人民新聞

日本の農業が、GMO(遺伝子組み
替え作物)商業栽培に
支配される日はやってくるのか?

ないと50

2003年 7月25日
通巻 1151号


■突然届く脅迫状の恐怖

 最近、悪質な詐欺メールの手口として、「身に覚えの無いアダルトサイト利用料金の請求」というものがある。その内容は「○万円の未払額を、△日までに指定の口座へ振りこまないと、法的措置をとります」というもの。「職場や家族に知られたらまずい」という焦りからか、ろくに確かめもせずに振込みをしてしまう男性被害者も多い。だがこれは詐欺メールだから、無視すれば問題はない。
 ではこれが、世界的に有名な巨大バイオ企業からの、身に覚えのない請求書だったとしたらどうだろう? しかも詐欺ではなく、弁護士の手による正式な文書である。そこにいかめしい文体で、数百万円単位の請求額が書いてある……。これは、世界中の農家に、今、実際に起きている話である。

■「恐喝状」の内容

 農家の間で「恐喝状」と呼ばれ、恐れられているその手紙は、こんな内容だ(〔〕内は筆者註)。
 「〔当社による〕調査の結果、○○の土地△エーカーで、ラウンドアップキャノーラ〔M社の商品名〕がまかれ、当社の所有権を侵害している証拠が得られました。(略)以下の条件が満たされるのであれば、貴方に対する法的手続きの開始を止める用意があります。条件@・直ちに○百万円を当社に支払う。(略)条件B・この示談書の内容をいかなる第三者にも知らせないこと。(後略)」
 ここで問題となるのは、この「恐喝状」が、一度もGMOを栽培した事のない農家に送られるケースがあるという事だ。先日来日したパーシー・シュマイザー氏(七二)はその一人で、彼は今、M社と法廷で闘っている。「わしの畑をGMOで勝手に汚染しておいて、賠償請求とは何事か!」と、しごくまっとうな主張を訴えているが、潤沢な資金で強力な弁護団を抱えるM社の前で、旗色は悪い。このまま彼が敗訴すれば、今後農家は、泣き寝入りを余儀なくされるだろう。金額や相手の強大さを考えたら、この「恐喝状」は、ある意味、「アダルト詐欺」よりタチが悪い。

なぜM社は弱いものいじめをするのか

 理由の一つに、GMO種子の闇市場の勢力拡大がある。例えばブラジルは、GMOを禁止している国だが、六年間も闇市場が機能しているため、国内作物はGMOだらけ。結局GMO自体、近々合法化されるだろうと予測されている。この闇市場を止めるべく、M社は見せしめ的な「恐喝状」作戦に出たというわけである。
 だが、シュマイザー氏のような「身に覚えのない」農家を「恐喝」するとは、いくらなんでも筋違いだ。ところが裁判所は、なんと「花粉が勝手に飛んできて交雑した場合でも、M社への特許侵害になる」という判決を(一審で)出してしまったのである。これは、わが国の農家にとっても、重大な意味を持つ判決である。

■商業栽培後の日本で起きる事

 日本では、まだGMOの商業栽培は始まっていない。だが始まってしまえば、花粉の飛散による交雑で、国中にGMOの遺伝子が広まる恐れがある。そうなれば、いよいよM社の「恐喝状」作戦が発動され、中小の農家は、なし崩し的にM社の軍門に下る事になるだろう。
 つまりGMOの商業栽培に関しては、「ウチはどうせ植えないから、どっちでもいい」とは、言えない状況になっているのである。GMO商業栽培の阻止は、日本の農家を大企業の支配から守る、最後の防衛線なのである。

 

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