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最終段階に入った関西国際空港二期工事  水没する運命の関空は撤去以外にない!
讃岐田 訓(神戸大学)

2003年 12月15日
通巻 1164号

空港ビル倒壊の恐れ

 いま建設中の関西空港二期埋め立て工事が、一二月九日最終段階に入ったという。しかしこの無謀な事業は、誘導灯のない真っ暗闇の空港に、有視界飛行で着陸してゆくようなものだ。

 いま、緊急の大問題が、現空港での「地盤沈下問題」である。沈下が止まらないのだ。大阪湾の海底地質は、大阪層群と呼ばれる。空港島の海底では、厚さ約二〇mの沖積層と、その下に、四〇〇m以上の洪積層が続いており、上部ほど軟弱である。

 関空の一期工事は、平均水深一八mの海域を厚さ三三mの土砂で埋め立て、九四年九月に開港した。この土砂の厚さは、開港五〇年間で平均一一・五mの地盤沈下を想定した時、最高潮位をクリアーするためには、海面より三・五mの高さが必要と計算されたからである。

 埋め立て開始から、当初は年に〇・五mぐらい沈下し、その後、〇・二mぐらいずつ沈下を続けてきた。ところが今では、予測を超えて平均一二・一mも沈下しており、今年も平均〇・二mの沈下が見込まれている。それも悪いことに、不等沈下を起しており、場所によっては、一四・五mに達している。

 大きく沈下しているのは旅客ターミナル地区と航空機燃料用貯油タンク地区である。旅客ターミナルビルの地下室の床が、満潮海面より低い高さにまで、不等沈下の形で沈み込んでいる。もし、台風や地震で高潮が押し寄せた場合、地盤中の地下水面が上昇し、地下室が水没する恐れがある。もしこうなった場合、地下室が水圧により亀裂が生ずるか、水没部分に浮力がかかり、ビルが浮き上がって、倒壊する恐れすら出てきた。

 貯油タンク地区はさらに沈んでおり、通常の満潮時には、地下水面がタンク底面から一・六mまで上昇するので、すでに消防法違反になっているのである。

浅知恵のツケ

 では、護岸で囲まれた埋め立て地の地盤が、なぜこのように水浸しになるのか。この原因は、じつは関空会社自慢の緩傾斜石積み護岸にあるのだ。

 海底からの高さ、二一・五mの護岸を維持するために、垂直護岸ではなく、裾野を広げて緩やかな傾斜をつけたのである。ところが、さらに色気を出して、直径数十センチの石を積んでつくり、海水が出入りできるようにして、隙間に生息する生物群によって、海水浄化をはかる、という浅知恵をつかったのだ。周囲を立ち入り禁止の海域にして、禁漁区にしたので、石積みには海藻が繁茂し、魚類も戻ってきた。関空会社は、「大阪湾が浄化され、魚の楽園ができた」と大はしゃぎをした。

 これで墓穴を掘ったのだ。潮の出入りができるので、空港島の地中も、干潮、満潮に連動して、地下水位が上下するのである。そして、予測をはるかに超えて、空港島が沈下を続けているのだ。

 追い詰められた関空会社は、二七〇億円をかけ、〇一年から二年がかりで両地区の周囲に、高さ四〇mもの防水壁を埋め込む工事をおこなった。しかし、昨年秋、全日空貨物ビル地下一階の浸水を皮切りに、数十ヵ所の浸水が明らかとなり、さらに四五億円の投入となった。

 関空は二期埋め立て島と抱き合って、いずれ水没する運命にある。撤去する以外にない。

人民新聞社

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