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[社会] リゾート感覚の介護施設？！
遥矢当

「震度六強、長野県飯綱町」。七月に発生した新潟県中越沖地震。長野県の小さな避暑地にも被害が及んでいるとのニュースを見た私は気を揉んだ。今春、転職活動中にこの町の介護施設から誘いを受けていた。その後、その施設は被災していないと聞き、幾分安心した。

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五月初旬、池袋のハローワークから紹介されたのが長野県飯綱町の介護施設。履歴書を送ると、会社の顧問から「すぐに会いたいので、今から長野に来られないか？」と提案してきた。気分転換の旅行にもと思い、長野新幹線に飛び乗った。

長野駅に着くと、秘書だという女性が高級外車で出迎えた。県道を二〇分ほど走った山中に、忽然と風光明媚な山荘が現れた。中に入ると、すぐ顧問が現れ、履歴書を元に面接が始まった。

顧問によると、この施設は、長野県北部で初めての民間介護施設だという。ショートステイ事業と、デイサービスが施設の主なサービスで、建物は旧財閥系の銀行が手放した保養所を買い取って改築したもの。顧問は「県は地元以外の社会福祉施設を認めず、立ち上げには本当に苦労した」と付け加えた。

館内を案内され、バルコニーから眺めた風景は、とても介護施設のものとは思えなかった。野尻湖を下に、ゴルフ場、テニスコート、キャンプ場、そして結婚式場まで揃っている。「就職したら、好きなときに遊んでかまわないよ」と言う顧問。聞けば彼の前職は、保守系衆議院議員の秘書だという。「国会議員の力を借りなければ、ここまでの事は出来なかった」とも語る。

「これだけ広大な敷地の維持費を、もっと介護内容の充実に回せないものか」との思いがよぎったが、こんな施設があるのも悪くないと前向きに思い直した。

面接終了後、物珍しさも手伝って館内を改めて見回した。豪華すぎる設備は、とても介護施設とは思えない。だがこの豪華さとは裏腹に、高齢者やスタッフはどことなく活気に乏しい。

施設の周囲を見渡しているうちに、人生の最期を迎えるために必要な物がないことに気がついた。生活相談員の女性に聞くと、医療機関から遠く、救急の場合でも救急車がすぐには到着しないという。利用者の身に何かあった場合、緊急医療を受けられないまま全てが終わってしまいかねない。