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▲ナトリウム冷却高速中性子型増殖炉をもつ「もんじゅ」
更新日:2010/12/10(金)

[社会] 複雑・大規模・高額な維持費…何より危険な「もんじゅ」は廃止しかない

増殖するかもしれない「高速増殖炉」?

「夢の原子炉」と言われている高速増殖炉。燃やした燃料以上の燃料を生み出すという。もしそうなったら、エネルギー資源のない日本は言うに及ばず、人類全体への福音である。少々技術的に困難でも開発する価値はある。

「もんじゅ」を建設・管理する原子力機構は、こうした開発の意義や反原発派から寄せられる批判に反論するパンフレットを作っている。費用対効果、安全性から海外の動向にも触れて、世界で唯一となった高速増殖炉を正当化するのだが…。

京大原子炉実験所教員だった小林圭二さんに、原子力機構の主張を検証してもらった。(編集部)

本当に「増殖」するのか?

── 燃料が増えるというのは、本当ですか?

小林…燃料となるプルトニウムを効率よく作り、消費量より多く作ること(増殖)をめざして開発された原発が、高速増殖炉です。「もんじゅ」の場合、消費量の1.2倍のプルトニウムを生み出すことが目標とされました。

しかし実際は、増える速度が遅すぎるうえ、加工や再処理に伴うロスを考慮すると、「増殖」というのは、誇大宣伝もいいところです。

同じ高速炉をもう1基動かすために必要な燃料量を生み出すまでに必要な時間=「倍増時間」を調べてみると、図1となります。

倍増時間は、T・再処理や燃料加工中にどれだけのロスが出るか、U・炉外期間(@原子炉から取り出して貯蔵プールで放射能と熱が下がるのを待ち、A再処理工場でプルトニウムを取り出し、B加工工場でペレットに加工して、被覆管に詰めて燃料棒を作り、C束ねて燃料集合体を作り、D高速増殖炉の原子炉に装荷するまでの時間)の2つで大きく変わります。

仮に最高条件と考えられているロス率5%、炉外期間4年で計算しても、倍増期間は約90年となります。原子炉の耐用年数を軽く超えていますから、実用上「増殖」の意味はありません。もしロス率が13%を越えると、原子炉で増えるプルトニウムより炉外の行程でロスするプルトニウムの方が多くなって、「増殖」どころか減る一方の高速炉になります。

── 原子力機構は、「21世紀中に高速増殖炉を主流とする原子力発電を実現する」と言っているようですが。

小林…世界は、とっくに増殖炉から撤退しています。米国が最初に開発を始め(1951年)、英国・旧ソ連・フランス・ドイツが次々に参入しました。しかし、米国は83年に、英国は88年に、フランス・ドイツは91年に、撤退を決めました。

撤退の理由は、@超危険であること(安全に運転する技術開発が見通せない)、A金がかかりすぎること、B核兵器製造に繋がり、核拡散を招くこと、です。

開発から半世紀以上経って、世界のどこも実用化できていませんし、日本の「もんじゅ」も、実用化の2段階も手前の「原型炉」です。しかもナトリウム漏れ事故で止まり、今年5月、14年半ぶりに再開しましたが、一旦停止中の作業で、燃料交換のための装置の一部を炉内に落としてしまい、再開のめどは立たなくなってしまいました。

さらに、使用済み燃料の再処理技術は、未だ確立されていません。高速増殖炉に比べると容易だとされる軽水炉燃料の再処理さえ、様々な技術的課題を解決できず、六カ所村再処理工場は止まったままです。高速増殖炉の使用済み燃料再処理は、はるかに危険で難しい技術なので、全く見通しが立っていません。実用化の根拠は、一体どこにあるのでしょうか?

なぜ「もんじゅ」はダメなのか

── 「『もんじゅ』は金がかかりすぎる」という批判に対し、原子力機構は、『実用化された段階で、軽水炉と同等以上の経済性が得られる」と言っています。

小林…高速増殖炉の開発費用は、これまでに1兆4200億円くらいです。原子力開発機構は、9032億円(1980〜2009年)と発表していますが、この中には、専用の燃料製造工場建設、燃料製造費など、5000億円ほどの燃料関係費は含まれていません。

ちなみに、「もんじゅ」の建設費は5886億円ですが、同じ出力当たりで軽水炉と比較すると、約5倍も高価です。維持管理費は、停止中でも年間約200億円、運転を再開すると233億円(2010年度)です。

なぜそんなにお金がかかるかというと、大量に使用する冷却材のナトリウムが固まらないように、常にヒーターで加熱していなければならないうえに、桁違いに危険だからです。複雑で大がかりな高度の安全設備が多種多様に必要となり、建設費も運転費用も高くなります。

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