キューバ訪問記 |
VIVA CUBANO SOCIALISMO!素敵なキューバ社会主義! |
下村純子 |
2003年 9月25日
通巻 1156号
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日本からメキシコ経由の空路で約16時間、キューバに行ってきました。実際に見るまでは「ソ連も中国も北朝鮮も全然ダメ。社会主義なんてもう頭の中にだけ巣くう理想郷でしかないんじゃないのかな?」と思い始めていたこの頃ですが、アメリカングローバリズムの腹のような位置にあって、この国は経済封鎖を受けながらも、みごとに小さな社会主義を頑張っている素敵な国でした。 1991年のソ連・東欧圏の崩壊以降、キューバは自力で経済を立て直さなくてはならない状況になり、食べ物を自給するために首都ハバナから、国をあげて持続可能な循環型有機農業に転換してきました。オルガノポニカ(有機栽培)の集団農場UBPCでは、ベースの賃金を保証しながら、やる気を育てようと、出来高均等配分制で農場と労働者にプラスしていく協同組合経営方式を取り入れながら、新しい社会主義的組織運営の形を模索して、成果をあげているところもありました。 食糧は、自由市場と基本的な食べ物がかなり安く手に入れられる配給制との併用でまかなっています。 更に医療・教育についても、120世帯に1箇所の割合で「ファミリードクター」という初期診療所が設けられていて、24時間無料で受診できます。日本では医療が金儲けの道具に堕してしまった感がありますが、「医療というのは人が健康に暮らす為にあるものだから、もし私が過疎地に赴任しても何の問題もないように教育を受けています。大学教育も無料ですから(ちなみに識字率は100%)、キューバでは気持ちと能力があれば誰でもが医者になれますよ。私たちは給料だけで十分なのです」と女性医師は明るく答えてくれました。こんな人に日本でも出会いたいものだと、しばらく彼女を見つめてしまいました。 モノは貧しくても、人々が歌やリズムと共にがやがやと陽気に生きている国。2000年作の映画『ブエナビスタ・ソシアルクラブ』を見た時もそんな印象を受けましたが、それは1つに、外貨の獲得という矛盾も抱え込みながらの国をあげてのこうした『人と自然を大事にする』政策の正しさと、2つ目に、旧来の「社会主義」諸国の政権にはないカストロたちの清潔さ、そして3つ目に、何よりも困難にめげないキューバの人々のラテン系の陽気さと大らかさ。そんな要素があいまって、「いま、ここ」を大切にする、魅力ある新しいキューバ社会主義は生み出され、支えられてきているのではと思いました。 社会主義という言葉の中に旧来の「社会主義」諸国の不自由さや窮屈さだけをイメージする人がいたら、一度キューバに行ってみることをオススメします。他方で、キューバの今の若者はマルクスに関心がなく、自分たちの社会を捉え返さずにいるんじゃないか、とも言われますが、キューバの「人々」や「キューバ社会主義」は日本から行った私には確実に魅力的なものでした。そこから新しい社会を模索していくための何かを学ぶことができれば、私たちも希望が持てるんじゃないかという気がしています。
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人民新聞社