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2012/7/12更新

【特集】「大飯再稼働反対!」の巨大なうねり

福島を忘れてはいけない

大飯 30時間にわたり道路封鎖

7月1日、関西電力は大飯原発再稼働に着手した。原子力村の意向を受けた野田政権による再稼働発表に対し、「再稼働反対!」の声は、ますます大きくなっている。 今号では、15万人が集まった首相官邸前での抗議行動(6月29日)、大飯現地での阻止行動(6月30日〜7月1日)、さらに関西電力株主総会(6月27日)での抗議行動について報告する。(編集部)

大飯原発ゲート前を「人間の鎖」で封鎖する市民たち(7/1朝)

 

大飯原発ゲート最前線で「再稼働反対!」。
右奥のトンネルを抜けると、大飯原発に至る。(7/1朝)

変わり始めたおおい町

 大飯原発3号機の再稼働を翌日に控えた6月30日、おおい町「あみーシャン大飯」で、「STOP原発再稼働! おおい集会」がおこなわれた(主催・STOP☆大飯原発再稼働現地アクション)。会場は、用意されたイスだけでは足りず、床 に座って参加する人で埋まった。集会前日、首相官邸前を15万人もの人々が集まった熱気を、そのまま引き継いだ雰囲気だった。

 参加者は地元・若狭や関西各地をはじめ、全国各地から集まった。子ども連れの母親の姿が目立った。

東京・首相官邸前 歴史的大デモ

押し寄せる人の波 15万人の「再稼働反対!」

報告=遙矢当

4月に始まった首相官邸前抗議デモ。いよいよメディアも無視できなくなり、首都圏でも徐々にテレビや新聞でも報道され始めた。

そして6月29日、盛り上がりは頂点に達した。この朝、私は「今日は帰ってこないかもしれない」と家族に言い残して部屋を出た。

18時30分、永田町駅に到着すると、想像を超える人の群れと「大飯原発再稼働反対!」の声が、先週より高らかに聞こえてきた。その時点で、参加者は2万人を越えていた。もはや熱気というより、殺気に近い緊迫感が感じ取れる。大飯再稼働まであと2日に迫った重みを、改めて感じた。

大混乱の議事堂周辺を掻き分けるように進むと、記者会館の前で、いつもお世話になっている「新宿西口反戦意思表示」(大木晴子さんら*注)の皆さんと合流し、一緒に声を出すことになった。雨の予報が奇跡的に晴れた上空は、何機ものヘリが行き交う。ふと、広瀬隆氏らが飛ばせたヘリはどれか?と思ったが、探す余裕もない。後から後から人が押し寄せ、「再稼働反対」のボルテージは、果てしなく上がり続けた。

群衆を見ると、元気よく飛び上がるおなじみの顔を見つけた。14日に竪川弾圧から保釈された園良太さんだった。私は、園さんと並びながら「再稼働反対」の声を出した。警察のバリケードは何度も突き破られ、更に押し寄せる人で混乱が続いた。

 警察による中止命令

19時50分。うねりを上げ続ける「再稼働反対」のシュプレヒコールが、唐突に静まった。すると、主催者側がトラメガで声明を出した。「私たちは、今日のような混乱が続くのを恐れていました。これ以上の混乱が続くと、もうこの官邸前でデモができなくなります。今日はこれで終了とします。後方の方からゆっくりと戻ってください」。一斉に参加者からため息が出ると同時に、様々な怒号も響いた。「まだ時間が残っているんだから続けろよ!」「これじゃ大飯は止まらない!」もっともだった。

「どう思う?」と隣の園さんに訊くと、「警察による主催者への懐柔があったと思う」と述べた。主催者側は少数の集団、今後の活動も含めて警察に押し切られてしまったのかもしれない。今日、何の為に15万人の人たちが官邸前に集まったのか。デモ参加者は、その目的を正面から突き付けられた瞬間だった。

15万人は、紛れもない「民衆の声」であり、政治と歴史を動かす一つの力になり得たはずだ。ケガ人もなく逮捕者も出ないデモ、それは非暴力の理想である。ただ「大飯原発の再稼働」は、長く取り組むべき問題ではない。国民の目の前の命が問われている。私は、6月29日が、再稼働の問題に終止符を打つべき日だったと思う。

結局、野田政権によって再稼働の舵は切られた。今日は「民意が殺された日」なのだろうか、「ある種の支配が完成された日」なのだろうか。諦めきれない思いを胸に、後年の評価を待つことになりそうだ。  *「大木晴子のページ

 集会では、小林圭二さん(元京都大学原子炉実験所講師)が、改めて大飯原発の危険性を指摘。@大飯原発敷地内を通る断層(破砕帯)の危険性、A大飯の原子炉は加圧水型であり、事故の時には格納容器そのものが水素爆発を起こす恐れがある、と再稼働を厳しく批判した。その他、福島からのアピール、各地で反原発運動の取り組みの報告や、「大飯原発再稼働監視テント」からの報告、などがあった。

