釜ヶ崎 |
釜ヶ崎・野宿の路上から |
2003年 11月5日
通巻 1160号
大阪市・西成署が騙し討ちで野宿テントを写真撮影今宮中学校南にある花園公園では、一〇月一〇日の午前中に、市立更生相談所元副所長の梅林氏が、一人で消毒薬の入ったタンクを背負って、「ちょっと消毒させてくれへんか?」と公園のテントに住んでいる人に聞いてきました。「消毒くらいやったらええよ」と気を許して言うと、おもむろに細長い棒状の噴霧器で薬剤散布を始め ました。 ところがふと見ると、知らない間に他の大阪市の職員と西成警察署の私服一人が公園に入っていて、テントに番号の入った紙を貼り、それを私服が写真に撮っていたのです。 公園の仲間が、「写真を写すな!」と抗議すると、その紙をはがして隠したそうです。連絡を受けて私たちが駆けつける と、マスクをつけ消毒液の入ったタンクを背負った梅林氏が、公園から出るところでした。
公園の仲間を油断させて、こそこそ情報を集めようとする大阪市や西成警察署のやり方は、姑息としか言いようがない。「正々堂々と文章を持って来い!」と公園の仲間に言われていたのが印象的でした。 青空の下、大阪・西成公園で「団結ソフトボール大会」開催一〇月二五日(土)、大阪市西成区にある西成公園グラウンドにおいて、「団結ソフトボール大会」が行われた。これは、毎年春秋の二回、大阪・名古屋・東京の野宿の仲間が集まって、開催されてきたもので、この秋、初めて大阪で行われた。 秋晴れの気持ちいい青空の下、好プレー・珍プレーが続出。体力不足や足が悪い仲間には仲間が代走に出たりするなど、お互いがカバーしあい、和やかな雰囲気の中で、四チーム(地元・大阪は二チーム)総当たり戦で試合をおこなった。結果は、三戦全勝で大阪の長居公園チームが優勝。
ソフトボール大会後は、同じ西成公園の「よろず相談所」で交流会。野宿をめぐる社会的状況がますます厳しさを増してくる中で、交流を深め、旧交を温め、団結を強める意味でも大きい一日だった。 野宿者の居宅保護への道を閉ざす国の姑息なごまかし今年の七月終わりに、厚生労働省が生活保護法の取扱いについて、「転居に際し、敷金を必要とする場合」の中に「野宿している人」を含めるという内容の通知を出しました。でも、「待てよ」と思います。 一九九九(平成一一年度版)の『生活保護手帳』には、「(前番号に掲げる場合のほか、)現住居においては最低生活を維持 することが著しく困難な場合と認められる場合」と書かれています。つまり、最低生活を維持できない段ボールハウスや、テントなどに住んでいる人に対しては、アパートで居宅保護を受けるための敷金等を出せることが、はっきりと明記されていたのです。 ところが、次の年の二〇〇〇年(平成一二年度版)の『生活保 護手帳』からはその項目が消されています。 私たちは、テントで生活している人のテントを住居とし、「そこでは最低限の生活が維持できない」として、西成区福祉事務所に対し、居宅を確保するための敷金を出すよう抗議と要求を続けていました。尼崎市の武庫川にかかる武庫橋の下に住んでいたTさんに対し、尼崎市に敷金を出させ、居宅保護を認めさせたのです。
そんな矢先に、この文章が突然消されてしまったのです。路上や公園、河川敷で生活している人たちが、アパートや文化住宅等を借りる場合、敷金等が出る項目があったのに、それを運動が盛り上がる前に消し去ったのです。厚生労働省のこの犯罪を断罪しなくてはなりません。その上で、「現住居においては最低生活を維持することが著しく困難であると認める場合」を復活させ、敷金等を出せるようにしなければならないと思います。 釜ヶ崎地域合同労働組合・釜ヶ崎炊き出しの会・いながきひろし事務所/大阪市西成区萩之茶屋二─五─二三 釜ヶ崎解放会館/電話・〇六─六六三一─七四六〇/ファックス・〇六 ─六六三一─七四九〇 大川河川敷のテントに「異動禁止」の仮処分が排除と収容を意図した「ホームレス特措法」が去年の七月に成立しました。大阪では今年に入って、京阪電鉄が中心となって、中之島周辺で地下鉄工事が始まっています。ところが、この工事を名目に、野宿している人達の追いたてが始まりました。今年の二月初めからです。 大川にかかる天満橋と天神橋の河川敷左岸に住む野宿生活者と支援の仲間は、建設業者と二度の話し合いを行いました。そのなかで、業者としてできることは、テント移動に際しての「お手伝い」ということでした。これではお話になりません。私たちは、河川敷で生活している人達の生活の保障については、「国か大阪府か市にその責任がある」と訴えています。
大阪地方裁判所は当事者の意見を聞かずに、中之島高速鉄 道鰍フ訴えを認め、二つのテントに対し、一〇月一七日移動禁止の仮処分を決定しました。ひとつは、私たち釜ヶ崎地域合同労組のテントです。司法・立法・行政、そして業者による強制排除との闘いは、これからも続きます。 野宿者がものをつくることで新たな関係創る「農業倶楽部」一〇月のあるよく晴れた日曜日。長居公園の野宿者を中心に始まった「さつまいも農業倶楽部」(一〇月一五日号記事参照)の畑作業に参加させてもらった。長居公園テント村にある「長居公園仲間の会」のテント前から朝九時に出発。自転車で郊外にある畑に向かった。 長居公園から畑まで、自転車で片道一時間足らずの距離。みんなで一緒に畑作業をするのは、週に一度(毎月第二・第四日曜と第一・第三土曜)。それ以外の日は、仲間が交代で水やりに行っているのだそうだ。 以前、「長居公園仲間の会」へのインタビュー時に、「『カン集め』の仕事っていわば都市型の労働じゃないですか。ぜひとも野宿者が直接生産に携われるような道を探っていきたい」というなかなか興味深い話を聞いたのだけれど、なるほど、この「農業倶楽部」は野宿生活を送る人たちが、疎外されている状況から「ものをつくる」という新たな可能性を自らの手で切り拓いていく面白い興味深 い試みだと実感した。 自分たちで自ら食べるものをつくる、というのに留まらず、新たな人間関係を創り出せるいい機会づくりにもなるだろう。 とまあ、そういった理屈も大事だけれど、青空の下での農作業は気分爽快。 畑仕事に不慣れな私は、体力不足をイヤというほど思い知らされたけれど、かぶりついた昼飯のおにぎりは、本当においしかった。
ちなみに、この長居公園「さつまいも農業倶楽部」の結成大会が、一一月一五日に「長居公園仲間の会」テント前で午後一時から行われる。 |
人民新聞社
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