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更新日:2004/06/07(月)

[コラム] 75歳の過労死〜老後を人質にとって女に結婚を迫る日本の年金制度
──深見史

七五歳の病院付添婦マサコさんは、その日連絡もなく欠勤した。風邪が流行っていたから、急に熱でも出て連絡もできなかったのだろう、と職場の同僚は思った。…まじめな人だからよほど具合が悪いのだろう、明日には出てくるか、連絡はしてくるだろう。しかし、次の日も彼女は姿を見せなかった。

欠勤が続いて一週間、彼女のアパートを訪れた同僚が見たものは、すでに堅くなった老女の身体。過労死だった。

マサコさんは決して寂しい老人ではなかった。女学校時代の親しい友達がたくさんいた。時おり集まって、おしゃべりしたり旅行したり、の楽しいつきあいがあった。マサコさんが他の友人と違っていたのはただひとつ、彼女は結婚しなかったが、他の友達は結婚していたということだけだ。しかし、若い頃から知り尽くした仲間たちはみんな大同小異の人生を送っていた…かのように見えた。

マサコさんと他の友人たちの決定的な差が明らかになったのは、彼女たちが老境にさしかかった時だ。

友人たちの夫は、多くが妻を残して先に逝った。「未亡人」となった友人たちは、ますます元気に、習い事や海外旅行に忙しい楽しい老齢期を迎えた。老父の世話をして青春期を過ごしたマサコさんは、父なき後、わずかな遺産を元に、小さな雑貨店を開いた。昔の仲間とは、相変わらず仲良くつきあった。

間口一間のささやかな店は、長くは持たなかった。マサコさんは、パートの仕事をあれこれこなしたが、七〇歳を過ぎると、それもおいそれとは見つからなくなった。友人のつてを頼って、病院の付添婦になった。小柄な七〇歳にはきつい仕事だったが、他に選択肢はなかった。楽しそうな友人たちの暮らしを傍目に、マサコさんは身体にムチ打って働いた。文字どおり、死ぬまで。

同じ学校を出て、同じように「人の世話」をして、同じ老齢を迎えた女が、人生の最後に向き合わざるをえなかった大きな差こそ、今話題の「年金」に他ならない。「妻」がそんなに偉いのか!という話だ。

マサコさんの友人たちの老後を保障しているのは「遺族年金」だが、年金制度改革の中で、おそらく最大の課題を抱えながらもタブー化されているのが、「国民年金第三号被保険者問題」だ。

「政治家の誰それが、何ヶ月分の保険料支払いをさぼった」などという話を、鬼の首でも取ったように騒ぎ立てる暇があれば、一一三三万人の人が、年間一兆八〇八二億六八〇〇万円にもなる保険料を払ってないことを、なぜ問題にしないのだ!この一千万人余は、「保険料未払い」ではなく、免除(受給は三分の一)でもなく、「全額支払ったことになっている」ので、年金は満額受け取ることができる。しかも多くの場合、これらの人はその年金だけで生活するわけではなく「夫の年金」受給も前提化されている。これが厚生労働省のイメージする「平均的モデル世帯」の老後だ。このモデル、「四〇年勤務した夫と専業主婦の妻」だそうだから、あきれる。「結婚して、男は四〇年間働き、女は年収一三〇万円以下のパートをやりながら夫の世話をする、離婚なんかしない」、こんな退屈な男女セットをモデルにしている以上、年金制度を公平に改正するなどできるわけがない。

不安のない老後を生きるためには結婚するしかない! その露骨な脅しが、第三号制度には含まれている。それを選ばなかったり、選べなかった(特に)女は、「自己責任」で過労死でもなんでもすればいい、というのが現行制度だ。結婚はするもしないも個人の自由、誰と住もうがひとりで生きようが自由だ。ならば、年金は個人単位で計られてこそ当然ではないか。

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