おおい町内の僧侶・宮崎宗真さんは、檀家や知人に原発関連の仕事に就いている人が多い中で、「再稼働反対」の声を上げた理由を「おおい町でも声を出しやすくしたいと思った」と語っている。「福島の事故を考えると、再稼働はありえない。福島を忘れてはいけない」(宮崎さん)。

デモ出発時には、雨が降り出した。まず、おおい町役場を目指す。周囲は、周りを田んぼに囲まれた田園地帯だ。「原発やめよう」「NO NUKES」「WE NEVER FORGET 3.11」…などの自分の言葉で訴えを書いた手書きのプラカードやグッズが、とても目を引いた。

途中から、左右に民家が見えてきた。自動車整備工場などで働く人や、スーパーに買い物に来ている人は、のどかな町を「再稼働反対!」と叫びながらデモをする約500人のデモを、固い表情で見つめていた。後で聞くと、デモに手を振ってくれた町民も多く、デモとすれ違った時に、コールに唱和している地元の人もいたとのこと。安全面で大きな不安を抱えながらも、「声を出しにくい」という、おおい町の雰囲気は、少しずつ変わっているのかもしれない。

デモに対して、「不愉快である」という態度を露わにする人もいた。原発再稼働が、雇用や交付金、地域での人間関係などが絡んだ、ナーバスな問題だということを実感させられた。 デモは、おおい町役場を折り返し点として、牧野経産副大臣が常駐するオフサイトセンター(原子力防災センター)までの道のりを、「再稼働反対!」を訴えて歩いた。

 オフサイトセンターでは、県職員や警察が門を封鎖し、さらに再稼働反対の申し入れ書受け取りも拒んだため、抗議の声が響き渡った。常駐しているはずの牧野経産副大臣は留守ということで、直接手渡すことはできなかったが、代表数人が敷地内に入って責任者に申し入れ書を手渡し、「6・30おおい集会」は解散となった。

 原発ゲート前封鎖行動

  「再稼働反対!」─大飯原発ゲート前は、太鼓・ドラムなどのリズムに合わせて、コールが繰り返されていた。7月1日。大飯原発3号炉の制御棒が抜かれ、再稼働が予定されている日だ。ここでは、前日夕方から監視テントの有志たちが座り込みに入り、夜通しでサウンド抗議集会を行っていた。

 プラカードや横断幕を掲げる人。リズムに合わせて踊る人。降り続く雨の中、子ども連れの母親。無言で花を掲げる人。「福島では、放射能で毎日人々が苦しんでいる。そんな中でな、ぜ大飯を稼動するのか。福島の私たちの苦しみを繰り返すのか」との福島からの叫び。「原発再稼働を止めたい!」という思いひとつで集まった300人が、ゲート前の抗議行動に参加した。

 おおい町総合運動公園の監視テントは、「30日には1万人が集まろう!」を合い言葉に、ブログやツイッター、フェイスブックで呼びかけられた。監視テントに集まる人は日ごとに増え、連日、音楽やパフォーマンスで「再稼働反対」を表現し続けた。

 「東京の首相官邸前で、あれだけの人が集まっているのを見て、私も行動したくて、ここに来ました」(京都から来た女性)─デモや集会への参加経験がなさそうな女性の姿が目についた。

 大飯原発は大島半島の先端にある。ここへ通じる道は一 本しかないため、原発作業員は、このゲートを通ってしか入場できない。直接行動でここを封鎖しよう!という方針が提起された。官邸は「正門から牧野経産副大臣を入れよ」と指示していたが、ゲート前占拠によって断念。作業員らとともに船で海上から原発に入り、再稼働に備えていたという。

 午後6時過ぎ。機動隊がゲート前を占拠していた人々を排除し、ゲート前を「制圧」した。午後9時過ぎ。いよいよ再稼働のために、制御棒を抜くスイッチが入れられた。しかし、ゲート前では「再稼働反対!」の声が止むことはない。ゲート封鎖は、深夜午前2時頃まで貫徹された。

 原子力村を追い詰めた抗議行動

 ゲート前で抗議行動が始まってからの約30時間、「再稼働反対!」の抗議は続けられた。そこは、首相官邸前と同じく「解放区」だったと思う。抗議の様子は「ユーストリーム」で生中継され、数万人が視聴した。

 再稼働が強行された今、現地に集まった人々は、今どういう思いでいるのだろう。監視テント村の臼田敦伸さんは、「みんな、さらに怒りを強めたという感じです。落ち込んでなんかいませんよ」と、語ってくれた。

 「ゲート封鎖は、原子力村の連中を追いつめたと思います。行動で「再稼働反対」の意思を、世界中に示したからです。そして、こうした行動が次の行動を呼ぶと確信しています。伊方原発などの再稼働も狙われています。総理官邸前に15万人が集まったように、相互に影響を与え合って、僕らも行動していきます。みんな『制御棒は抜かれたけど、また入れさせたら良いんだ!』と言っています。これからも、したたかにやっていきます」(臼田さん)。

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