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更新日:2011/01/25(火)

[社会] 「天下る介護」から「地に萌ゆる介護」へ
──遥矢当

宿泊可能デイサービスの大ブレーク

2010年は、介護の世界にとって、後年振り返るべき転回点になりました。一言でいうなら、「介護保険制度の理念を忠実に掲げてきた事業者」が姿を消して、「高齢者の求めるサービスを、違法スレスレでも提供していく事業者」が、介護の世界を引っ張っていく、そんな新しい時代の幕開けでした。財源が厳しく問われる介護の世界ですが、「高齢者不在」の介護保険制度に小さな風穴があいたことは間違いなさそうです。

特に話題になったのは、「宿泊可能なデイサービス」の大ブレークでした。「茶話本舗」(*1)をはじめとする事業者は、「デイサービス=日帰り介護」という固定観念を覆し、介護保険制度外の付加的サービスとして、宿泊付き介護サービスを自主的に展開して、一大ブームになったのです。

これは、在宅介護に限界を感じている家族が、ショートステイや施設入所の順番待ちに耐えかねて、「とりあえず、今すぐに高齢者を預かって欲しい」というニーズに応えるものでした。

民家を改造して、最低限の介護サービスだけを提供する。よく言えば質素な小規模介護施設です。この介護サービスは、介護保険の請求、人員配置、安全面などに不安を抱えながらも、多くの支持を集めました。それは、茶話本舗の小柳壮輔代表が「民間企業こそが介護サービスを増やすことができる」と、介護を利用する人々の声に最大限応えた結果だったと言えます。

激しい論争

これに対し、既存の介護サービス事業者や団体は、「宿泊付きデイサービス」に厳しい問題提起を行いました。特に三好春樹氏やそのブレーンとして有名な長崎浩氏、下村恵美子氏らは、茶話本舗と激しい論争を交わしました。

その批判は、「宿泊付きデイサービスは、介護保険制度外のサービスなので違法」という法律論と、「フランチャイズ展開の介護サービスは、概して質が悪く、高齢者の生活の質を落とす」という批判で、介護を扱う雑誌などでも意見を二分しました。三好氏らは、高齢者の生活の質向上よりも、利潤追求を優先した「介護難民のキャンプ」との厳しい批判も加えました(*2)。

しかし私は、むしろ批判者に対し「あなた方は、利用する人々の声を最大限尊重して運営してきたのか?」との疑問を持っています。反対派が言う「市場主義による介護」は、利益追求で成り立っていく介護です。しかし、そうならば、株式会社として介護に関わり、コンサルティングしている三好氏や長崎氏も、「茶話本舗」などの事業者たちと同類です。こうした批判は、介護のインフラ整備を民間に委託した介護保険制度自体に向けられるべきで、三好氏らは、しかるべき代替の社会保障制度のモデルを示すべきです。

思えばこれまで多くの事業者は、「私たちの理念に共感するなら、利用してください」と、高齢者に上から目線で呼びかけるものでした。そんな不遜ともいえる態度の事業者たちの代表が、昨年5月に経営破たんした「ゼクス社」(東証一部・*3)だったのかもしれません。こうした介護事業者たちが排除され、代わりに「泊まり付きデイサービス」が大ブレークしたというのが、真相でしょう。まさに「事業者の交代」が行われた1年でもあったのです。

*1 関東圏を中心に発達した「泊まり付きデイサービス」の草分け。創立者は藤田英明。2007年よりフランチャイズ制度での展開に成功する。

*2 以下も参照されたい「月刊ケアマネジメント」(11月号)http://seikatukaigo.co.jp/top/data/caremane_day.pdf

*3 かつて首都圏や関西で「ボンセジュール」「チャーミングスクエア」などの有料老人ホームを運営していた不動産ディベロップメント。放漫経営により昨年5月に上場廃止となり各事業は他社への譲渡が行われている。

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