青空カラオケ強制撤去顛末記

大阪天王寺公園

2003年 12月15日
通巻 1164号

 本紙でもお伝えしてきた、大阪・天王寺公園の「青空カラオケ」が、大阪市によって一二月一五日、強制撤去された。結局、ほとんどの店舗が、自主撤去に応じる形で店を畳んだことになる。

 市側は「話し合いをしない」という姿勢を一切崩さなかった。カラオケ店側は一二月八日、国(国土交通省)に「大阪市に対し、強制排除の執行をとりあえず停止するように指導して欲しい」旨の申し入れをおこなったが、即日却下された。同日、大阪市は物々しく天王寺警察の警官にガードされながら、「一五日に強制代執行を行う」と通告。打開策が見えない状況に、各店の従業員に不安の日が続いた。「残念やけど、店閉めるのしゃあないなぁ…」と、諦めムードに。

「ダメでもともと!」三店が有料ゲート前に再出店

 そんな一三日早朝、片付けを始める店もちらほら出始めている中、屋台の中の三店が、公園の有料ゲート前付近に再出店した。そこは、同じ天王寺公園の敷地内ではあるが、「除却命令」の出ている区域の外に当たっている。二店が、その日のうちに営業を再開した。

 「また大阪市は『除却せえ』言うて来るやろうけど、ダメでもともと」。強制排除が目前に迫る、異様に緊迫した雰囲気の中で、それでも店側の人たちの表情は、意外にも明るかった。

 土曜日で公園への人出が多かったせいもあって、カラオケはお客さんで大にぎわい。来る人来る人が、記者に向かって「みんな楽しみにしてるんや。突然言われても殺生な話やで」「他にこんな所ないよ」「大阪市に負けたらアカンで」「私はねぇ、歌いはせんかったけど、昔から楽しみにしていたのよ。ここも寂しくなるねぇ」「本当になくなるの?残念やなあ」と話しかけてきた。

 大阪市は、その日の午後六時過ぎに、「午後八時までに口頭か文書で弁明を行え」と通知。二時間足らずしか弁明の機会を与えない、というのは驚くというよりあきれるしかない。こういうことだけは仕事が早い大阪市だ。

 翌一四日(日)。焦る大阪市は、この日のうちに「戒告書」「立ち退き命令書」「代執行命令書」交付のプロセスをやろうと画策。そうすれば有料ゲート前に移動した店舗に対しても一緒に強制排除ができる、と考えたらしい。三〇人ほどの隊列を組んだ「大阪市ゆとりとみどり振興局」がやって来たが、お客さんと支援者、店側が一体となり、いったんは撃退。

 その日の、数回に渡る騒動の中で、大阪市の人間(パンチパーマの男だという。)が、何も知らずにトイレから出てきたばかりのカラオケ店のママの足を蹴り上げる暴行事件が起こった(全治五日の打撲)。ニヤニヤ笑っていたという。とことん人を馬鹿にした行動に抗議すると、締め切った公園事務所の門扉の中から「そういう事実はなかったと認識しております」と慇懃無礼な官僚的対応に終始した。

 ゲート前に移動した店も、日曜夜のうちにやむなく自主撤去。大阪市に涙を呑まされることになった。

 一五日は、警察が物々しい警戒に当たる中、大阪市が当事者・支援を排除し、二〜三時間のうちに、天王寺公園から「不法な」青空カラオケは一掃された。柵に挟まれた、かつての「カラオケ通り」には「秩序」が戻った。しかし、その「平穏」な風景はあまりに寒々しく、大阪市の「活力ある大阪のまちづくり」の姿が、こういうものならば、大阪の街が廃れていくのも時間の問題だ。

 「やっぱり行政には勝たれへんわ」と話しかけてくる人は多かった。しかし、この「青空カラオケ」をつくり、また支え、楽しんできた人たちのエネルギーは、また姿形を変えて芽を出すことだろう。(小比類巻)

人を人とも思わぬ扱い また野宿者を脅かす大阪市

今年五月下旬に、JR大阪駅のバスターミナル付近で野宿している人たちの荷物を、大阪市が勝手に持ち去り、焼却してしまう事件があった(六月五日号で既報)。

 今もって大阪市は、謝罪すらしない、というごう慢な態度をとり続けている。それどころか、この事件を教訓にもしようとしていないようだ。この事件に交渉と抗議活動をねばり強く続けている「釜ヶ崎パトロールの会」によると、交渉の席で大阪市は「今後は予告なしの荷物撤去もあり得る」と話したとのことだ。

 このままでは、大阪市がまた第二・第三の「荷物焼却事件」を起こすのは必至だ。(小比類巻)

各地で「越冬闘争」始まる。「生きて花咲く春を迎えよう」

本格的な冬を迎えた。これから春になるまで野宿生活を送る人々にとっても、厳しい季節だ。各地で野宿者支援を行う団体は、それぞれ「越冬闘争」に入った。

特に年末年始を控えたこの時期は、集中的な取り組みが行われている。野宿者に健康状態や近況などを聞いてまわるパトロール活動、炊き出し、行政機関との各種交渉、カンパ要請…などなど、厳しい冬を乗り越え、「生きて花咲く春を迎えよう」と精力的に働いている。

 各団体とも、炊き出し用の食料、それに毛布・衣類などの確保に苦労しているようだ。各団体への皆さんのご協力をお願いします。

 最近では、活動に参加する若者の姿も目立つ。頼もしい限りだ。皆さんも機会があれば、ぜひ「越冬闘争」へご参加下さい。

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 編集部までご連絡いただければ、(分かる範囲で)読者の皆さんの最寄りの「野宿者支援団体」を紹介します。(小比類巻)

へそ曲がりの独り言★番外編 出会ったホームレスに惚れたねぇ

 実は今朝のこっちゃ、いつもの遊歩道のベンチで自転車に一杯荷物を積んだホームレス風の中年のオッチャンに会うたんじゃよ、我輩がゴミを拾いながら近付くと、件んのオッチャン寝ていたベンチの周りのゴミを拾い集めて、我輩のゴミ袋に入れにござったんじゃ、我輩、感心したねえ、思わず彼に話掛けたがな。「昼から小雨が降るそうやで」、彼の返事「昨日中に大阪へ帰るつもりが、自転車のチェーンが切れて帰れんようになってしもて、此処で寝てましたんや。今日は帰れまっしゃろ」「西成か長居かいな?」「いや大阪城でんね」…。

 エエ背広着て皮カバン提げたオッサンが、道の吸い殻拾うてる我輩の直ぐ目の前でやで、まだ火の付いた吸い殻を平気でポイ捨てしよる時代でんがな。我輩このホームレスのオッチャンに惚れたねえ。一遍手土産提げて大阪城へ会いに行こ。呵々。

「大和の縄文人」申す。

人民新聞社

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