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2012/5/23更新

橋下&維新の会を撃つ

広がる閉塞感をどう越えるのか? 

主催:若者で考える未来ネットワーク

4月15日、関西大学千里ホールで、山口二郎(政治学者/北海道大学教授)講演会「民主主義の在るべきかたちとは? ─大阪の政治をみる」が開かれた。(主催=関西大学法学部教員学生有志、若者で考える未来ネットワーク)。

この講演会を企画したのは、「若者で考える未来ネットワーク」の若者たち。貧困・格差や、原発の問題など、多くの若者たちが抱える生きづらさ、閉塞感をいかにして解消できるのかを考える、若者自身の試みだ。サブタイトルに「大阪の政治をみる」とあるとおり、集会は、昨年の大阪W選挙で、橋下&維新の会が圧勝した現象から、そもそも民主主義って何? を考えるものとなった。ここでは、山口二郎氏の講演の後に行われた、第2部のトークセッションを紹介したい。「若者で考える未来ネットワーク」メンバーが、会場からの質問も交えた疑問を投げかけ、山口氏がそれに答える形で進められた。(文責編集部・一ノ瀬)

[橋下現象の背景について]

(第1部・山口氏の講演より要約)

@世代間対立とリセット願望

いわば政治の世界における「おやじ狩り」。閉塞した社会秩序をひっくり返したい、という願望(橋下の「改憲発言」、赤木智弘「31歳フリーター。希望は、戦争」論、など)。

A既得権攻撃という武器の有効性

雇用の流動化、公共事業の削減などで、以前は当たり前だった「安定」が希少価値化した。その制度化された利益に対する攻撃。

B革命の魅力

社会の割を食っているという若者。世界に対する憎悪。橋下の破壊に一縷の望みを託す。

C「危険」をめぐって

「多数意思」によって立憲主義を否定し、民主主義を破壊する危険性。プレカリアート、原発…、生活そのものが危険化。

(文責編集部)

ネットワークメンバー(以下、N)…この間、脱原発を訴えるデモが全国的に起こった。私たちのこうした行動が民主主義を作るんだな、という思いがある一方で、原発再稼働に向けて突っ走る政府・原子力村の様子を見ていると、無力感にも襲われる。

山口…「結果を出す」ことに近視眼的になってはいけない。私たちが街頭で「脱原発」の意思表示、デモンストレーションを行ったことの意味は、決して小さくない。

たとえば、かつての安保闘争では、結局安保は改訂されてしまい、その意味で闘争は敗北したのかもしれない。しかし、当時の岸首相は退陣に追い込まれ、また改憲の動きが後景化を余儀なくされた。安保闘争のデモのインパクトは、非常に大きかった。

N…民主主義が大事、というのは理屈ではよく分かる。でも、私たちの周りの友人たちは、学校・バイト・就活等々で自分の時間がない。先行きも見えづらいし、みんな、すごくガマンしている。こんな中で、どうやって希望を語れるのだろうか? 

山口…民主党への失望の声は高まり、それが橋下現象の背景の一つにもなっている。しかし、生活保護の母子加算や、高校無償化、貧困問題の「公認」など、政権交代で達成した点があることは、きちんと評価すべき。政治の力でできることは、間違いなくある。

だから、政治に声を上げていくことをあきらめていてはいけない。希望について、魯迅の「故郷」の中の、「希望とは、もともとあるものとも言えぬし、ないものとも言えない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」との一節を引用したい。

N…政治に関心のない人へのメッセージを。

山口…社会の亀裂と生活の困難さが大きくなり、連帯よりも「自己責任」が求められるなど、今の時代は閉塞感が広がっている。教育・雇用・社会保障はどんどんカットされ、危機的状況だが、私たちは、楽観的になるしかない。3・11では、みんなが今日食べるもの、今晩寝る場所に不自由していたにもかかわらず、自発的に相互扶助のコミュニティが作られた。大震災という限られた一時的な状況だったかもしれないが、他人に共感し、利他的に振る舞う《災害ユートピア》が出現したことは、希望だ。

共感すること、見ること・知ること(事実に基づいた議論)、考えること(因果関係を省略せず、単純な結論に飛びつかない)、動くこと(政治家に任せきりにしない、多数決は仮の結論、市民として意思表示する)は、民主主義を立て直す道だ。みんなが動けば、変わるのだ。

[トークセッションを聞いて]

私の学生時代(80年代)と比べると、携帯電話やインターネットの普及など、若者を取り巻く環境は変化した。しかしそれ以上に、就職難・雇用の不安定化・貧困などで、若者たちは想像力や希望を奪われていると感じた。

休憩時間にトイレにいった時、「トイレの中では喫煙・飲食などをしないで下さい」という貼り紙があった。昼食を一緒に食べる仲間がおらず、かといって一人で食べているところを見られたくないので、トイレの個室で食べている学生が、結構いるそうだ。しかし、こうした若者の「弧族化」の姿は、私たち自身の姿でもあるだろう。

「若者で考える未来ネットワーク」では、悩み・経験などを、みんなと共有できる環境づくりとして、小規模の座談会などを予定している。

トークセッションの締めに、若者で考える未来ネットワークから、「自分のしんどさを、生きづらさを声に出していこう」「自分の考えていることを主張していこう」との発言があった。「今のままでは、もうやっていけない!」という悲鳴は、橋下や排外主義に飲み込まれがちだ。しかし、自分たちでしっかりと考え、声を上げていこう、という若者たちの動きに、今後とも注目していきたい。 (編集部一ノ瀬)

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