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更新日:2007/08/22(水)

[コラム] 社会保障制度/人を守ることが社会の役割なのに
──深見史

払った金が返ってこないから「問題」なのか!

四月の統一地方選挙で、生まれて初めて選挙運動をした。活動するにあたって我が候補者にお願いをした。

「私が母子家庭の母としての活動を始めたきっかけは、ある朝の新聞記事だった。ある母子家庭の母が失業を苦に首吊り自殺をした。小学生の息子がそれを発見、母の死を校長先生に電話連絡した、という。その記事の何がショックだったかと言うと、小学校の校長先生にしか連絡できなかった、ということから、彼ら母子の人間関係の薄さ、貧しさが推測されたからだ」。

「当時、私も二人の子を連れて離婚し、無職、一文無しのどん底にいた。自殺したその人が、不安や孤独を経由して絶望し、自殺を決意するまでの気持ちを想像することがたやすい自分に驚愕した。『わが子を守ってやれない』と知った彼女の絶望を思い、私はこれ以上ないほどの怒りを感じた。母が死んでいるのを見た少年は、その光景を一生忘れることはないだろう。こうした人々がいることを知ってほしい、こうした人々とともに闘ってほしい」。

我が候補者は涙を落とした。「私の父も首を吊って死んだ。少年だった私はそれを見た」と彼は語った。貧しさのために死んだ父の姿が、彼の政治的姿勢の原点だと言う。

彼は貧しい人にしか興味を示さない。この町が大工事で醜く変容し、過疎地の交通機関がなくなり、病院が減り、福祉がとことん削られる中、貧乏人、選挙権のない人たちのために闘ってきた。

私は彼の父のことを知らなかった。知っていたらこんな話はしなかったろう。私は、初体験の選挙運動で彼を選んだことを誇りに思った。議員でなくてもやるべきこと、やれることは山のようにある。それをやってきた人こそ議員にふさわしい。

今、確かに原点に立ち戻って考えたい。「社会が人を守る」、それが社会の本当の機能だということを確認したい。

今回、選挙の争点とされる年金問題とは何なのか。払った金が返ってこないから問題なのか?現行制度では、払った金より受ける金が多い人もいれば、国民年金第三号被保険者のように、全く払ってないにもかかわらず、年金を受ける人もいる。それが維持できないことが問題なのか?

一九五六年の『厚生白書』はこう語っている。

「過剰人口の重圧が低所得階層を沈澱させつつあるという問題、人口の老令化がもたらすいわゆる老人問題、さらに母子世帯の生活問題は、いずれも人口問題から見たわが国の社会のゆがみといってよいものであり、このゆがみは、具体的には国民の各階層間の所得のひらきという点に、ひいてはまた、生活水準のひらきという点にあらわれているわけである。(中略)われわれの生活する社会のこのゆがみには、このまま放置すれば容易ならぬ事態を招来する危険も予想されるのであって、一つには、戦後の経済復興のための資本蓄積という至上命令のもとで今日まで重ねられてきた無理が、このゆがみを相当に大きくしてきたことも争えないであろう。経済復興が一応軌道に乗り、戦後は終った、というかけ声さえある今日、真剣に社会保障制度の本格的拡充という課題と取り組まなければならない時期が到来したというべきである」。

こうした「社会保障の拡充」の方向で、一九七三年には、老人医療の無料化、健康保険の家族給付の引き上げ、児童手当制度、雇用保険制度等が発足した。「福祉元年」と謳われた年だ。

ところが、サッチャー・レーガンの時代に入るとともに、この国もまた「社会保障制度の本格的な拡充」ではなく「本格的な後退」を選択する。八〇年に発足した臨時行政調査会が社会保障制度における国庫支出を削減する案を提示したのを受け、一九八二年から「福祉見直し」が始まった。老人医療無料化は廃止され、年金支給年齢が引き上げられた。その後も、介護保険制度新設、健康保険本人負担率の引き上げ等、社会保障制度の縮小が続いた。

言うまでもないが、年金制度は社会保障制度なのである。改めてそう言うと、なんとも違和感のある言葉になる現状にこそ、こだわりたい。年金問題を「払ったのにもらえない問題」にとどめるのではなく、社会保障制度の問題、社会の根幹を問う問題として考えたい。人を守ることこそ社会の役割であることを確認したい。人を守ることができない社会は、社会とはいえない。

今日の無残な状況を、そうした原点から見直したい。

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