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2014/2/20更新

いま中国では 脇浜義明訳

山猫ストに押され、労働法制定に向かう中国

貪欲な資本主義に抗する出稼ぎ労働者たち

2013年11月27日『レーバー・ノーツ』
エレン・デイヴィッド・フリードマン(広東省広州市中山大学客員研究員)

中国が外国資本に投資の門戸を開いて30年以上経つが、ほぼ毎月のように山猫ストが起きている。立ち上がっているのは、組合がない労働者、労働センターから疎外されている労働者、メディアから相手にされず、法的保護の対象にもならない労働者たちだ。

さらに、種々の産業で働く低賃金労働者(時給2j以下)のストも絶えない。これらの抵抗は、しばしば雇用者の妥協を引き出した。最低賃金以下で、残業手当もつかず、社会保険の適用もない劣悪な状態の労働者の要求は法的に最小限水準なので、雇用者が要求に応じることが容易なのだ。

地方政府は雇用者に労働争議解決への圧力をかけることもあるが、多くの場合は労働者活動家の方を弾圧し、犯罪者扱いする。

一方、中央政府は労働関係を法の枠内で保護・制限する努力をしている。典型例は、9月に発表された「広東省団体交渉規則法案」である。広東省は、中国産業経済の心臓部、電気器具から医薬品まで輸出品を製造する搾取工場である。香港の北に位置し、外の世界への戸口でもあるので、その分、民主化実験がある程度大目に見られている。この法案は労働者の下からの声を反映しているが、政治的高官の公益論や批判、および香港経済界からの反対で、現在は宙に浮いている。

中国が労働関係の法制化を検討し始めたのは、1990年代初期、貪欲な資本主義が自由勝手を許され、労働争議が頻発したためである。例えば、1994年の労働組合法には、経営者、公的官僚、政府連携労組(中国で唯一の合法的組合)の間の「集団的相談」の指針が書かれている。

しかし、組合役員はたいてい経営者による指名なので、相談結果は最初から分かっている。労働契約が交わされるとしても、それは単に法的に規定されている最低賃金、残業手当、社会保険を成文化するだけだ。それすらも、「集団的相談」ではなく、非合法ストや争議でやっと獲得されたものだ。

2008年、個々人の労働契約権利、争議調停、雇用差別に関する労働関係法がいくつか成立し、労働者に希望を持たせた。特に労働契約法は、労働者の長期的雇用を規定して雇用安定をはかるものであったからだ。

しかし、経営者たちは終身雇用者を減らし、下請け、派遣労働利用、工業高等学校の学生実習生などを利用して臨時労働者とし、同法の意図を転覆させてしまった。2008年以降、このような基準外労働が増加した。

このように政府が労働法実施に失敗したこと、また経営者が悪賢く計画的に規制逃れをやったので、「法による支配」への信頼が労働者の間で急低下した。対照的に、山猫ストによる成果が続いた。

このことは、2010年スト(ホンダ南海工場から各地のホンダ工場に飛び火して2週間の操業停止を引き起こした)に典型的に見られる。このストの結果、各地の自動車工場で民主的直接選挙を通じて現場労働者(主として地方からの出稼ぎ労働者)から組合指導者が選出される道が開けるなど、大きな改革が進んだ。

さらに、改革志向の市や省の組合役員(中国では希有な存在)の正しい支援のおかげで、選出された新役員は雇用者との団体交渉を成立させ、賃金上昇と雇用安定を勝ち取った。これは非常に珍しい成果だが、経営者と労働者の力関係の変化が起きた事例である。つまり、労働者の団結が「下からの労働関係調整規則」をもたらしたのである。

労働法整備は諸刃の刃

広東省は、漸進的賃上げを通じて労働争議を少なくしようと、労働関係法制化に努めている。現在検討中の団体交渉規則法案は、労働者の声を組み込んで、公的労組の力と独占力を強化し、労働者のストや経営者の独裁的支配よりも交渉の方が望ましいとする戦略だ。しかしそれは、労働者にとって諸刃の刃である。

労働者にとって有利な点は、@団交要求と実行の合法・明確化、A交渉役員を選挙で選べる可能性、B「不信任投票」で組合役員を変えることができる可能性、C現場労働者が交渉内容を提案し、結果を検討できること、D組合役員に特別先任権が賦与されること、E不当労働行為に対する保護、F交渉の中で経営者が財政状態を公開しなければならないこと(経営者はこれを最も嫌がる)、などだ。

他方、不利な点もある。@労働争議が起きた場合、労働者を刑事罰に処する規定があり、団体交渉規則法違反に対する刑罰が経営者より労働者に厳しいこと、A31条で交渉中のストやサボタージュを禁止していること。「交渉中」は200日以上にわたるとされる。そもそもスト権は、中国の法律では禁止も許可もされておらず、労働法ではその字句すらないのに、それを「禁止する」のは、労働者の武器を奪うどころか、労働者の抵抗運動を「犯罪行為」と見なすことである。

活動家たちは、この法案に大きな疑問を投げかけている。「法による支配」は、労働者支配に使われるのか、それとも労働者が闘争の道具として使えるものなのか?また、組合もなく、この法律から遠く離れた存在の非正規労働者にとっては、この法律は何を意味するのだろうか?

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