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2013/7/26更新

BDS(ボイコット、脱投資、制裁)へのイスラエルの反撃

パレスチナ占領・支配への抗議に危機感募らせるイスラエル

6月6日 ミシェル・ワルシャウスキー(AIC)

イスラエル製品のボイコット、イスラエルへの投資の撤退、イスラエルへの制裁を呼びかける国際的な「BDS運動」が、イスラエル当局を悩ませていることは明らかだ。最近のイスラエルのBDSへの反撃を見るがいい。BDSがイスラエルに及ぼす影響の大きさに、イスラエルの政治家たちが狼狽している証しだ。

2年前、イスラエル国会(クネセト)は、「イスラエル・ボイコットや制裁を呼びかけること」を犯罪とし、その呼びかけの被害を受けた企業などに、たとえ直接的な関連が証明されなくても、国家補償が受けられる法案を通過させた。

ウリ・アヴネリやグッシュ・シャローム等は、法案の無効化を求めて最高裁に訴えた。原告たちは、「この法律は言論の自由と思想の自由を妨げるので、憲法違反だ」と主張。ただし、グッシュ・シャロームは、パレスチナBDS全国委員会の呼びかけの内容と異なり、入植地産品だけをボイコット運動の対象としている。

ヨルダン川西岸地区の農業

イスラエルの占領・水支配で荒廃させられるパレスチナの畑

2月17日付「ザ・ナショナル」

2万本のナツメヤシ農場を経営するズハイル・アル・マナスラは、パレスチナ人の農業投資のリスクについて、「占領下では何をやるのも困難だ」と語った。

アル・マナスラは、ベツレヘム市長とジェニン市長を歴任した後、専業農民となった。西岸地区ヨルダン渓谷でパレスチナ人が何をやるにしても、絶えずイスラエルの妨害があるにもかかわらず、彼は楽天的である。彼は、銀行から150万jを借りて、大規模なナツメヤシ農園「ナキール・パレスチナ」を設立した。それから7年経つが、彼の会社はまだ潰れずに頑張っている。

イスラエルの46年間にわたる占領で、パレスチナ農業は苦境に陥っている。水資源の使用が制限され、農園や畑の荒廃は進む。パレスチナ指導部は、ヨルダン渓谷を「将来の国家の胃袋」と見ているのに、パレスチナ自治政府はその地に対して何の権限も持っていない。

イスラエルがヨルダン渓谷の90%を支配し、ユダヤ人入植者に対してふんだんに補助金、水利用、税免除、土地の安価提供などの恩恵を与えている。その結果、入植者の農業が栄え、パレスチナ人の農業は見る影もない。

アル・マナスラは、「自分の会社は例外だ」という希望を捨てていない。今ではナツメヤシを輸出、パレスチナbPのナツメヤシ会社に成長した。さらに1万6000本を植林する計画で、いつか年間2000dの生産高にこぎ着けたいと願っている。

「いい値で買ってくれる市場があるし、様々な理由でパレスチナ産ナツメヤシを購入する顧客が世界中にいます」とマナスラ。彼を助けているのは、有力なパレスチナ人投資家だ。加えて、イスラエル入植地を批判するヨーロッパの声が増大していること、そして世界的なナツメヤシへの需要が追い風になっている。昨年は収穫の60%を英国、インドネシア、トルコに輸出した。それでも、イスラエル入植農業と比べると、見劣りがする。

イスラエルは、マジョール種ナツメヤシの世界市場の半分を支配している。マジョール種ナツメヤシの実はムスリム世界で好まれる食物で、ラマダンや祝祭日には大量に消費される。2011年にイスラエルが輸出した2万5000dのうち、ほぼ半分がヨルダン渓谷の入植地産であった。

国際的に広がるパレスチナ農業への支援

昨年(12年)のNGO調査では、EUへの入植地からの農産物輸出は、パレスチナ人農業者からの輸出の15倍であった。EU市場で「関税フリー」の特恵を持つ西岸地区のパレスチナ人250万人に対し、入植者数は30万人であるのに、この差なのである。オスロ合意以降、パレスチナ農業はGDPの4分の1から6%にまで急落した。

