人民新聞

特定非営利活動法人・
北海道グリーンファンド

 グリーン電気料金制度   

コーヒー1杯分の寄付で地球に
やさしい未来を手にしませんか?

2003年 10月5日
通巻 1157号


 原発のない未来のために「あなたもちょっとだけ節電し、節約した電気料金を、自然エネルギー普及のための基金に寄付しませんか」。こんなキャッチフレーズで、北海道グリーンファンドは、グリーン電気料金制度への参加を呼びかけている。会員は、月々の電気料金の5%を「グリーンファンド」として積み立て、市民共同の自然エネルギー普及のための「基金」として運用しようというものだ。
 この基金で、昨年9月浜頓別に風力発電「はまかぜ」を建設・稼働し、今年3月には二機目(秋田県)も稼働。石狩市に3号機の建設も決まった。脱原発社会に向けて5%節電し、節電した電気料金分の5%を出し合ってクリーンエネルギーを市民の手で創り出そうという提案だ。「北海道グリーン・ファンド」事務局の小林ユミさんに話を聞いた。    (編集部)

受身の反対運動から対案提示へ


 グリーン電気料金制度のきっかけは、1996年7月北海道電力が、泊原発3号機増設計画を発表したことだ。「原子力と命は共存できない」と反原発運動を担ってきた生活クラブ生協・北海道は、3号機増設によって得られる90万kWの電気が本当に必要なのか?を問い、学習会を重ね、欧州を中心とした自然エネルギー普及への政策転換、「グリーン電力」マーケットの広がりを知った。
 「国や電力会社に対する『反対運動』は、常に仕掛けられてから行動を起こしていかざるを得ないという壁」(小林さん)を乗り越える方法を模索していた人々は、脱原発社会に向けた対案提示へと方法を転換していった。
 電力会社の「電力が足りない」という宣伝に対し、原発に反対する自分たちの暮らしはどうなのか?を問うことから始まり、米国カリフォルニア州サクラメント市電力公社のプロジェクト「PVパイオニア」を知って、「グリーン電力料金制度」は具体的な形を見いだしたという。
 「PVパイオニア」は、地元の脱原発市民運動が、電力公社に提案し、実現したものだ。電力公社は、原発を止める代わりに太陽光発電を取り入れ、太陽光パネルを提供する。一方市民(太陽光発電ボランティア)は、太陽光パネルをつけるための4ドル(月々電気料金のおよそ15%)の拠出と、南向きの屋根を無料で提供する、というプロジェクトだ。「PVパイオニア」プロジェクトによってサクラメントの原発は止まった。
 これをヒントに「灯油の共同購入」を行っていた生活クラブは、灯油を電気に置き換えることで、「具体的でわかりやすく、誰もが参加できる仕組み」を作り上げていった。



気軽で無理なく続けられる仕組み


 グリーン電力料金制度は、(1)生活クラブが、電力会社からの請求に基づいて五%のグリーンファンド分を上乗せした金額を、共同購入と一括して組合員に請求する。(2)会員は、その請求額を口座引き落としで支払う。(3)生活クラブは集金したうち電気料金は電力会社に支払い、グリーンファンド分をグリーンファンドに拠出するというシステムから始まった。
 しかし、これでは生協組合員しか対象にならないため、すべての市民が参加できるように1999年7月に「北海道グリーンファンド」を設立、2000年1月NPO法人を取得する。現在会員1300名を数え、1億4150万円の出資金・基金を運用している。
 この制度のミソは、基金への寄付方法が簡便なことだ。毎月毎月電力料金の5%分を計算し、電力料金とは別に振り込むとなると、手間がかかり長続きしない。グリーン電力料金制度は、グリーンファンドが北海道電力からデータの提供を受けて会員に請求・徴収を行うので、会員はこれまでと同じように口座引き落としで、自動的に基金が積み立てられるというわけだ。
 このシステムを開発したことで、会員は飛躍的に拡大した。クラブ生協13000世帯のうち800世帯がまず会員となり、組合員以外で500人が会員となった。
 北海道の平均電気料金が約8千円なので、5%分の400円が基金として拠出される。仮に1万世帯が参加すると年間4800万円もの基金ができることになる。毎月コーヒー1杯分程度のお金で、自然エネルギー普及という環境保全活動に参加できるのだ。また、グリーンファンドに参加することによって、家庭内でのエネルギーに係るコスト意識が生まれ、少しでも電気料金を減らそう!という行動、つまりそれは「CO2削減など、環境負荷をかけないライフスタイルづくりにもつながる」のである。
 「方法が簡単で、目的が明確(風力発電建設)、やっている人もクラブ生協の人で顔の見える関係が作られており、安心感があったのが、広がった要因だ」と小林さんは分析する。



節電努力と相まってこその風車発電


 「グリーンファンドは、たくさん電気を使って5%分を積み立てましょうというのではなくて、できるだけ電気消費を減らしていこうという呼びかけです。そうしないといくら自然エネルギーを増やしても意味のないことです。私たちは、風車を建てることもやっていますが、力を入れているのは省エネライフスタイルの呼びかけです」と小林さんは語る。待機電力を減らす方法など具体的な省電力のノウハウを通信の発行や講座を開催して知らせている。
 グリーンファンド事業は、(1)グリーン電力料金制度と(2)市民共同発電所建設という2つのプログラムから成り立っている。(1)で節電を呼びかけ、(2)で自然エネルギーの提供を行う。
 2001年9月に稼働を始めた風力発電「はまかぜ」は、日本初の市民出資による共同発電事業だ。出力=990kW、年間約260万kWh発電し、北海道電力に年間約3000万円で売電されている。ちなみにこの風車の発電量は、約900世帯分の電力規模だ。
 建設費2億円のうち1億4150万円は、200人の個人と17の法人による出資で賄われた。これにグリーンファンドや寄付・カンパをあわせて総額1億6650万円が集まった。「日本のエネルギー政策に対する異議申し立て、原発への不安、そして泊原発3号機建設への怒りなど出資の動機は様々ですが、目的をはっきり持ち、透明性の確保されたプロジェクトには市民はお金を出すことが証明されました」という小林さんは「『1ヵ月に数百円の出資で2億円もする風車が一体いつになったら建つの?』とよく聞かれた」そうだ。「だから、あまり待たせずに目に見えるものを早く建てたかった」と振り返る。
 日々の節電を積み上げていく努力が、風車という形になったことで、夢が現実のものになり、参加者を勇気づけた。
 「反原発運動の中では、多くの人がデモに参加して盛り上がりましたが、運動の成果があまり見えませんでした。泊原発は1号機も2号機も稼働してしまい、3号機の計画までも出されています。こうした中で、街頭での運動は縮小しましたが、何かできることはないかと思っている人はたくさんいたのです。グリーンファンドは、風車という形に表すことが出きる成果を見せることができた」(小林)ことで、新しい運動展開が可能となった。
 脱原発運動の中で生まれた市民風車運動は、地域おこしの方法としても見直され、全国に広がりつつある。グリーンファンドは、節電という日々の積み重ねを持ち寄り、透明性の確保されたシステムで市民が集まれば、エネルギー政策という大きな国家プロジェクトに対しても、異議申し立て・対案提示ができ、「自分たちが何を望んでいるのか」を社会にはっきりと見せることができることを実証している。

追記:グリーンファンド会員は、基本的に北海道電力管内だが、道外の市民について定額5000円/月を積み立てる会員も募集している。
連絡先:北海道グリーンファンド 電話011-280-1870

 

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