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2012/3/31更新

いま中東では 翻訳 脇浜義明

「イランの脅威」は存在しない

中東非核化に関心示さない欧米政府

ノーム・チョムスキー 3月2日 inthesetimes.com

でっち上げられた「国際世論」

 『フォリン・アフェアズ』1・2月号は、マシュー・クローニグの「イラン攻撃の時―なぜ攻撃が最小悪選択なのか」という論文を中心に、イランを封じ込める方法を特集した。いずれもイスラエルによる軍事攻撃の可能性と、米国がイラン侵攻のオプションを残していることを述べている。またもや国連憲章と国際法違反のお膳立てである。アフガニスタン攻撃やイラク攻撃の前段階と同じ、不気味な雰囲気が漂い、米大統領予備選が、進軍太鼓の響きとなっている。

 欧米政府とメディアは、「イランの脅威」を「国際世論」として宣伝するが、120カ国からなる非同盟運動諸国は、イランのウラン濃縮権を支持している。

 中国とロシアはもちろん、インドも米国のイラン政策に反対、制裁には加わらず「イランとの貿易を続ける」との態度。トルコも同じ路線である。

 ヨーロッパ民衆は、「イスラエルこそが世界平和の最大の脅威だ」と見ている。アラブ世界は、イランを嫌ってはいるが「脅威」と見るのはごく一部で、むしろ脅威なのはイスラエルだと認識している。アラブ民衆の大多数は、「イランが核武装すれば、中東地域はより安定する」と考えている。「アラブの春」直前に行われた国際世論調査(ブルッキング研究所・ゾグビー・インターナショナル)では、エジプト人の90%がこの考えであった。

 西側メディアは、米国寄りのアラブ独裁者の意見を伝えるが、一般アラブ人の考えを無視している。米国内にも、イスラエルの核保有を脅威と見る流れがあり、米国戦略軍の元司令官リー・バトラー将軍は、イスラエル核武装を「非常に危険」と言った。ワーナー・ファー中佐は軍雑誌で、イスラエルの核兵器は対米国用、つまり「米国のイスラエル支援をつなぎ止めるためのものだ」と述べている。

 目下の最大関心事は、イスラエルが米国の軍事行動を引き出すために、イランに挑発をかけて、何らかの戦闘行為を起こさせるのではないかということだ。

真の脅威はイスラエルの核兵器

イスラエルの戦略研究家のゼエブ・マオズは、「イスラエルの核兵器政策はマイナスで、かえってイスラエルの安全保障上、害になる」と結論づけている。そして、1974年の国連総会決議が呼びかけたような、「核兵器及び他の大量破壊兵器のない中東地帯」設置を主張している。

 一方、イラン経済制裁は食料不足を引き起こし、支配層ではなく民衆を困らせているだけなので、制裁反対の声が出ている。前のイラク制裁と同じように「民衆ジェノサイド」にしかならない。イラク制裁は民衆を困窮させたが、フセインの立場を強化した。

 《イランの脅威》は、具体的には何もない。軍諜報部が議会に提出した報告を見る限り、イランの軍事的脅威はあり得ない。軍を展開する能力もなければ、その戦略ドクトリンは純粋に防衛的で、外交交渉で決着がつくまで、自国への侵攻を食い止めようという戦略だ。仮に核兵器開発中だとしても(それ自体がまだはっきりしていない)、それは抑止力の一環としてだ。

 イラン非難のもう一つは、イランが周辺地域へ影響力を拡大しようとしている、というものだ。イランが、占領に抵抗するパレスチナ人を支援したり、米英が侵略・占領した国々の民衆を支援することが、核開発と同様に、グローバル秩序への脅威になるという。

 西側権力者と違って、国際世論はゼエブ・マオズに賛同しており、中東を大量破壊兵器排除地帯にすることを支持している。これにはイラン・イスラエルに、インド・パキスタンの両核保有国も含めるべきだろう。インド・パキスタン・イスラエルは、米国の援助で核兵器を開発した国である。国連の核拡散防止条約再検討会議では、中東非核地帯化を支持する国際世論が非常に高く、米国も、条件付きで同意せざるを得なかった。その条件とは、@イスラエルと周辺アラブとの間に包括的和平が成立すること、Aイスラエルの核を国際的査察から除外すること、Bいかなる国も(つまり米国は)イスラエルの核施設や活動について、情報提供する義務を負わないこと。

 イランについて大騒ぎするくせに、中東非核地帯化への関心は非常に薄い。中東地域の核脅威に対して最も建設的なアプローチであるにもかかわらず、議題にすら乗らないのは、中東で唯一核兵器を持ち、長い侵略と占領の歴史があり、超大国の後ろ盾を受けている国が反対するからだ。

