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更新日:2010/01/18(月)

[社会] ますます集団凶乱化する犯罪報道
──ジャーナリスト/同志社大学社会学部メディア学科教授・浅野 健一

人権そっちのけのメディア・フレンジー

私が『犯罪報道の犯罪』(昭和堂から09年6月『裁判員と「犯罪報道の犯罪」』と改題して刊行)を出版して25年がたった。あのころと比べて「犯罪報道は良くなったか」と、よく聞かれる。被疑者の呼び捨て廃止など改善された面もあるが、凶悪事件で逮捕された被疑者を犯人視し、家族も巻き込んで社会的に抹殺し、殺人事件の被害者が女性だとアルバイト先のことなど個人情報を平気で報道するなど、悪くなった点も多い。

若い記者で「名前や顔写真を出すのは、社会的制裁を与えるためだ」と公然と言う人が少なくない。

1989年に報道界が一致して被疑者の呼び捨てを廃止した際、「新聞が社会的制裁機能をもってはいけない」(読売新聞)、「無罪推定の法理を尊重する」(毎日新聞)を誓ったことが忘却されている。

朝日新聞は1990年3月11日付「読者と新聞――編集局から」で、「顔写真掲載などによって被疑者や被害者をさらし者にするような扱いはすべきでない」と述べ、公人を除いて連行写真・顔写真掲載を抑制する方針を公表した。「赤旗」は1991年から匿名原則を採用、聖教新聞は被害者の匿名原則をとっている。神戸のサンテレビは事件直後の被害者の直接取材を原則として行わないと決めた。地方紙には微罪匿名、被害者の顔写真不掲載原則などの動きもある。

こうした改革は、90年代のオウム事件、和歌山カレー事件などで、被疑者を「さらし者にしてもよい」という雰囲気が報道界に蔓延した。少年も凶悪事件では実名にすべきだという田島泰彦上智大教授、松井茂記大阪大教授らのメディア用心棒学者が現れた。

今年5月21日の裁判員裁判制度の開始を前に、08年1月、裁判員制度に関して「被疑者を犯人と決め付け裁判員に過度の予断を与えない」(新聞協会)、「一方的に社会的制裁を加えるような報道は避ける」(民放連)などの報道指針を出した。人権と犯罪報道の大きな前進を期待したが、全く裏切られた。

その典型的な例が11月10日夜、英国人女性死体遺棄容疑で逮捕された男性の移送取材合戦だった。男性の両親の顔が出た。こんなことは昔はなかった。

「別件逮捕は違法」という認識もなくなった。「本件」を調べるための逮捕なら妥当というヤメ検の弁護士が、テレビで暴言を連発する。

最近は別件の逮捕で、堂々と本件が報道される。埼玉県の「34歳の女」と鳥取県の「35歳の女」周辺の 不審死 報道に関する取材と報道は、まさにメディア・フレンジー(凶乱)だ。

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