配置。住民が近づくと警察官まで呼ぶというものものしい警備体制を敷いた。このため、どんな作業をどのようにするのかを監視しようとした市民団体は、見ることができないまま、現在に至っている。

そうしたなか、2月4日に滋賀県は高島市長を訪問し、撤去作業の現状を報告。「撤去後の復旧完了には3月初旬までかかる」としたうえで、「汚染チップの搬出先と搬出業者については今後も公開しない方針である」と表明したのである。嘉田知事も、「不法投棄した組織、撤去を請け負ってくれた組織(善意の第3者)、撤去された汚染チップの搬出先(県外)」のいずれも明らかにできません。関係者との約束ですから」と言い張るばかりだ。これについて、前出の石田紀郎・元京大教授は、「県の秘密主義は、特定秘密保護法の先取りのようである」とあきれ顔だ。

秘密主義は、撤去作業においても徹底されている。1月6日、ようやくチップ搬出作業が開始され、関西系テレビ局などがヘリまで飛ばして追尾したが、チップを積んだトラックは、富山―新潟から福島に入り、迷走した後に、滋賀に逆戻りした。メディアの追尾を知り、処分先を知られたくないがために、その日は処分場には運び込まず、滋賀に舞い戻ってきたのだ。

搬出先は、未だに闇の中だ。搬出するトラックには、岐阜、三重のナンバープレートが付けられていたという。石田さんも、「福島県ではない」との心証をもっている。1万Bqを越える放射性廃棄物300dが、闇から闇へと運ばれ、処分されようとしている。

すべては闇の中─刑事告発と真相究明

こうした秘密主義を批判して、1月29日、「滋賀県放射能チップを告発する会」のメンバー5人が、放置業者を刑事告発した。目的は、@放射性物質の拡散をしない、A鴨川流域住民の健康を守る、B安全性確保のための情報公開を促すためだ。

告発人の石田紀郎さんは、「本来、県が告発すべき」としたうえで、「犯罪を犯罪として告発するのは当然であり、県の権限で撤去先および処分方法を明らかにし、適切な処分の追跡を行う必要がある。今回の事件は、つきつめれば放射能汚染物を発生させた国の原子力政策の責任であり、1万2000Bq/sもの高汚染値は、指定廃棄物に該当するもので、国の処理責任であることを明確にした上で、国が先頭に立って責任ある処理を行うよう(焼却は厳禁)求める必要がある」と語っている。

同会は翌30日、県に対し「問題の早期解決と、経緯に関する情報公開」を要求した。しかし、県循環社会推進課は、作業の一切を明らかにせず、「調査は続けている」と語るのみだ。

刑事告発について滋賀県は、2転3転したが、市民の刑事告発を受けて、重い腰を上げつつあるようだ。市民団体は、3月議会でこの問題を明らかにするよう全議員に要望書を送り、真相究明を求めている。

不可解な知事の変化と謎の「善意の第三者」

滋賀県、さらに環境派を自認する嘉田知事が、曖昧な態度をとるメリットが見あたらない。秘密主義に陥る理由も不可解である。特に汚染チップ運び出しを申し出た「善意の第三者」について、県は頑なに口を閉ざし、その素性も動機も語ろうとしない。

こうした滋賀方式がまかり通るなら、放射性廃棄物の不法処理が公認されることとなり、全国拡散は必至となる。

「誰が放射能汚染チップをこの地に運び、不法に投棄し、環境汚染を引き起しながら、誰がどこにこの汚染物を持ち出し、どのように処理しているのかなどが明らかにされていないままでの終息は許されない」(石田紀郎)。

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