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2012/10/23更新

発展するギリシャの闘い

「我々は負けない!」とゼネスト 見えてきた政治変革の希望

 レフテリス・クレトソス (9月26日『レイバー・ノーツ』)
翻訳・脇浜義明

9月26日、ギリシャ労働者は24時間ゼネストを敢行した。この日、保守連立内閣の年金や賃金などをさらに150億jカットする政策に反対する5万人のデモが、アテネで行われ、デモ隊の一部が財務省と議会へ火炎瓶を投げ、警官隊が催涙ガスを浴びせた。ストを呼びかけたのはギリシャ労働者の半分を組織する2大労組で、2010年以降10回目のゼネストである。

ギリシャの世論調査会社 が先週行った調査では、ギリシャ国民の90%以上が政府提案のカットを「不公正で貧しい人々へのイジメだ」と答えている。公的失業率は25%で、若者の場合、半数に仕事がない。今年になってすでに最低賃金が22%引き下げられ、25歳以下の場合、最賃は32%減。1月に電力料金が15〜20%増。政府は、組合と会社の間で契約されたすべての団体協約を2013年2月までに廃止する命令を出した。

労働者に味方する政党を支持するギリシャ国民が過半数とはいえ、移民労働者を迫害し、「女性は家庭へ戻れ」と主張するネオナチ運動が台頭していることは、無視できない。

欧州銀行、欧州委員会、IMFの「トロイカ」体制が財政援助と引き換えに厳しい条件を押し付け、ギリシャ全土が揺らいでいる。政府は公共資産の民営化、負債返済のために、賃金、年金、福祉のカットを約束した「覚書」に署名したのだ。アテネのデモでは、「トロイカに負けないぞ!EUとIMFは出て行け!」というシュプレヒコールが叫ばれている。

そもそも、なぜギリシャ政府の負債がGDPの120%にまで増大したのか? それは、ギリシャ国民が「米国式贅沢生活に狂奔して」ユーロを浪費したからではない。トマス・ハリソンとジョアン・ランディの説明によれば、2004年のオリンピック開催や、ドイツと米国から武器を買うために(ギリシャの軍事費は対GDP比でEU最高である)、政府が無謀な借金をしたからである。

富裕層の目にあまる脱税も、原因の一つだ。そもそもユーロ圏の構造が、地元通貨をユーロに代えることで、ギリシャがドイツ輸出品市場になるように仕組まれているのだ。これが過度な借金促進となった。ドイツ政府は、10月19日までに緊縮予算を完成するように、ギリシャに要求している。

公務員組合連合全国委員で物理の教師であるソティレス・マルタリスは、「歴代政府が、我々の年金資金を株式に投資して損をした。今になって、金がないので年金を払えない、と言っている」と、怒っている。彼によると、労組指導者のほとんどが、当時政権党であった社会民主党(PASOK)に所属していた。彼らは、「賃金、年金、社会福祉のカットを少なくするように政府と交渉する」と組合員を説得しようとしたが、組合員の怒りは収まらず、「お前たちの危機に金を出す気はない。金持ちから金を取れ」と言い張った。結局、組合連合指導者は組合員の要求に従って、ストを呼びかけるようになった、という。

 新たな自立的抵抗運動

ギリシャが経済危機で不幸にも先駆的役割を担い、その経済的ショックで、労働者はわずか数カ月で生活がひっくり返るのを感じた。同時に、それは組合運動と社会運動のあり方や戦略にも影響を与えた。

労組は、地域活動や地域議会との協力を重要視するようになった。2010年以降、10回のゼネスト以外にも、個別ストや社会的闘争が繰り返された。大規模な大衆集会では警察との衝突も頻発、警察はだんだんと暴力的になっていった。への圧力になったばかりでなく、新たな自立的な抵抗運動を生み出した。

例えば自主管理病院(キルキス総合病院)、工場占拠、労働者自主管理工場、ユーロ以外の地域通貨の使用や物々交換によるマーケットの誕生、バリケードの中の地域コミュニティ、省庁や企業本社の大衆封鎖など。

昨年の緊縮財政反対運動は、公共広場の占拠、数十万人のデモ、「不払い」と呼ばれる草の根不服従社会運動などの形態をとった。これらは、議会制民主主義よりも直接民主主義を唱えるスペインのオキュパイ運動に触発されたもので、公共サービスの民営化や公共交通料金値上げに反対する直接行動である。

これらの運動は、緊縮政策に抵抗するものであるのはもちろんだが、同時に危機について参加者や一般国民を教育するものであった。危機の原因となった国際的・国内的政経界エリートの役割が、大衆的に分析され、討論された。広場や地域の大衆集会は、闘争形態の決定だけでなく、政治的要求について討議・決定した。利払い停止要求、債務不履行宣言の要求、借款協定の正当性を監査するチームの設立要求、ユーロ圏脱退要求、一般労働者の必要に基づいて経済を再編する要求、等々。

ギリシャの占拠運動は、政治体制に大きな圧力となっており、警察権力の弾圧が非常に厳しくなっている。暴力でしか権力を維持できなくなっているのだ。

現在ギリシャではホームレスが2万人を越え、その半数以上が若者で、労働人口の25%が失業中。2010年以降、自殺者が毎年数千人、中小企業の倒産件数は少なくとも6万件、長期にわたって賃金を受け取っていない労働者も数千人いる。

こういう状況下で流星のように台頭したのが急進左翼連合シリザ党で、現在2番目に大きい政党である。最近の世論調査によれば、次の選挙ではシリザが第一党になりそうである。シリザは反緊縮政策を掲げ、街頭政治活動やソーシャル・メディア活動や草の根地域活動を活発に行い、38歳のカリスマ的指導者アレクシス・ツィプラスの人気もあって、都市部の労働者階級、若者、不安定雇用労働者の間で支持が根強い。

シリザは、選挙における支持を変革のための自立的社会運動の源泉にしようとしている。シリザの台頭は、ヨーロッパ全土の反緊縮活動家、政党、組合に自信を与えている。たとえ現在、全面的緊縮政策が勝利をしているように見えても、都市部における新しい労働者勢力の台頭やシリザの政治的影響力の上昇で、近い将来、急進的政治変革の希望が見えてきた。

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