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[政治] 北朝鮮／私たちの頭上に発射された政府・マスコミからの「ミサイル」

はじめに

北朝鮮ロケット発射についての記事について、１３４３号紙面で、脇田憲一氏から「異議あり！」との表明がされました。

これについて読者の皆さんからの意見をいただきましたので掲載します。引き続き投稿を募集します。（編集部）

私たちの頭上に発射された政府・マスコミからの「ミサイル」●奈良　森本忠紀

北朝鮮のミサイル発射を巡って日本国中が大騒ぎした３月下旬、私は憂鬱な気分で過ごしていました。あたかも北朝鮮からミサイルが今すぐに飛んでくるかのような騒ぎ方にとてもついていけなかったからです。

そんな時、『人民新聞』４月５日を読んでハッとした。軍事費の比較で米国＝５４７０億�j、日本＝４３６億�j、北朝鮮＝50億�jという数字を示されれば一目瞭然。北朝鮮の軍事費は日本の12％に過ぎない。

さらにもう一つ。「時評短評」欄でイ・ウンジャさんが「相手を理解することの大切さ」を訴えているが、これこそ、私が言いたかったこと。あの騒ぎで、日本の戦争国家体制が進んでいくことを実感させられながらも、あの騒ぎの中で私は有効な反撃ができずに焦っていたのでした。

政府・マスコミ連合軍の標的は憲法９条。これを何が何でもなきものにせんと支配者が躍起になっているのがこの国の現在です。もちろん一朝一夕にここまで来たわけではありません。

時評短評には、「これまで作り上げられた北朝鮮に対するイメージを払拭することは難しいだろうが、『たとえ違和感や疑問があっても理解するために対話しよう、そのためにはどんな条件が必要なのか？』考える世論の動きをつくっていかなければならない」とあります。

日本で繰り返される「人間つぶし」

私たちは北朝鮮に対しては作られたイメージでしか知りません。

例えば「独裁国家」と言われますが、日本の自民党「独裁」だってどれだけえげつないことをやってきたか。そして今もやっているか。戦前の時代と比べても現在が自由だとは決して言えません。かつて国鉄民営化で国労を解体し、日の丸・君が代で教組を、郵政民営化では全逓が潰されていきました。

そしてラジカルな闘いを繰り広げる、関西生コンのような組合に対しては、警察と司法が一体となって潰しにかかる。

しかも、いずれの場合も単に組織が潰されただけではなく、人と人が分断され、大勢の人を自殺に追い込み、それよりもっと大量の人々が精神や心の健康を壊され、病むことを余儀なくされるまで責めて虐め抜く。このような執拗な人間潰しがやられてきたのが、この国の現代史です。

それなのにそんな生々しい歴史を知っているのは、、実際に人間潰しにあった、各職場の人だけです。これで北朝鮮と比べてどこが自由な国なのでしょうか。ですから、私たちが北朝鮮の真実の姿を知らないということは、とりもなおさず真実の日本を知らないことと同義です。

私は重信房子さんの救援運動をやっていますが、これまで傍聴してきた裁判は、ひどい内容のものでした。「赤軍のメンバーは有罪」という答えが最初から決まっているのが見え見えで、裁判はそこへたどり着くための芝居に過ぎません。裁判で心身を削いでいる重信さんがあまりに気の毒です。裁判が終れば、生きて獄を出られるかどうかわからない厳罰の判決が待っていることでしょう。

それは重信裁判だけに限らず、正義を求める裁判はみんなそうです。そこに裁判の公正さなどどこにもありません。日本での裁判が公正だと信じているのは、実際の裁判をあまりに知らな過ぎる人だけでしょう。

またひとたび監獄に入ればそこでは人間がいかに人間扱いされないか。獄中の人、あるいは獄中に身内や友人を持つ人なら誰でも知っています。日本人が知らない真実の日本が獄中からははっきり見えているに違いありません。そして、その傾向は近年ますます強まっています。ですから、「日本は北朝鮮と比べて自由な国だ」と声高に叫んでいるのは、日本の社会変革を望まず、支配者の言いなりになる人々だということがよくわかります。

もう一つ、あの大騒ぎの中で私たちは大事なことを見落としていました。それは、いざ戦争になったら、国は決して私たちを守ってはくれないということです。先の15年戦争で兵と国民にあれほどの犠牲を出して国が守ったのは天皇の命だったというのが、最大で唯一の教訓だったではありませんか。

「守ってやるから」と言いながら、国民から最大の犠牲を引き出すのが戦争である。それが明らかになっていたら、あの騒ぎはあったでしょうか。マスコミが言う「国民の関心事」とは、《国が国民を守る》ことを前提にしなければ成り立ちません。つまりあの大騒ぎにおいてマスコミの果たした役割とは、《国が国民を守る》と国民に集団催眠にかけたことでした。戦時においてマスコミが果たす役割とは何と恐ろしいことか。

ここへきて私は初めて、「ミサイルは発射されていた」という現実に気が付きました。ミサイルは発射されて私たちの頭上を直撃している。発射したのはもちろん北朝鮮ではなく、日本政府・マスコミ連合軍です。あの大騒ぎの最中、私たちは何一つなす術なく、新聞、テレビから繰り返し流されるおびただしい情報の受け手以外の何者でもあり得なかった。しかも事の真偽を判断する材料は何もなく、受身のまま。あれはまさに私たちの頭上にミサイルを射ち込まれた状態そのものでした。

それもこれも『人民新聞』が見事に迎撃してくれたおかげで見えてきました。これからも、国民に向かって発射されるミサイルを今度は私たち自身が迎撃していかなければと思っています。