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誤謬回避の創意工夫

ラテン・アメリカと21世紀社会主義L

参加型直接民主主義の実験

2010年7・8月号 『マンスリー・レビュー』

マルタ・ハルネッカー(チリの社会学者、ジャーナリスト、活動家女性)  /翻訳・脇浜義明

慈悲深い父親的国家は 人民を物乞いにする

思想家や政治的指導者が「21世紀社会主義」と呼ぶものの特徴を述べる。実はその多くは、もともとマルクス思想だったものの再表現である。

21世紀社会主義思想は、資本主義のように人間を他の人間から切り離した個人という発想から出発しない。人間は他の人間との関わりと共同発展の中で自らも発展する社会的存在、と見るのである。

フランスの哲学者アンリ・ルフェーブルが言うように、抽象的な市民、何もかもから超越し、金持ちでも貧乏人でもない、若くも年寄でもない、男でも女でもない、あるいは今述べたもののすべてであるような、そんな抽象的市民は存在しない。ミオドラグ・ゼチェヴィッチも、「存在するのは、人間の中で人間に依存して生活する具体的人間だ。コミュニティや組織の中で他の人間といろいろな形でアソシエイトしながら、自分たちの利益、権利、義務を実現している人々だ」と言っている。

社会的人間を社会主義的民主主義の哲学的基礎に置くが、これは決して個人を否定するものではない。私が言わんとするのは、個人の人間性も極めて社会的なもので、社会的価値― 例えば「連帯」という価値観 ― を発展させることで、その個人も成熟し、完全に近づくということなのである。個人的存在と社会的存在は相補的で、弁証法的関係にあり、個人としての特性と個人が位置する社会的環境とを切り離すことは不可能である。

この考えは、集団の名のもとで集団成員間の違いを抑圧する「集団主義」を否定するものである。集団主義は、マルクス主義を断片化して歪曲したものだ。「ブルジョア法は人間の違いを考慮せずに形式的・抽象的に平等化する」と、マルクスが批判したことを思い出してほしい。彼は、「本当に平等な分配は、人間の多様な必要性を考慮に入れるべきだ」と主張した。そこからあの有名な「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」という格言が出てきたのである。

21世紀社会主義の目標は、「人間の完全発達」である。政府とか前衛が、上から制度として与えるものではない。人民とともに建設するプロセスである。その建設過程で人民を取り巻く環境が変化し、同時に変化の作り手の人民も変化するというプロセスである。上が与えるものでなく、奮闘して実現していくものなのだ。

 参加することで自信と成長が生まれる

「全面的人間的発展」と言ったが、どのように実現されるのだろうか?レボウィッツは、「我々が日常的に自己を豊かな人間として再生産できる条件を生み出すのは、革命的民主主義だけだ」と言っている。彼が意味するのは、「形式ではなく実践としての民主主義、主人公あるいは主体として実践する民主主義」である。「この意味での民主主義 ― 職場における主体的民主主義、地域社会や共同組合やコミューンにおける主体的民主主義こそが、人民が革命主体へと自己変革する場、人民民主主義である」と彼は言う。

だから、それは民主主義に社会的内実を与える―ベネズエラの知識人で政治的指導者アルフレド・マネイロが、人民の社会問題(食糧、ヘルスケア、教育へのアクセス)解決に関して、この言葉を使った―ばかりではなく、人民が社会環境変革のために闘う過程で自らも変革している場、民主主義を深め、変革するものなのだ。

マネイロによれば、地域社会が結束して歩道橋設置を勝ち取ることと、父親のような国家が歩道橋を住民に与えてやることの間には、雲泥の差があるのだ。慈悲深い父親的国家と人民主体民主主義とは、両立しない。前者は人民を物乞いにするだけだ。我々は受動的市民の文化から、決定し実行し管理する市民、自分で物事を管理運営し、自分で物事を治める市民の文化へと移行しなければならない。ベネズエラの元教育相アリストブロ・イストゥリスの言葉を借りると、「人民のための政府から人民の自治政府、人民が権力をもつレベルにまで移行」しなければならない。

チャベスの演説の中で、人民主体という発想が繰り返し表れている。彼が一般の民主社会主義を唱える政治家と異なる所以である。2009年6月11日のラジオ・テレビ中継演説で、彼は、1920年にクロポトキン(ロシアのアナーキスト)がレーニン宛に書いた手紙を長々と引用した。クロポトキンは、次のように書いたのだった。「地方の人たち、農民や労働者の下からの参加がなければ、新生活を作り出すことはできない。ソビエト(評議会)がまさにこの下からの組織作りだと思ったのに、今やロシアは名目だけのソビエト共和国になってしまった。党の人民支配が…ソビエトの力と創造エネルギーを破壊してしまった」。

あらゆる次元で人民が参加し、人民が主人公となることが、人民自身の成長と自信になる。1999年の憲法会議で承認されたボリーバル憲法は、人民の公共問題への参加を強調、人間が個としても集団としても発展するのは、主体的参加を通じてであることを力説している。

特に第62条は、「人民の公的政策作成・実行・管理への参加は、人間の個的及び集団的発達の前提条件である人民主体形成にとって、必要不可欠な方法である」と規定、さらに「この参加を促進する好条件を作るのが国家の責務であり、社会の義務である」と述べている。加えて人民の「能力と力量」を発展させる他の方法について、第70条が述べている。「自治、いろいろな協同組合…その他相互扶助と連帯の価値観に基づく諸アソシエーション」。

地方レベルの参加については、参加型調査や検証、参加型予算、参加型監査が強調されている。最初は、地方公共計画委員会が設立された。その構成は、既成の制度的代表(市町村長、市町村議員、教区会代表)と地域住民代表から成り、前者よりも後者の割合が大きかった(49対51)。地域住民主体という政治意思の反映であった。

地域社会・職場・課題別etc  あらゆる場で自治の拡大を

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