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更新日:2008/09/28(日)

[コラム] 大今歩/限界集落に「村おこし」を求める愚かさ

ルポ「限界集落の挑戦」(『世界』8月号)をめぐって

私が18年間暮らしてきた京都北部の山村は12世帯17人、そのうち75歳以上が13人で、高齢化率は76%を超えている。いわゆる限界集落の1つである。

1反6畝の田と1反の畑で作物を育てつつ、週4回勤めに出る。村の役は否応なく回ってくる。今年は私が自治会長、妻が民生委員である。その上、夏は出役も多い。市道や公民館の草刈り、獣害を防ぐための電気柵の設置など、時に農繁期は目の回るような忙しさである。それでも村の皆で支え合って暮らしている。

「限界集落」の「村おこし」は酷

『世界』8月号でルポ「限界集落の挑戦」(大江正章)を読んだ。冒頭に隣市である綾部市内の2つの「元気な『限界集落』」が取り上げられている。フキのオーナー制度による村おこしをすすめる集落や、栃餅づくりで収益をあげる集落が紹介されている。大変すばらしい取り組みだとは思うが、これらの集落を山村再生のモデルケースと捉えて、都市民との交流や特産品の生産など、「村おこし」(村民の「自助努力」)を求める姿勢が気になった(もちろん行政の援助の必要は力説しているが)。

都市の高齢者は悠々と年金生活を送っているのに、限界集落では主に高齢者が村を守り、田畑を耕している。そのうえ「村おこし」を求めるのは、あまりにも酷であると考えるためである。

例えば、私の隣村(やはり限界集落)では「棚田体験ツァー」と称して、田植えや稲刈りの時、都市住民との交流を続けているが、高齢化が進む中、「イベントは大変だ」とか。「結局、村民が途中の世話(水の管理や除草)を任されることへの不満」をしばしば耳にする。

まずは都市と同等の行政サービスを

限界集落が生まれたのは、山村に公共サービスが及ばなかったためである。これに国鉄・郵政民営化や「平成の市町村合併」が拍車をかけた。ルポ「限界集落の挑戦」は、このような政府による山村切り捨て策を見失わせる恐れがある。

限界集落再生のためには、まず山村切り捨て策を改め、都市部と同等のサービスが山村の住民にも受けられるように取り組むべきだ。

例えば、現在野党が国会に提出している郵政民営化廃止法案を成立させるなど、政府による山村切り捨て政策に終止符を打つべきである。また、都市部では老人福祉のためのコミュニティーバスが運行されているが、山村にこそその運行が必要である。公共交通機関が全くない山村が多く、自家用車のない高齢者は、買い物や病院にも行けない。1日1往復は町の中心部と過疎地域を結ぶコミュニティーバスの運行が実施されるべきである。

高齢者が安心して暮らせる山村を

もちろん、行政には移住者を増やすための空家のあっせんなどにも取り組んでもらいたいが、都市部と同等の行政サービスこそが、山村が存続できる条件を作り出す。

山村は夏は涼しいし、水や空気がおいしい。高齢者が安心して暮らせれば、多くの人が移住し、限界集落でなくなる可能性がある。限界集落存続のためには、高齢者に「村おこし」や「都市民との交流」を求めるのでなく、山村に当たり前の行政サービスを供給できるか否かが問われているのである。

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