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2014/2/10更新

被曝労働/福島第一原発事故現場の労働実態

ピンハネ・軽装備化まん延 告発すると「クビ」

1月25日、『スペースたんぽぽ』(千代田区)で「被曝労働問題連続講座」がスタートした。被曝労働者の無権利状態が激化し、反原発運動内でも被曝労働問題が主題になりにくい中で、理解とつながりを深めることが目的とされた画期的な講座だ。第1回のこの日の報告者は、2012年に福島第一原発で働いた「ごぼう」さんと、「被曝労働を考えるネットワーク」の「なすび」さん。

まずごぼうさんが、自らの体験に基に話をされた(以下、要約)。

──労働現場には「労働者差別」と「口封じの仕組み」が強固に存在する。「事故収束」を演出し、「住民帰還」を促すため、作業員は軽装備が求められた。労働者のマスクや防護服が簡素化された一方で、東電社員は値段の高いフィルターを付けている。電力会社は神様で、現場は東電社員の気分で運用がコロコロ変わった。

また「作業員は外に飲みに行くな」と言われ続けた。収束現場の話をマスコミに聞かれるのを東電やゼネコンが極度に恐れているからだ。

だが私は、理不尽な事は「納得できない」とハッキリ言ったため、さまざまな嫌がらせを経験をした。例えば、「規則違反のこと」を命令され、従わないと元請が飛んできて怒られた。12年8月には、それまで会社負担だった宿代と食費を自腹にすると一方的に告げられ、抗議したら、解雇を宣告された。これを告発した結果、同僚も辞めさせられるという経験をした。「告発すると周りに迷惑をかけるから、我慢せざるをえない」という巧妙な告発つぶしを行っている。

そこで東京の「フリーター労組」に入って、解雇撤回の団体交渉や争議を始めた。しかし文句を言うと、その場で会社責任者に電話される。解雇を告げられ、会社ごと契約を切られ、次から原発関係で働けなくなる。下請け会社は競争に晒され、問題が起きればすぐ人数を減らされる。原発労働者は次の仕事の保障がないため、常に気を張っていなければならなくなる。これが、見せしめ・脅しとなって、口封じの仕組みになっている。当事者が顔出しや名前出しをしなくても、告発できる土壌を運動側やメディア側も作る必要がある。─

ごぼうさんは今、新しい運動を模索中だ。「子ども被災者支援法」運動の省庁交渉で語られた「被曝労働者も被災者だ」という呼びかけを聞き、「作業員は英雄ではなく、普通の人間だ」と、壁がなくなったという。そして反原発運動は、作業員の状況を理解し、生活と命を守る必要がある。

また、原発立地地域が再稼働を望む背景について、「仕事・産業がないためである」ことを都市の反原発運動は理解し、向き合わなければならない。ごぼうさんは「地域の人と一緒に生活や仕事作りをすれば、いいアイデアが生まれ、都市に帰ったら多くの人に地域の現実を伝えたり、省庁交渉もできる。地域の人が自分で自分の道を選べるようにしたい」と提案した。

最後にごぼうさんは、@被曝労働運動は労災、医療、生活保護、年金、メンタルヘルスといった総合的な取り組みが必要で、それは、A反原発運動が反貧困運動とつながることでもある。そして最後に、B原発も基地もオリンピックも、嫌なのに仕方なくその下で働かざるをえない人が出る社会構造そのものを変えよう、と訴えた。

「ロードマップ」の強要で作業環境 劣悪化

続けてなすびさんが、現場作業の総体を語った(以下、要約)。

──政治スケジュールや国・産業界の利害が優先されて作られたロードマップが、現場労働者に強要されてきたことが問題の根源だ。それは11年12月の野田元首相の「収束宣言」から始まったが、宣言以降に雇われた労働者は、「長期的健康管理」の対象から外されたのだ。安全装備が軽装化され、賃金・手当が減額され、競争入札とコストカットが進められた。

そして13年9月、IOC総会での安倍首相の「汚染水の状況はコントロールされている」とのスピーチで、状況はより悪化した。安倍は五輪決定後の9月19日に事故原発を視察し、現場へ圧力をかけた。結果、労基法違反の長時間労働が日々強要され、単純ミスによるトラブルが続発している。

まず汚染水問題だが、安価で耐久性のないボルト締め型タンクを使っているため、ひび割れで汚染水が漏れている。台風の大雨がそれを加速させた。汚染水が地下水に流入し、排水口から外洋へ垂れ流され続けている。

被曝の危険性も非常に高く、ある労働者の話では巡回・修理だけで1日4時間・200μSvに達する。汚染水漏れ現場では300μSv/日に達する。だが作業員の被曝量はまともに伝えられていない。

地下水の流入も厳しい。山側から1日1000dもの地下水が流れ込み、400dが建家のひび割れ部分から建屋地下に流れ込み、600dが海に流れている。原発設備の水への接触は遮断するのが原則だが、水に触れずに汚染水作業は不可能で、作業員に大きな被曝をもたらしている。

事故原発内では、高線量汚染水が突発的に放出される可能性が常にある。だが汚染水を減らさないとタンクを増設してもパンクするため止められない。放射能除去装置も水漏れで度々トラブルを起こしている。

使用済み燃料プールからの燃料取り出しが始まっているが、地震や作業中にキャスクが落下・破損したり、冷却系停止により臨界するという恐るべき事態が常にありうる。莫大な被曝の拡大となる。これほど危険と隣り合わせの作業が作業員に強いられている現状を、私たちは本当に変えなければならない。

作業員は、その日の仕事の説明しかされず、他の地域の危険作業を知らされない。汚染水タンクの作業員は、燃料取り出し作業について、報道でしか知らされない状況なのだ。緊急避難時は他の作業場所を通らなければならないが、避難手順はなく、訓練もされていない。

東電は昨年11月、1日あたりの危険手当=1万円を2万円へ増額すると発表したが、元請のピンハネを事実上容認する文書を元請各社に配布した。許されないことだ!

なすびさんは、

◎政治スケジュールを優先した廃炉計画・手順や進行強要を許さない。◎現場労働者のイニシアチブによる収束・廃炉作業態勢を要求する。◎現場労働者との連携が必要─とまとめた。

質疑応答で、お2人に「反原発運動が労働運動や反戦運動と密接に結びつく必要性について質問した。ごぼうさんは「女性、外国人、フリーターも〈不安定さ〉が共通している。つながりたい」と答え、なすびさんは「原発はエネルギー政策の前に労働者が殺されていく問題だ。デモや集会や選挙はどうしても『脱原発』など単一のスローガンになりやすいが、人が無権利状態におかれ、放射能で殺されていく現実を真正面から取り上げるべき」と答えた。

原発事故から3年、風化する状況を変える連続講座に期待したい。原発労働を全国の反原発運動の中心課題にし、学習・出会い・行動を両立させながら運動を前進させていきたいものだ。(園良太)

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