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2012/5/30更新

橋下&維新の会を撃つ

家庭教育支援条例と親学思想

「歴史教科書」採択運動に代わる右派「教育改革」の全国展開

大阪維新の会大阪市会議員団が提案を予定していた「家庭教育支援条例(案)」は、一旦白紙撤回された。「発達障害は親の育て方が悪いから」という主張が大きな批判を浴びたからだ。しかし、条例案の土台となっている「親学思想」は、東京都の石原知事をはじめ、君が代斉唱で口元チェックした中原校長などが進めようとしている「教育改革」の根本思想となっている。さらに、「親学推進議連」なるものも4月に結成されている。会長は安倍晋三元首相で、鳩山由紀夫、「神の国」発言の森喜朗らが顧問に名前を連ねる。親学思想の提唱者である高橋史朗は、東京都でも同様の条例を提案するとしており、大阪・維新の会の条例提案は、全国的な右派攻勢の一部と見た方がいい。

「家庭教育支援条例」と「親学思想」、そして、親学思想による「教育改革」の目的は何か? (編集部・山田)

条例の内容と問題点

条例は、発達障がいの原因を「親の育て方や愛情不足」に求めている点が激しい批判を受け、白紙撤回された。発達障がいは、脳の器質的要素が大きい先天的障がいで、親の育て方や愛情不足とは全く無関係。大阪自閉症協会は、「学術的根拠がなく、発達障害についての偏見を増幅するもので、私たちは看過できません」と抗議した。

さらに条例案は、発達障がいと虐待を、原因も対策も全く別であるにもかかわらず、同列に扱い、予防・防止すると主張する。つまり、「親心の喪失・親の保護能力の衰退」が原因で「虐待」や「発達障害」が起き、「引きこもり・ 非行・不登校・新型学級崩壊」を招くという、思い込みに基づいた因果関係を前提としている。そして、これを「予防・防止」するために「伝統的子育て法」を各家庭に教育すると定めている。

 

「ひきこもり名人」勝山 実の「ポンチピープル」

「大阪維新の会」の家庭教育条例案を葬り去ろう!
「家庭教育支援」なんておいしい商売だ

橋下市長率いる「大阪維新の会」が市議会への提案を予定していた「家庭教育支援条例案」は、保護者団体や専門家の抗議を受けたため白紙撤回。そそくさと引っ込めてしまいました。じっくり腰を据えて条例案を批判してやろうと思っていたのに……。

でも、彼らは反省しているわけではありません。条例案の文案を資料として提供した親学推進協会理事長の高橋史朗は、さっそく「家庭教育支援条例案に対する緊急声明」を発表しました。これには、「(発達障害の)二次障害については、早期発見、早期支援、療育などによって症状を予防、改善できる可能性が高いといえます」と明記。まったく、ぶれていない。「家庭教育支援条例の全体を葬り去ることは、将来に禍根を残すことになります」といい、十分に議論して再出発する必要があると、まだまだヤル気充分です。

ちなみに、親学推進協会の特別委員には、民事裁判で敗訴、実妹は逮捕監禁致死事件で実刑の、「ひきこもりを2時間でなおす名古屋のおばちゃん」こと、長田百合子もいます。

「維新の会」は条例案を撤回する気はなく、頃合いを見て、今度はもっと隙のないものを作ってくるでしょう。「家庭教育支援条例の全体を葬り去」らない限り、何度でも復活してきますよ。親学推進協会は、日本財団からの助成金を受けて、生活費を稼ぎながらトンデモ予防策をつくっているところ。仕事としてやっているのです。

ボツになった家庭教育支援条例案は、乳幼児期の愛着形成の不足→発達障がい→ひきこもりになるという、怠け者へのホップ・ステップ・ジャンプを、「伝統的子育てによって予防しよう」というものでした。

「もう、ひきこもり本人じゃだめだ!親を出せ」と言ってきたのです。しかも、ひきこもり中年男子の両親を教育しなおすというのではありません。「お前たちの息子はもうだめだから」とすっぱりと諦めて、乳幼児期(0歳から5歳くらいまで)に狙いをしぼったのです。大阪市で推計約1万2000人のひきこもりを予防するために、親および、これから親になる人に、親育ちの教育を施したり、幼稚園での1日保育士・幼稚園教諭体験をやらせようというもの。

