改造軽トラを高値で押売
「ローンで購入した軽貨物自動車費用八五万円、登録料=四六万円を返せ!」井上伸一さん(仮名・二七才)は、軽貨物宅配FC=ジャパン・エクスプレスに要求書をたたきつけた。
井上さんは、「誰でも四〇万円くらい稼げる」との説明に、昨年一二月、輸送請負業者「ジャパン・エクスプレス」とフランチャイズ契約を交わした。指定の軽貨物車(八五万円)の購入が条件で、会社の斡旋で日本信販のローンを組んで購入。他に申請費・開業費名目で四〇万円、年会費六万円を支払った。
ところが入会初月度である昨年一二月の月間売り上げは、お歳暮の忙繁期にも関わらずたったの一五万円。ここからガソリン代・高速代などの諸経費を引くと、ローン返済がやっとだった。
しかし、翌一月からはこの仕事すらなくなり、代わりに一通配達して六〇円のメール便配送を紹介された。一月の売り上げ総額三万円!
「話が違う」と本部にクレームをつけると、ヤマト運輸系列「丸進運輸」の仕事を紹介された。一個配達して一二〇円の宅配で、二月の売り上げは八万円だった。
結局井上さんは、「これでは生活が成り立たない」と四月に退会。現在は別の会社で働いてローンの支払いを続けている。が、最初の説明と現実のあまりの落差に「騙された」との思いを拭いきれない。ローンを抱えたままでは生活も成り立たず、軽貨物自動車の買い戻しと登録料の返還を求め交渉中である。
年間三〇〇人が退会
名古屋爆死事件の当事者となった「軽急便」に話を戻そう。騙しの手口は、「ジャパンエクスプレス」と同じで、概ね次のようなシステムだ。
軽急便に加盟すると、加盟金三〇万円、指定の軽貨物車購入代金一〇五万円を本部に納めなければならないが、現金がない場合「開業資金全額借り入れ」制度が用意されており、信販会社と組んで、ローンを組ませるわけだ。
ところが、いざ仕事を始めて見ると「五〇万円の売り上げ!」はほど遠い。しかも斡旋される仕事は徐々に減ってくる。本部は、次々と入ってくる新規加盟者に仕事を回していくためだ。「車を買うまでは『お客様』、 車を渡したら『赤の他人』」というわけだ。
軽急便の場合、年間三〇〇人が退会していっており、同数の新規会員が入っていると仮定すれば、年間二億円(三〇万円×三〇〇、一〇五万円×三〇〇×〇・四)余りが、濡れ手に粟で転がり込むことになる。軽急便は、配達の請負ピンハネと、入会金・改造軽貨物車の売り込みで儲ける一方、会員は、廃業する羽目になり、残るのは営業ナンバーをつけた軽貨物車とローンばかりである。
大株主に三井住友・三菱
こんなインチキ企業は、どこかの詐欺師がやっているのだろうと調べてみると、あにはからんや!株主に、三井住友海上火災保険,三菱自動車工業が名を連ね、元名古屋弁護士会会長の那須國宏も役員に名を連ねていることがわかった。
「大手都市銀行が、サラ金業で金儲け」という構図と同じで、三井・住友・三菱は、自分の手を汚さず詐欺師を使ってとことん貧乏人から金を巻き上げているのだ。
三菱自動車が、軽トラ販売で儲け、三井住友海上火災が、保険全般をいただいているのは確実である。これら財閥系巨大企業は、名古屋爆発事件の当事者であり、詐欺会社=軽急便を通して利益を吸い取っていた責任は、とことん追及されるべきだ。
軽トラ買い戻し価格は五万円
以下は、大阪消費者協会に寄せられた相談だ。
@昨年五月、求人広告を見て入会。入会金五〇万円のうち二五万円は現金で残りを分割払いとした。毎月二五万円の収入と説明されていたが、実際は二ヶ月で一〇万円未満で、ガソリン代も出ないので仕事を続けられなくなった。約束と違うので解約し、登録料を返金して欲しい。
A昨年二月、代理店になるために一七〇万円で軽トラックを購入し、営業許可も取った。仕事はたくさんあるという話だったが、収入はローンの支払い分にも満たない。軽トラの買い取りを申し出たが、五万円と言われた。解約して返金して欲しい。
B新聞広告を見て応募。毎月三〇万〜四〇万円の収入があると説明されたが、半分にも満たない。一八〇万円で軽トラックを購入しているので支払いしていいけない…。
ただし、こういったケースは、消費者協会ではお手上げだそうだ。
× × ×
小泉政権下で、こうした悪徳業者が増加するには理由がある。失業の増加と、構造改革路線そのものが原因 だ。小泉の「構造改革路線」下では、違法でも脱法でも人を騙して金儲けする人が、「経済効率が高い」として奨励される。そして「規制緩和」とは、こうした悪人を許さない法的・社会的「規制」を「緩和」することに他ならないからだ。
次期総選挙で小泉自民党を支持することは、こうした悪知恵の働く人間を「勝者」とする社会を選択することなのだ。
(編集部)
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