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▲原発内での作業風景

▲建屋が吹き飛んだ福島原発
更新日:2011/04/21(木)

[コラム] 平井憲夫/原発がどんなものか知ってほしい

原発で働いていた元配管技能士の生々しい報告

「原発がどんなものか知ってほしい」と題する平井憲夫氏(原発で働いていた元配管技能士)の講演録要約を掲載する。

原発は、素人の作業者によって作られ、素人の検査官に検査されている。しかも古い原発は耐震設計もかなりいい加減で、福島原発は、地震そのものを想定していなかった、という驚くべき内容だ。

◆  ◆

平井憲夫:1997年1月逝去。1級プラント配管技能士、原発事故調査国民会議顧問、原発被曝労働者救済センター代表。

「安全」は机上の話

私は、原発反対運動家ではありません。20年間、原子力発電所の現場で働いていた者として、「原発とはこういうものですよ」というお話をします。

原発について、設計の話をする人はたくさんいますが、私のように施工、造る話をする人がいないのです。しかし、現場を知らないと、原発の本当のことは分かりません。

私は、プラント、大きな化学製造工場などの配管が専門です。20代の終わりごろに、日本に原発を造るというので、スカウトされて原発に行きました。

◆  ◆

1995年に阪神大震災が起きて、国民の中から「地震で原発が壊れたりしないか」という不安の声が高くなりました。国や電力会社は、耐震設計を考え、固い岩盤の上に建設されているので安全だ、と強調していますが、これは机上の話です。

世間一般に、原発や新幹線、高速道路などは、官庁検査によって、きびしい検査が行われていると思われています。しかし、新幹線の橋脚部のコンクリートの中には型枠の木片が入っていたし、高速道路の支柱の鉄骨の溶接は溶け込み不良でした。一見、溶接がされているように見えていても、溶接そのものがなされていなくて、溶接部が全部はずれてしまっていました。

なぜ、このようなことが起きてしまったのでしょうか。その根本は、現場の施工、管理を怠ったためです。

素人が造る原発

原発でも、原子炉の中に針金が入っていたり、配管の中に道具や工具を入れたまま配管をつないでしまったり、いわゆる人が間違える事故があまりにも多すぎます。

机上の設計の議論は、最高の技量を持った職人が施工することが絶対条件です。

原発にしろ、建設現場にしろ、作業者から検査官まで総素人によって造られているのが現実ですから、原発や新幹線、高速道路がいつ大事故を起こしても、不思議ではないのです。

日本の原発の設計も、優秀で、二重、三重に多重防護されていて、どこかで故障が起きるとちゃんと止まるようになっています。しかしこれは、設計の段階までです。施工、造る段階でおかしくなってしまっているのです。

ひと昔前までは、現場作業には、棒心と呼ばれる職人、現場の若い監督以上の経験を積んだ職人が班長として必ずいました。職人は自分の仕事にプライドを持っていて、「事故や手抜きは恥だ」と考えていましたし、事故の恐ろしさもよく知っていました。

それが10年くらい前から、現場に職人がいなくなりました。全くの素人を、「経験不問」という形で募集しています。素人の人は、事故の怖さを知らない、何が不正工事で何が手抜きかも全く知らないで、作業しています。

例えば、東京電力の福島原発では、針金を原子炉の中に落としたまま運転していて、1歩間違えば、世界中を巻き込むような大事故になっていたところでした。老朽化した原発も危ないのですが、新しい原発も、素人が造るという意味で危ないのは同じです。

現場に職人が少なくなってから、素人でも造れるように、工事がマニュアル化されるようになりました。マニュアル化というのは、図面を見て作るのではなく、工場である程度組み立てた物を持ってきて、現場で1番と1番、2番と2番というように、ただ積木を積み重ねるようにして合わせていくんです。そうすると、今、自分が何をしているのか、全く分からないままに造っていくことになるのです。事故や故障がひんぱんに起こるようになった原因のひとつです。

原発には放射能の被曝の問題があって、後継者を育てることができない職場なのです。原発の作業現場は暗くて暑いし、防護マスクも付けていて、互いに話をすることもできないような所ですから、ちゃんとした技術を教えることができません。

それに、いわゆる腕のいい人ほど、年問の許容線量を先に使ってしまって、中に入れなくなります。だから、素人でもいいということになってしまうのです。

「原発というのはとても技術的に高度なものだ」と思い込んでいるかも知れませんが、そんな高級なものではないのです。

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