もし実現したら、どれくらいの予算がかかるのでしょうか。ひきこもりの就労支援の場合は、一部の人だけが支援の対象でした。しかしこの条例案では、発達障がい経由のひきこもり、不登校、非行を作らないために、親全員を教育し、義務を課そうというのです。未就学の子どもの数は、大阪市で約12万人。1人の子どもにつき2人の親がいますから、もし仮に大阪市でやると、約24万人が当事者になります。

今までのひきこもり支援とは比べ物にならない、総動員の大規模事業です。しかも、目的は「予防」ですから、何の問題もない、困っていない人を支援することになります。大変効率の悪いプロジェクトです。

でも、支援者には成果を出しやすい楽な仕事になります。放っておいても、ほとんどの人は発達障がいにならないのですから。家庭教育支援は、支援者にとっておいしい商売なのです。

親学思想とは? 

この条例案の背後には、高橋史朗という人物の「親学」なる教育思想があることが指摘されている。高橋史朗氏は、(財)親学推進協会の理事長。元埼玉県教育委員長で、「新しい歴史教科書を考える会」の副会長も務めた。親学推進協会を代表し、思想的基礎を提供しているのが、高橋史朗教授だ。

「親学推進協会」は、「親学アドバイザー」という資格認定機関。講座・資格認定などで数万円を徴収する商売である。条例第21条には、「『親学アドバイザー』など、民間有資格者等の育成を支援する」とされており、条例は、高橋らの商売を行政がバックアップして進めることになる。

発達障がいの子どもは、一定の確率で生まれる。ところが条例は、発達障がいを負った子どもの親に対して、「育て方が悪い」「親心が足りない」「親の保護能力が衰退している」と言い放ち、親学思想は「発達障がいの子どもは、予防に失敗された存在であり、その親は子育てに失敗した親」と宣言する。「親学思想」は、現実を見ようとしない伝統主義者による言葉の暴力であり、障がい児(者)がいる家庭を、地域から排除する。

 「親学」を推進する政治家たち

今年4月、「親学推進議員連盟」が設立されている。活動方針は、@親学を推進する家庭教育支援法の年内制定、A政府への推進本部設置や地方自治体での条例制定、B国民運動の推進、など。

会長は安倍晋三元首相で、顧問に鳩山由紀夫(民主党)、「神の国」発言の森喜朗(自民党)、渡辺喜美(みんなの党)、平沼赳夫(たち上がれ日本)らが名を連ねている。要するに与野党「右派オールスターズ」の面々だ。

親学を提唱する高橋史朗氏は、「石原慎太郎東京都知事と橋下徹大阪市長は、教育の破壊的改革で一致した。…東京・大阪連合による破壊的教育改革を首都圏から全国へと広げていく必要がある」(産経新聞)と発言している。

石原慎太郎知事が設置した「教育再生・東京円卓会議」に出席した高橋史朗氏は、会議後の記者会見で、東京都でも「家庭教育支援条例」制定を訴えた。

また、同会議のメンバーでもある中原弁護士(君が代斉唱で口元チェックした校長)は、都が都立高で日本史を必修化し、独自テキスト「江戸から東京へ」を導入したような取り組みを「大阪でも取り入れたい」と述べている。東京都と大阪市の「教育改革」は、一体のものだ。

一方、橋下大阪市長は、「近現代史を学ぶ施設を大阪府市に設置する」と言い出している。同市長は、「新しい歴史教科書をつくる会」らの「有識者」らに意見を聴く考えを示し、「歴史観や事実認定で意見が分かれる近現代史について、『子どもらが両論を学べる施設』をつくる」のだと言う。しかし、「両論併記」といえば聞こえがいいが、要は「天動説と地動説を対等に教える」ようなものだ。

橋下市長が塾長を務める維新政治塾に参加する男性は、「受講生は全体的に保守の色が強い」と指摘。所属する班のグループディスカッションでは、「徴兵制」がテーマとなり、25人中20人が「賛成」と答えたという。維新政治塾が選挙で大勝したら、日本はどうなるのか。

 

 

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