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更新日:2004/05/18(火)

[海外] パレスチナ/不当なイスラエル入植地の「正当化」に手を貸すNASA
──脇浜義明

西岸入植地のジュディア・サマリア大が「ロボット工学」分野でNASAと提携
──マサチューセッツ工科大と東北大も参加?

「ガザ撤退」を土産に訪米したシャロンは、計算通り、自らはイラク占領で失敗して苦境に陥っているブッシュから、@パレスチナ難民の「帰還権」の否定、Aイスラエル軍は一九六七年のグリーンラインまで撤退をしなくてもよい、という二つのお墨付きを貰い、彼の方の占領政策の継続を認めてもらった。

本当はもう一つ、「アラファト殺害」の許可も欲しかったのだが、それは不首尾だったようで、代わってハマスのヤッシン師の後継者・ランティシをターゲット・キリングした。これで「ロードマップ」は、提唱したブッシュ自らの手で壊されたわけだ。さすがの自治政府も、「これはテキサス州を中国へやるの同じことだ」と非難、難民問題と国境線については、「イスラエル・パレスチナ両者の交渉で解決」と言っていた米国の裏切りに失望と激怒。もうパレスチナ人は誰も、自爆攻撃を止めたり、ハマス活動家を拘留したりしなくなるだろう。

シャロンの「ガザ撤退」も、あくまで「見せ金」で、予定の二〇〇五年末までに口実が見つかれば、居座る腹は見え見え。そもそも「撤退」となると、ガザ入植者の移住先の手配、補償金問題、撤退後誰を統治者とするか、撤退軍の再配置などの問題が、山ほどあるはずだが、まったく手づかずである。

ここまでは、日本の新聞でも報道されていることだが、もう一つシャロン─ブッシュ会談に付随していることがある。この会談の前日、シャロンの土地強奪・接収の中で、最も象徴的な西岸地区入植地「アリエル入植地」にある「ジュディア・サマリア大学」(イスラエルは、パレスチナの地をジュディア・サマリアという、聖書に載っている地名で呼ぶ)が、同大学の研究者が開発中の「新ロボット工学プロジェクト」に、NASAの「ジェット推進研究室」が関心を持ち、相互提携し、二〇〇九年の火星探索事業に編入したい意向である、と発表した。

これは、占領地の不法入植地を、初めて外国の公的機関が認め、それに多額の財政援助をすることを意味する。同大学のロボット工学は、宇宙への応用だけにとどまらない。同大の発表によれば、「自動ロボットによる道路や敵対勢力地域のパトロールなど、治安や防衛任務も遂行する」とある。つまり、占領政策に利用できるのだ。

アリエル入植地―NASA提携について、アリエル入植者は誇らしげに記者会見し、その中で、「他にまだ二つの有名な研究機関とも協力関係の予定だ」と言った。その有名な研究機関とは、米国のマサチューセッツ工科大学と、日本の東北大学である。

イスラエルの平和団体「グーシュ・シャローム」は、外国の研究機関が、アリエル入植地のような国際法違反の犯罪者の正当化につながるような提携や支援に憂慮、中止をアピールしたので、以下、それを翻訳する。なお、世界の人々にも同じようなアピールをすることを要請している。

アピール

拝啓

西岸地区のイスラエル入植地・アリエルにある「ジュディア・サマリア大学」が最近、同大学のツヴィ・シラー教授、及びシュラガ・ショヴァル博士が開発中の「ロボット・ナビゲーション車両」に、NASAのジェット推進力研究室が関心を寄せていることを発表しました。聞くところによると、NASAはこのシステムの購入と、計画中の火星探索に利用するために、同大学との提携をも考慮しておられるとのこと。

私たちはこのニュースに驚き、心を痛めております。まず知って頂きたいのは、この「ジュディア・サマリア大学」が、純粋な学問の府ではない、ということです。それは、領土に関して「既成事実を作る」目的と、独立パレスチナ国家樹立を妨害する目的で意図的に作られた、政治目的の機関です。破廉恥にも、国際法を無視して強奪した、パレスチナ人の土地に作った入植地を、永続化しようとするものです。

また、アリエル入植地の周りにイスラエル政府が建設計画している「分離壁」は、イスラエル国内と国際社会で非難の的になっています。ハーグの国際司法裁判所でも審議されている犯罪行為なのです。

「ジュディア・サマリア大学」をアリエル入植地に作ったのは、不法な入植地に、「正当」であるかのような粉飾をし、あたかも「大学町」であるかのような装いを凝らす目的のためです。

こんな大学と何らかの契約を交わすとか、研究プロジェクトに多額の資金援助を行うことは、中東の平和を実現するプロセスにとって、極めて有害な行為となります。さらに同大学で開発中のロボット工学システムは、単に科学研究の領域にとどまらず、軍事的利用を視野に入れたもので、占領地のパレスチナ住民の支配と抑圧に直接関係しています(同大学発表の中に「敵対勢力地域のパトロール」という文言があることによっても、そのことは明らかです)。そのようないかがわしい研究プロジェクトを正当化し、そのうえ資金援助を行うことは、NASAまたはジェット推進力研究室、およびその他の由緒ある学術機関の利益にならないことは明らかです。ぜひ再考されることをお願いいたします。

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