人民新聞オンライン

タイトル 人民新聞ロゴ 最新版 1部150円 購読料半年間3,000円 郵便振替口座 00950-4-88555┃購読申込・問合せはこちらまで┃人民新聞社┃TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441┃Mailto:people@jimmin.com
反貧困社会編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事
更新日:2008/06/15(日)

[コラム] 大今歩/食料自給率が上がればよいのか

世界中で穀物不足が深刻で、特に小麦や大豆などの値上がりが著しい。アジア諸国では、米などの食料価格高騰に反対するデモや暴動が相次いで起こっている。その結果、米輸出国であるタイ・ベトナム・インドなどは輸出規制を実施している。

日本でも小麦の高騰により、パンなどが値上がりしたため、米が見直されていることなどから「米が足りない」との米販売業者の要請を受けて、農水省は政府備蓄米の放出を決めた(5月28日「朝日」)。このような状況の下、今日の日本の食料自給率がカロリーベースで39%しかないことを問題視して、日本の「食料安全保障制度」の破綻を危惧する声をマスコミは繰り返し報道している。しかし、私はこのような動きに疑問を禁じ得ない。

まず、第一に政府や農協(JA)の身勝手さにあきれる。例えば私の住む京都府北部の農協は「営農だより」の4・5月号と続けて「最近の小麦急騰の影響か、じわじわと米の流通価格が上昇気味です」と、昨年産の米の出荷を勧めている。このように農協が古米の出荷を農家に強く求めることは近年にない。これまで農水省や農協は、米の部分的な輸入自由化を受け入れ、減反政策を強行してきたのに、手の平を返したように、米不足を訴える変わり身の早さには驚く。戦前小作農をさんざん切り捨てながら、戦中や敗戦直後に食料が不足すると、農家に米などの供出(強制収容)を強いて、農家は自家用米すら供出させられたが、今回の動きにそれに共通するものを感じる。「食料安全保障体制」の名のもとに供出制のような、農業に対する管理強化が進むことを恐れる。

第2に、食料自給率増加の方法の問題である。政府は「国際競争に生き残るため」として、10〜15fの大規模農家の育成をすすめてきた。しかし、ほ場整備を請け負った土建業者は潤ったが、地代の支払いや農業機械の購入費などがかさみ、大規模農家の経営は苦しい。それに大規模な農業経営には、農薬や除草剤の大量投与が伴い、安全な食糧供給や環境保全から程遠い。

第3に、食料自給率増加のためには、中小規模農家(多くは兼業農家や老後の農家)の存在が欠かせないのだが、その担い手を育てる議論が欠けている。例えば私の住む山村の隣村では、高齢化のため、水田の担い手がほとんどなくなってしまった。そこで私の住む山村の人々が代わって耕作しているのだが、その人たちも2〜3年すれば耕作が困難なのは目に見えている。その一方で農業を志す人がいるのに、「農民」以外が農地を取得することは非常に困難である。新たに農業を志す人にこのような制限をなくして門戸を開くべきである。「半農半X」を含めて、新規就農者を受け入れていくことしか、農業再建の道はない。

最後に都市に暮らす人々も、農業を他人事と考えないで、自分たちの暮らし方を再点検してほしい。家庭菜園や食品加工など、いくらでも都市の生活の中でできることがあると思う。

続きは本紙 【月3回発行】 にて。購読方法はこちらです。
[HOME]>[ コラム ]


人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F
TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441 Mailto:people@jimmin.com
Copyright Jimmin Shimbun. All Rights Reserved.