人民新聞

脱暴力を呼びかける 第4回

   「男のコミュニケーション教室」で
「勝ちにいく」自分を発見 

「男のための脱暴力グループ」  水野阿修羅

2003年 7月15日
通巻 1150号


「最後は怒鳴ればいい」

 以前は、学生運動や労働問題の中で、ケンカするのがどんどん上手くなったものだが、「仲良くすることの苦手な自分」に気づかされた。自分は「正義」だと思っていると、人の批判は受け入れられない。人を罵るのが上手い「革マル派」にあこがれたこともあった。ケンカ慣れしてくると、人を恫喝するのも上手くなる。自分でもそれがうれしかった。だけど、連れ合いとは仲良くなれない。
 私の顔は、目尻がたれているので、一見すると「やさしく」見える(?)。そしてあまり自分から話しかけないので、「おとなしい」と見られることが多い。
 しかし、怒りがたまった時は、後先考えずに爆発する。仕事に行く途中、車を運転していて、後に乗ってる労働者の発言があまりにひどかったので、急に車を止めて、ケンカしかかったこともある(相手が驚いて逃げてしまったが)。私が怒ると、相手が引き下がるので、実際の殴り合いにはなったことがない(単に負けそうな相手にはケンカを売ってないだけかも知れないが)。
 こんなこともあって、「最後は怒鳴ればいい」という風になってしまっていた。
 これでは、妻となった女性と仲良くなれるはずもないのだが、私には「負けて勝つ」とか、ウソでも「ごめんなさい」が言えないようになっていた。

自分を追い込んでいる自分に気づく

 「男のコミュニケーション教室」の初期にやった信頼ゲーム「柳と風」は、私にとって大ショックだった。六〜七人で輪になって、真ん中に一人が目を閉じ、足をくっつけて立つ。その人が倒れるのをみんなで受け止め、押し返すだけなのだが、私は、みんなに受け止めてもらう前に、自分でブレーキをかけていたり、足が出て、「倒れまい」としていた。
 これは他でもやってみて分かったことだが、指導的立場にいたり、「自立」を勘違いしてる人が、同じように倒れられない。男性に多い。
 逆に多くの女の人は、倒れるのはすんなり出来ても、受け止めるのが苦手な人が多い。特に若い女性は甘えるのはうまいのだが、支えるのが苦手。これもジェンダーのせいだろうが、女性は子育てをするようになると変わる。男性は支えるのは得意でも、支えられるのが苦手な「甘え下手」な人が多い。
 次にショックだったのは、「あと出し負けジャンケン」。二人一組になって、先出し役の人の出したジャンケンにあと出しで負けるのだが、頭は「負けろ」と命令してるのに、手が勝手に「勝ち」にいって、「負けられない自分」がいたことだ。「頭で分かったことは出来ることだ」、と思っている自分が「出来ない」ことのショック。常に勝ちにいこうとしてる自分。「早く早く」と自分を追い込んでいる自分に気付かされた。
         (つづく)

 

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