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更新日:2010/11/15(月)

[社会] 尖閣諸島中国漁船衝突事件 反中ナショナリズムに抗する論理とは?

ナショナリズムそのものから自由になるために

渋谷で2500人が集まり、『中国の領海侵犯を許すな』といったプラカードを手にしてデモ行進(10月2日)。行動を呼びかけた元航空幕僚長の田母神俊雄は、集会で「核を作ると脅してでも、尖閣は守り抜かなくてはならない」とまで発言したという。

一方、日本共産党も「日本の領有は歴史的にも国際法上も正当−日本政府は堂々とその大義を主張すべき」と赤旗で主張する。

「領土」「国益」という言葉が出てくると、途端に人は、「奪るか、奪られるか?」「強いか、弱いか?」という2者択一の論理に乗せられてしまう。伝統的左翼まで含めた反中ナショナリズムの煽動に抗し、ナショナリズムそのものから自由になるための論理と主張を寄せてもらった。

革命中国の周恩来は、日本への戦後賠償請求を放棄し、「日中戦争での両国の犠牲者は共に日本軍国主義者の共通の犠牲者である」との認識を示した。こうした高い倫理性こそ国籍・民族を越えて人を惹き付ける。

ただし、現実政治の外で原則論を言っているだけでは不十分だ。ナショナリズムに傾く民意をどう変えるのかという行動提起こそ必要となるだろう。(編集部)

再審に付されるべき近代国家の論理●現代企画室編集長・太田昌国

国家を背景にして発言したくはない、と思い続けてきた。国家人あるいは国民という自己規定に基づいて発言することはしたくない、とも。それは、先人たちが火傷を負い、他民族にまで害悪を及ぼした日本民族主義・日本国家主義の克服をめざす立場から、である。

加えて、国家なるものは、私自身のアイデンティティを最後まで根拠づけてくれるような存在ではないからである。人類史をふり返ってきて、たかだか数世紀の歴史しかもたない近代国家の枠組にわが身を預けてしまうことの、自他に対する「危うさ」を知ったからである。

そのような立場から、いわゆる北方諸島問題について発言したことがある。ソ連体制末期の1991年、当時のゴルバチョフ大統領の来日が予定されていたころ、日本での「北方領土返還運動」は、メディア上での世論扇動も、右翼の情宣活動もピークに達していた。日本もソ連も、近代国家の枠組の論理で相互の対立的な主張を繰り返していたのだが、私の考えでは、領土問題はそのような国権の主張では解決できない種類のものであった。

近代国家の形成以前から、「無主地」であるそこを生活の現場としていた先住民族の共同管理地域として、領土紛争なき自由地とするしかない。日本からはアイヌが、ソ連からはサハリン、シベリアの北方諸民族が集って、土地と周辺海域の利用方法を考えればよい、と私は主張した。

国民国家の論理を否定するこの解決方法を「夢想」と嗤う者もいたが、国境や排他的経済水域の論理で国家同士が角突き合いしていれば解決できるという見通しを、その批判者とて持っているわけでもない。ならば、一見したところ永遠の彼岸にあるかのごとくに見えるかもしれない、脱国家主権の論理に基づいて、「地域住民」による共同管理の方途を探ることを提案し、その具体化を図るという道をたどる者がいてもよい。その場合、「地域住民」のなかには、近代国家形成の過程でそこへ「植民」してきて今も住みついている人びとを、排他的な既得権を主張しない限り排除しない、という程度の倫理を忍び込ませておけばよい。

ひとが、現存する秩序を前提としてしか発想ができないものであるならば、遠く未来を見通した理想を語ることも、来るべき未来を夢想することも、それを手近に引き寄せるために日常的な努力する者も、立ち現われることはない。

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