人民新聞

パレスチナでは今

占領地に「平穏」戻ったがまだ正常には程遠い

G・モハマド

2003年 7月25日
通巻 1151号


 占領地に再び「平穏」が訪れた。イスラエル軍は、ベイト・ハヌーンとベツレヘムから軍を移動させた。両町の人々にとっては、ほっと一息つける時間だ。パレスチナ自治政府(PA)にとっては、「解放」を口にできる出来事である。ちょうど九年ほど前、オスロー「和平」開始にあたって、「ジェリコとガザを解放地とする」と宣言されたのと似ている。
 他に何点か生活を楽にする処置があった。ガザ地区を三つに分けているネトザリムとアブ・ホリのチェックポイントが開かれ、通行が自由になり、三五歳以下のパレスチナ人の出国がとうとう許可されたのだ。
 七月七日、私はガザ南部に出かけた。ナトザリム、アブ・ホリのチェックポイントが、実際にどうなっているのか自分の目で確かめたかったのだ。私は、タクシーで南端の国境の町・ラファまで行った。最初のチェックポイント・ネトリザムも、二番目のアブ・ホリも開いていて、すっと通過できた。これは二年ぶりのことだ。おかげで、南への行程が四〇分になった。チェックポイントの足止めがあった時は、五時間かかっていたのだ。
 しかし、全行程はまだ「正常」とは程遠い。パレスチナ人の乗り物は、クファル・ダロム入植地の前の通過を禁じられているので、タクシーは五q迂回して、ディル・エル・バラーの町を通らなければならなかった。入植地を守るチェックポイント付近の土地は、かつて果樹林で美しいところだったが、今や不毛の砂漠。そこで耕作地を持っていたパレスチナ農民の希望を打ち砕いている。イスラエル軍基地や入植地用のバイパスがその地を独占していて、誰がこの地の主人なのかを、これ見よがしに伝えている。
 ラファ国境に着いた。荒涼とした光景。五〇〇人ほどのパレスチナ人、男・女・子ども・老人が、エジプトへ行くために待っている。イスラエルは一日に五〇台の車しか出国させない。人数にすると三五〇人ぐらいになる。出国禁止が解かれたとなると、多くの人々が来る。一日五〇台の通行許可では、とても自由になったとは言えない。
 その上、パレスチナ側国境役人の処理能力の低さと縁故主義のため、事態はもっとひどくなる。順番を待っている人の話では、上部に「コネ」のある人が優先され、一般の人々は、先着・後着お構いなしに、永遠に待たされる。

「釈放が本物ならイスラエルは拘留者全員を釈放せよ」

 私も列に並んで、周囲の人々と雑談した。ロードマップが話題となった。列の中に、ガザ市人権センター副所長で、一五年間イスラエルの牢獄に繋がれていたことがあるジャベール・ウェシャハという人がいた。彼は、出国禁止解除を利用して、二人の娘を夏休み休暇でエジプトへやるところだった。
 彼は、イスラエル政府の「囚人」三〇〇人釈放宣言について語った。「パレスチナ人に、釈放が本物だと思わせたいのだったら、拘留者全員を釈放しなければならない。今すぐがダメというなら、長年牢獄に繋がれている者に留意して、せめて期限の設定ぐらいすべきだ」。
 イスラエル政府は、「闘争グループ(イスラム聖戦・PFLP・ハマス)のメンバーは釈放しない」「イスラエル人(軍人および民間人)攻撃に関係した者も釈放しない」、という声明を出している。彼らは「手にイスラエル人の血がついている者」という表現を好んで使うが、彼らの指導者の手が、パレスチナ人の血で真っ赤であることを忘れているのだ。
 ジャベールは、「拘留者の中には、まったく気まぐれで逮捕され、何の罪かも明確にされないで無期限に拘留されている者が多い」と語った。「囚人釈放は、PAとの交渉テクニックとして使っているだけに過ぎない。そもそも逮捕・拘留は、集団懲罰なのだ。ついで、PAとの交渉で、拘留者釈放の数を脅迫や懐柔の道具として使っているのだ」。
 拘留問題担当省によると、現在イスラエル刑務所や拘置所には、大体七千人のパレスチナ人がいる。多くは裁判すら受けることなく、行政的拘留として鎖に繋がれたままである。パレスチナ各派に休戦に同意させたいのであれば、無条件釈放が最良の手段であろう。拘留者の釈放の具体的提案がなされない限り、休戦の継続も危うい。
 七月一〇日、治安担当大臣モハメッド・ダーランは、イスラエルの防衛大臣シャウル・モファズと会った。二人は西岸地区のイスラエル占領軍の移動について話し合ったが、最も議論になったのは、「拘留者釈放問題」であった。会談後ダーランは、「拘留者問題は来週中に解決すると思う」と語った。問題は、長期収監の政治犯の釈放もあるのか、それとも、いずれにせよ釈放予定の者だけを釈放するというお決まりのインチキになるのか、である。イスラエルが釈放を真剣に考えない限り、休戦はやがて終わり、ロードマップも終わることになるだろう。 

 

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