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[コラム] 日豪安保協力共同宣言／津田光太郎

米の威信にかげり

この三月一三日、安倍晋三首相は訪日中のハワード・オーストラリア首相とアジア太平洋地域の安定や国際貢献での協力をうたう「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に署名。共同宣言の具体化に向けた行動計画の策定と、外交・防衛閣僚による定期協議（日豪安全保障協議委員会＝２プラス２）の創設に合意した。戦後、日本が安全保障の分野で他国と協力関係を結ぶのは、日米安保条約を結ぶ米国との同盟関係以外これまでなかったことだ。というか、有り体にいえばこれまでアメリカがそれを許さなかった。

米国のアジア・太平洋における安全保障戦略は、ＮＡＴＯ（北大西洋条約機構）のそれとは根本的に異なる。アジア・太平洋の安全保障機構のあるべき姿は、ちょうど扇風機の様な形だ。米国というしっかりした軸（ハブ）があり、米国と太平洋の各国と個別に条約を締結しそれが羽根（ファン）となって軸のまわりを回転する。かくして太平洋は幸福なアメリカの海として確保されるのであって、かつ安全が保障される。地域の安全保障とかいって「羽根」同士が勝手に仲良くすることは許さない。ＮＡＴＯの様になってしまえば最悪のシナリオだ。──アメリカは、これまでこう公言してはばからなかった。だから、日本は侵略戦争の反省などそこそこでいい。アジアの憎まれ役であってくれるのが、安全保障上の大切な日本の役割だ。