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2012/4/18更新

いま中東では 翻訳/栗田隆子

ウィドニー・ブラウン氏は、「アラブの春」で、「女性は男性と同じ危険を冒してきたが、革命後の政治の中で2級市民として扱われているのだ」と語る。

この地域の事例を用いて、ブラウン氏は、勝利からはかけ離れているジェンダー平等のための闘いについて主張する。

ブラウン氏は、アムネスティ国際法・政策の上級部長であり、女性の権利そしてジェンダー平等に関する担当である。ブラウン氏は、世界中の人権侵害の取材について多くの経験を持ち、たくさんの出版物に意見を寄せている。(栗田)

「アラブの春」後、なぜ男性は女性を失望させているのか?

ウィドニー・ブラウン(アムネスティ国際法・政策上級部長
3月8日CNNへの特別寄稿

中東および北アフリカで、独裁政権を倒したデモに参加した女性たちは、現在、その側にいた男性たちによって、ひどく失望させられている。

彼女たちもまた、銃で撃たれ、拷問を受け、攻撃され、留置所に入れられた。抗議する点においては、男女平等であった。しかし今では、女性たちは新政府によって、「2級市民」として、置き去りにされているのだ。

それゆえ、私たちは「国際女性デー」(※)を祝わなければならないのだ。私たちは、この勝利とはかけ離れた現実の中で、ジェンダーの平等のための闘いを忘れるわけにはいかないからだ。

独裁者・ムバラクを追放したエジプトの民衆蜂起で、女性は重要な役割を担った。しかし、それは大したこととは見なされなかった。女性が男性とともに「経済的な機会の抑圧と欠如という苦しみを平等に受ける」ことや、《女性である》という理由で、さらに負荷された重荷を担うことも、問題とは見なされなかった。

さらに、軍隊によって武装した最高会議が、抗議する女性たちを逮捕し、処女であるかどうかのテストを強制することで、彼女たちの評判を傷つけようと試みたことも、大した問題とはされなかった。

女性とアラブの民衆蜂起について

ムバラク追放後のエジプト総選挙で、国際アムネスティは、候補者を出した政治党派に対して、基本的人権についての質問を行った。その内容は、表現と結社の自由、宗教の自由、差別の撤廃、そしてジェンダーの平等について、であった。

しかし結局、政党の公約に、人権についての最低限のものさえなかったのだ。235議席(全議席数の47%)を獲得したムスリム同胞団系の「自由公正党」は、アムネスティからの質問には回答しなかった。121議席(全議席数の24%)を獲得して第2党となったサラフ主義団の「ヌール党」は、女性の権利の推進や、死刑廃止を拒んでいる。

つまり、新しい議会の71%は、女性の権利やジェンダー平等の推進には、まったく意欲的ではないのだ。

ただ、一筋の光はある。イエメンの女性活動家、政治家、作家、ジャーナリストであるタワックル・カルマンがノーベル平和賞受賞者の一人に決まったことは、重要なことであった。

「アラブの春」での、女性たちの力強い声は、無視できないほど大きな存在だった。

国の人権侵害を暴露したり、説明責任を要求する時に、彼女たちは、男性と同じ危険を冒した。その多くの女性たちは、嫌がらせ(ハラスメント)を受け、逮捕され、拷問を受けた。あるいは、ジェンダー差別に基づいた特有のやり方で、吐き気のするような扱いを受けた。《女である》からこそ、しきたりに立ち向かい、「表現と結社の自由」という、彼女たちの権利を行使し続けたのである。

バーレーンでは、数千もの女性たちが、反政府デモに参加し、何十人もの女性が逮捕された。報道によれば、その中には、拷問を受け、あるいは、吐き気のするような扱いを受けた女性たちもいた。

イエメンでは、女性が抗議に参加した結果、殺され、嫌がらせを受けた。中には、激しく殴打されたケースもあった。

イエメンの官僚たちは、女性を「従属的な立場」のままでいさせよう、と必死にキャンペーンした。男性は家族の中で女性をコントロールせよ、女性の活動をやめさせよ、と。

女性たちは以前から 人権に関わる要求を続けてきた

女性の囚人たちは、鉄格子の向こう側に自由を見出した。しかし、女性抗議者たちの存在は、この地域で新しいものではない。女性たちは、イランやその他の場所で、昨年の反乱のずっと以前から、人権に関わる要求を続けてきたのだ。

国際女性デー…1904年3月8日に、アメリカ・ニューヨークで、女性労働者が婦人参政権を要求してデモを起こした。これを受け、ドイツの社会主義者・クララ・ツェトキンが、1910年にコペンハーゲン(デンマーク)で行なわれた国際社会主義者会議で、「女性の政治的自由と平等のためにたたかう」記念の日とするよう提唱したことから始まった。

また、1917年に国際女性デー(当時ロシアで使われていたユリウス暦では2月23日にあたる)にロシアの首都ペトログラードで行われた女性労働者を中心としたデモは、男性労働者、さらには兵士を巻き込んだ大規模な蜂起となり、最終的には帝政を崩壊に追い込んだ(2月革命)。

日本では、1923年3月8日、社会主義フェミニスト団体赤瀾(せきらん)会が初の集会を開催。国連は1975年(国際婦人年)3月8日以来、この日を「国際女性デー」と定め、現在は国連事務総長が、女性の十全かつ平等な社会参加の環境を整備するよう、加盟国に呼びかける日となっている。

サウジアラビアでは、女性たちが20年にわたって、女性への運転規制に対して闘いを挑んでいる。いまだにこの地では、女性の運転は禁止されている。この禁止に挑んだ女性たちは、逮捕され、その人格を攻撃された。

女性たちの要求は明確である。同じテーブルについて討議すること、物事を決める際の投票権の要求だ。

さらに女性たちは、とりわけ政治参加と意思決定における平等な権利、結婚や離婚、子どもの保護に関することや、相続も含めた法的に平等な権利を要求している。

女性たちは、ドメスティックバイオレンスや、夫婦間レイプ、そしてセクシャルハラスメントも含む、ジェンダーに基づいた暴力から法的に守られる権利を持ちうるはずなのである。

「国際女性デー」は、中東および北アフリカで生きる女性たちの力と勇気を理解する機会である。彼女たちは台所に追いやられてはならない。私たちは、彼女たちとともに、今日、連帯しなければならないのだ。

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