人民新聞

ボランティアで飛び込んだカンボジア近況報告E

危険度レベル2(?)の国境地帯から出国

財布もなくしたハードな一日でした

U

2003年7月15日
通巻 1150号


ビザ切れで、ひとまずタイへ出ることに

◆某月某日
 ベトナムから帰ってきてから熱出して寝込んで、気がつけば一ヶ月がたちました。一ヶ月が…。ぬおおおー! 「ビザ更新せなアカンやんけー!」と気がついたのが、×月五日木曜日。ビザの期限は×月八日の日曜日。週末にかかるため、更新までの期限は、実質的に一日。
 移民局のあるプノンペンまでは、車で半日。六日の朝一番で行けば間に合いますが、道路事情等の不確定要素が多過ぎます。カンボジアはオーバーステイには寛容な国らしいのですが、出来ればそんなことはしたくない。しゃあない。「一旦カンボジア出るか」ってことで、ビザ無しで行けて、ここから近いタイに行くことにしました。

 タイ国境までは、車で三時間半かかります。朝六時半に、市場の近くのトラック乗り場へ。乗り場で「××行き!」と言うと、数人のドライバーがわっと群がってきて、「俺のに乗れ!」「いや俺のだ!」といった感じで、壮絶な客引きが始まります。これは、別に観光客に限ったことではなく、カンボジア人が相手でも、こんな感じです。
 今でこそ慣れましたが、初めてこの光景に出くわした時は、正直少しビビりました。ひどい奴になると強引に人の荷物を奪い、勝手に自分の車に積んでしまいます。そんなわけで、ボールをキャッチしたゴールキーパーのごとく、しっかりと自分の荷物を抱えこみ、乗る車を決めました。
 カンボジアでの都市間の移動は、プノンペンからは一部バスもありますが、地方では乗合いタクシーか、ピックアップトラックが一般的です。このピックアップトラックとは、四駆のバントラックに、積載量なんか全く無視して(カンボジアには積載量なんて概念はない)、人と荷物を積めるだけ積んで走ります。思わず「ドナドナ〜」とか歌いたくなる、素敵な乗り物です。出来れば、料金の安い、荷台に乗りたかったんですが、もう詰め込めないということで、前に乗ることに。

カジノまであるカンボジア--ポイペトの街はタイバーツの経済圏

 もちろん、前だってすし詰めです。ほとんど身動きできないまま、三時間半、車に揺られ、ポイペトに到着。
 ベトナムとの国境・モックバイは、すごく田舎で、田んぼの中に国境ゲートだけポツンと立ってる、という感じなのですが、ここポイペトは割と発展していて、高級カジノホテルが立ち並び、レストランやゲストハウスなんかもあります。何でこんな所にカジノホテルがあるのかよく分かりませんが、多分、タイではギャンブルが禁止されていて、どこぞのギャンブル好きが、「タイでダメなら、一〇〇b向こうのカンボジアで」ってことで建てたんだと思います。
 僕は、そんなものに用はないので、さっさとタイ入国。タイへの入国手続きはビザ不要なので、パスポートにハンコ押してもらうだけ。検疫はおろか、税関の手続きすらなし。簡潔極まりないです。一五分もあれば、出入国手続きが終ります。観光客は荷物チェックなんかも一切なし。いけないお薬とかやばい物でも、運びたい放題ですな。
 ここは国境を越えて商売してる人も多いらしく、タイ側から物資を持ってくるために、リヤカーが列をなして国境を越えています。彼らも、簡単な荷物チェックのみで国境を越えています。そんなわけで、ポイペトは、もう完全に、タイバーツの経済圏になってます。
 カンボジアの国境地帯というのは、日本の外務省が、「渡航延期勧告」(危険度レベル二)を出してまして、日本を出る前には、「野盗化したポト派の残党がいて、実際にはそいつらの勢力圏になっている」、などの物騒な話も耳にしました。
 で、実際行ってみてどうだったか?つーと、例によって、白人のバックパッカーがうじゃうじゃしてて(砂漠の真ん中とかでも出没しそうだな、こいつらは)、普通の観光地って感じです。確かに、なんとなくガラ悪いような感じはしましたが、そんなものは観光客の量(=落ちる金の量)に比例して悪くなっていくもんですし、「特に危険」って感じはありませんでした。ただし、これは昼間の話で、夜はどうだかわかりません。

 タイ入国後、とりあえず市場ブラブラして、昼飯を食って約二時間半後、タイ出国。「せっかくここまで来たんだし、バンコク行こうかなー」とかいう気分になりましたが、週明けにちょっとした用事があったし、金もなかったのでそのまま帰ることに。
 帰りはピックアップトラックの荷台に乗り込み、バッタンバンへ。どこに乗ろうがすし詰めになるのは一緒なんですが、座った場所が悪かったのか、荷物にしがみついていないと、振り落とされそうになります。普通の道なら、別に大した事じゃないんですけどね。何せオフロードですから。すげー揺れます。隣の子供(ガキ)が吐いてます。気合いれて荷物にしがみつくこと三時間半、さすがにハードでした。思わず「ドナドナ」歌いたくなるとか書きましたが、すいません、そんな余裕ありませんでした。
 まあそんなハードな状態でも、僕の前に座ってたカンボジア人のオバはんなんかは、涼しい顔しておしゃべりに興じてたんですけどね。何だかよくわからんが、「負けた」って思いました。しかも、惨敗。きっと座った場所が悪かったんです(負け惜しみ)。
 そんなわけで、色々と思い出深い一日でしたが、一番の思い出は何といっても…財布なくしちゃった事ですかね、わはははははははは(泣)。         (U)

 

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