 しかし米英は、イラクが大量破壊兵器を開発し、「核兵器及び他の大量破壊兵器のない中東地帯」という国連決議に違反しているという嘘の口実で、イラクを侵略した。今さらその口実を問わないとしても、それに賛同した国々は、中東を非核地帯にする義務を負っているはずだ。

血塗られたダマスカスへの道

主権国家・シリアを襲うトリプル同盟の戦争

3月16日 ジェイムズ・ペトラス

 シリアへの軍事介入に備えて、シリア政府を悪魔化する大掛かりなプロパガンダと、外交キャンペーンが演じられている。その目標は、中東における傀儡政権の押し付けと、西側帝国支配の強化である。イランの孤立化を進め、長期的には、中国およびロシアと、親密な世俗政権を除去することだ。

 最近の西側キャンペーンは、北アフリカからペルシャ湾に及ぶ「民主化運動支援」を口実にした、独立政攻撃の一部である。アラブ世界の民主化運動に直面して、西側諸国を後ろ盾にする、湾岸の独裁国家(バーレーン・イエメン・サウジアラビア)は、自国の民主化デモを武力弾圧した。

 NATO軍は、カダフィ大佐を抹殺し、何万ものカダフィ支援者と政府職員への、抹殺・投獄・拷問をすべて黙認した。リビアでのそうした破壊と支配の方法は、シリア介入の「モデル」となる。すなわち、西側および湾岸諸国から資金提供され、訓練されたムスリム原理主義者によって先導された、「大衆暴動」である。

 ダマスカスからテヘランへの血塗られた道

 米国務省の「ダマスカスを通るテヘランへの道」によれば、@NATOの戦略目標は、中東におけるイランの同盟国を破壊する。A湾岸専制君主国家は、世俗的な共和制に取って換える。Bトルコ政府は、イスラム的資本主義の指令に従順な政権を育成する。Cアルカイダおよびサラフィ派とワッハーブ派が同盟した、原理主義神政スンニ派政権は、新たなプロジェクト・パワーの踏み台として仕えさせる。Dイスラエルのヘゲモニーを確実なものとするため、シリアは分割する。

 シリアに対する戦争は、北アフリカからペルシャ湾に及ぶ西側軍国主義の、勢力拡張のための足がかりである。このためNATOは、シリア人に民主的・人道的かつ「文明化」を宣言する系統的なキャンペーンを強化している。

 ダマスカスへの道は嘘で敷きつめられている

 シリア武装戦士の主義主張を分析すると、暴動が民主主義を要求したものではないことがわかる。武装グループは、町々に潜入し、政府軍に攻撃を浴びせる際の盾として、住民の中心地を利用している。この過程で、何千人もの市民を暴力的に追放している。

 西側に支援された反乱軍は、政府庁舎を爆破し、輸送機関を妨害、石油パイプラインを破壊するなどの武力によって、地域を制圧した。彼らは教育、医療、水、電気など、シリア国民にとって重大な基盤事業を遮断し、混乱させた。

 彼らのプロパガンダ製造工場は、ロンドンにある。英国諜報機関と連携しながら、NATO軍の介入に思わず感傷的に味方してしまうような、残忍な物語を作り出している。その名も「シリアの人権監視所」である。

 これは「内戦」ではない。NATOの帝国主義者、湾岸国の専制君主、ムスリム原理主義者の同盟と、世俗民族主義政権との国際紛争である。

 欧米にシリア「解放」を要求する左翼たち

 アサド政権の国民投票は、何百万もの有権者に支持された。シリアの大多数が、交渉による和解と傭兵暴力の拒絶を望んでいることを示している。

 米国およびヨーロッパの経済制裁は、住民を深刻な欠乏に追いやり、反乱軍への支持を広げることが目的だ。NATOは、シリア経済や市民社会を破壊して、シリア国民を「解放」しようというのだ。

 シリアにおける西側の軍事的勝利は、イスラエルを勇気づけ、血なまぐさいイランとの対決を招くだろう。

 「左翼」と「進歩主義者」は、民主化デモを「革命的戦い」として、リビアに容赦ない非難を表明し、手を洗ってさっさと立ち去ってしまった。そして今度は、シリアに対しても軍事介入を要求している。マンハッタン、パリのカフェやオフィスから、シリアの「人道的危機」に干渉するよう、欧米に要求しているのである。

 この自由主義者、進歩主義者、社会主義者、およびマルクス主義者たちは、ダマスカス、アレッポなどのシリアの町々が服従し、NATOによって爆撃された後、勝利に浮かれた傭兵たちの血塗られたどんちゃん騒ぎの中で、すべての関心を失うだろう。

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