原因は、水利用の制限だ。井戸掘りも禁じられ、貯水池はイスラエル軍や入植者によって破壊される。前出のマナスラの農園も、3つの建造物が破壊命令の対象となっている。彼は金をはたいて裁判で争っている。

マナスラの支援者がいないわけではない。パレスチナ人富豪ムニブ・アル・マスリが会長をしている強力な「パディコ・ホールディング・グループ」が、彼の農園に投資、いろいろ便宜を計ってくれる。さらにヨーロッパやアジアのフェアトレード運動が、彼の農園やその他パレスチナ農業への支援をおこなっている。それに、ヨーロッパの各国政府も、次第にイスラエルの不法入植地に圧力をかけ始めた。

とはいえ、パレスチナ人が輸出する品物は、イスラエルが支配管理する港を通らなければならない。西岸地区のパレスチナ農民は、港へ行くことが出来ないのだ。

「それでも、まだ希望はある」とアル・マナスラは語る。

原告の主張に対し、検察局は「反ボイコット法には憲法上の問題がある」ことを認める文書を出した。そういえば、法案は議会通過したものの、政府の法律顧問はそれに反対していた。彼は、おそらく最高裁でその法律は無効化されるだろう、と踏んでいる。最高裁の決定はまだ先のことである。

「ユダヤ人差別」を利用するイスラエル

先日、エルサレムで外務省主催の「第4回反セム主義と闘うグローバル・フォーラム国際会議」が開かれた。表面上は「ユダヤ人差別と闘う」と主張するフォーラムの行動計画の中に、次のような項目がある。

「責任分担」─すべてをやろうとするよりは、イスラエルを悪者扱いにする脅威に対処するとき、個々の団体の特性が最大限発揮できるように、任務を分割するのがよい。

例えば、労働組合にパイプをもっている団体は労働者や労組に働きかけ、外交畑のグループは国連の諸機関や加盟国に働きかけ、メディア関係のグループはジャーナリストに働きかけ、法律畑のグループは法律方面で、BDSに協力する活動家や教員と闘うべきである。

「情報収集能力の向上」─イスラエルを悪者扱いする組織について、資金の出所や行動計画に関する情報をもっと収集しなければならない。BDSを支援する国、研究団体、財団や資金提供者の名を明らかにし、その行為を恥じるように非難しなければならない。BDS諸団体と支援者(例えばパレスチナ自治政府)の間の相関図を作成せよ。

また、BDS運動の多国籍企業に対する働きかけを調査せよ。

「対応速度の改善」─これについては、前回のフォーラム後からかなり改善した。LAN、ドリーム・チーム、その他の対応システムを効果的に使うことによって、地域や大学でBDS活動と対決する仲間に、有効なアドバイスや資金や情報などを提供できる。

「法的手段の行使」─国や州によって法律は異なるが、BDSのようなユダヤ人差別と効果的に闘える法律を探し出すこと。フランスの法律がよいモデルで、これを各国で制定させるように働きかけよ。

フランスのBDS運動「犯罪視」をやめさせよう

以上の項目は、BDSがイスラエルにとって如何に重大であるかを物語るものである。フォーラムの行動計画で特徴的な点は、「イスラエル政治への批判」を、「ユダヤ人差別」と同一視することである。

もちろん、フォーラム参加者は両者が異なることは十分知っているのだが、イスラエルのプロパガンダ機関が非常に強力であるため、イスラエルへの政治批判を抑えるために反セム主義(ユダヤ人差別)を活用して、人々の口を封じているのだ。

フランスのBDS活動家は、フォーラムがフランス・モデルを推薦していることに警戒しなければならない。これは、サルコジ大統領時代に、政府が「イスラエルへのBDSを呼びかける者を犯罪者として告訴せよ」と検察局に要請したことを指す(アリオ=マリ要請)。

イスラエル以外にこんな法外なことが通用している国は、フランスだけだ。フランスだけがBDS活動家が刑務所送りとなる国であるという不名誉をなくすために、この法外な要請をなくすべきであろう。

 

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