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原発事故による環境汚染

事故対策予算を狙う御用学者たち

日本農業を根本的に 考え直す好機に

石田紀郎さん(市民環境研究所)インタビュー

市民環境研究所の石田紀郎氏に、原発事故に起因する環境汚染について話を聞いた。実態調査しない環境省と現役研究者たち。そして背後でちらつく「特別予算」という名のカネの影。今後の被災地農家の命運と、汚染土壌から採れた野菜を「食べる」ことの意味などを語ってもらった。同氏には、堂々巡りを繰り返す原発事故・補償議論に新たな一石を投じていただけたと思う。

石田氏のインタビューを読んで、あらためて「起こってしまった事故への対処法」について考えていきたい。(編集部・蓮尾)

動かない環境省 調査しない関東の研究者

──汚染状況が公表されない。実際はどの程度か?

石田…ほとんどデータがありません。環境省が、力の強い経産省等に抑えこまれて、動けないからです。しかし、政府も情報隠しが難しくなってきています。近く詳細な汚染地図が発表されるでしょう。政府に調査・情報開示を迫るのは、研究者の社会的責任でもあります。様々な角度からの調査が必要です。

──特に海洋汚染に関するデータがない。小出氏は、海草を調べれば、比較的簡単にわかると仰っていたが…。

石田…何人かの研究者に、東京湾から船を出して海域調査をするよう働きかけましたが、動きませんでした。しっかりした調査はまだで、政府発表を待つしかありません。今後、食物連鎖による汚染濃縮などが問題になるので、調査が必要です。

──よく役割を果たしていると思われる研究機関は?

石田…事故発生直後に現地に飛んだ、今中哲二氏をはじめとする京大原子炉実験所の研究グループでしょう。一方、東大にも調査設備は数多くあるはずですが、一向に動きません。なぜ調査すらしないのか?不思議です。

調査活動に留まらず、事故に関する関東の研究者の動きは消極的です。槌田劭氏(物理学者・環境経済学者)が代表となって、関西研究者の有志は、4月19日に菅首相に提言書を提出しました。本来なら、被災地に近い関東の研究者たちが提言書を作り、関西の研究者にも署名を求めるのが、順当な姿です。が、現在もそのような呼びかけはありません。

カネの影に行動控える研究者

──研究者の動きが鈍い理由とは?

石田…理由ははっきりしています。これから事故対策予算が組まれます。調査・研究費も莫大です。現役研究者は、予算を多く得るために、政府に不利益となる発言を控えているのです。

だから、京大を含む関西の研究者たちも、同じ理由で行動を控えている人が大半です。私は、彼らに「社会的責任を果たせ」と、再三要求しています。

京大の原子核工学の先生方にも、要請し続けています。8月に市民環境研究所の勉強会で説明の機会を設けるつもりです。

原発事故対策のための税金を払っていくのは今の学生たちだというのに、彼らはほとんど関心を持っていません。今の若者は何をしているのだ?という気分にさせられます。

(以下一部のみ.全文は1421号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

「汚染野菜を食べる」という選択

──被災地農家支援のために、福島県産野菜を食べようという呼びかけが行われているが、「健康のために福島産の野菜を拒否する」人々に対する風当たりも強くなっている。この動きをどのように見ているのか?

被災地農業は絶望的

新天地での就農支援を

──福島の農家の今後については?

石田…心苦しいのですが、被災地での農業は絶望的です。いっそ、新天地で新たに農業を始めていただきたいのです。日本には休耕地・過疎地がたくさんありますから、技術のある農家なら再起が可能です。

方向定めて百点求めるな


[取材を終えて]

石田氏の話を聞いて、私は自分の視野の狭さを恥じた。私の方が遥かに若いのに、氏のような柔軟な発想が無かったからだ。

確かに、我々は「一かゼロか」という議論に傾倒しすぎているように思う。「福島の農家が以前の生活を取り戻すか、それとも滅びるか」のような議論が、いかに現実を無視したものか、実感を持って理解できる。

ただ、自己弁護になるが、「若者が一向に動かない」については、仕方がないとも思う。関西の学生にとって、原発事故は、対岸の火事程度の認識しかないのだ。スーパーに福島産野菜が並ぶことはないし、関西の汚染情報は(一定量の汚染はあるだろうが)あまり発表されていない。

そもそも、新聞を読む習慣を持つ学生が少ないのだ。インターネット上には原発事故に関する情報が溢れているが、ネットで得た情報は実感に繋がらず、行動にも繋がらない。彼らは、情報を得ているように感じるだけで本質的なものは得てはいない、と私は思う。

石田氏と槌田氏の「世の中を変える原動力」論の差異は興味深い。石田氏は「怒りを継続させること」と言った。一方、槌田氏は、「自分が幸せだと思うことを周りに広めること」だ、と仰った。現状への怒りをエネルギーとして、幸せと思うこと(=解放のイメージ)を広めるという社会変革に不可欠の両面を両氏は、各々語っている。

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