人民新聞

パレスチナは今

パレスチナ・イスラエル両民衆が「和平協定案」を発表!

対等・平等原則、占領の中止・パレスチナ国家樹立・難民帰還権を明示

2003年 6月15日
通巻 1147号


シャロン政権が建設を
進める「分離壁」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二〇〇三年六月二八日、ラマラにおいて、パレスチナ人・イスラエル人市民合同の平和集会が行なわれた。「ロードマップ」がシャロン・ブッシュによって歪曲されたり、都合の悪い問題を棚上げされたりしないように、下からの運動を構築する運動体の結成集会であった。名称は「平和のためのイスラエル人・パレスチナ人合同行動団体」で、初めてのパレスチナ人・イスラエル人合同運動体である。政府や外交官や指導者に依存するのでなく、民衆側のロードマップといえよう。会議では、闘争やデモやキャンペーンを企画する作戦部、歪曲された歴史を真実の歴史に変える専門委員会、マスコミに正しい情報を提供する「メディア対策委員会」などの設置が討議された。シャロンが分離壁や入植地をつくってパレスチナをバンツースタン化し、それに「パレスチナ国家」という名称を与えようとしているのを阻止するため、集会では民衆レベルの「和平協定案」が採択された。これは新組織のマニフェストでもある。両民族の著名人一〇〇〇人以上の署名入りで公表されている。以下、その和平協定案を訳出する。   (脇浜義明)

民衆の和平協定(案)

これは、イスラエル国とパレスチナ人の代表であるPLOとの間で交わされるべき協定である。両者は両者間の歴史的紛争を終え、和平を達成し、歴史的和解を希望することにかんがみ、また両者は民族自決の原則、相互信頼・正義・平等に立脚した和平を達成することを希望することにかんがみ、また両者は「二民族二国家」原則を認めることにかんがみ、また両者は国連決議二四二号、三三八号、一九四号を紛争解決の基礎として受け入れ、以下の協定を実行することをこれらの決議の完全実施と見なすことにかんがみ、両者は以下の事項に同意し、実行することとする。


@占領の終結一年以内に、西岸地区・ガザ回廊・東エルサレムのイスラエルによる占領を、その形態及び機能の全面にわたって、終了する。
Aパレスチナ国家一年以内に、西岸地区、ガザ回廊、東エルサレム、死海のパレスチナ沿岸、ガザ回廊に接する地中海の領海部分を領土とするパレスチナ国家を樹立する。
B国境イスラエル国とパレスチナ国の国境は、本協定に特別の定めがない限り、一九六七年六月四日の休戦ライン(グリーンライン)とする。パレスチナ国は自国領土に関して全面的な主権と管轄権をもつ。両国は経済及び国境通過協定を結び、その枠内で、人・モノが自由に通過できるように国境を開くものとする。
Cエルサレム‥両者はエルサレム市の特殊性を考慮し、万人に開かれた単一体として維持することを宣言する。
 エルサレム市のアラブ人地域はパレスチナ国の一部とし、同国の首都とする。同地域の各部分は単一の連続体として、相互間及びパレスチナ国と連結し、領土的一体性をもたせること。
 エルサレム市のユダヤ人地域はイスラエル国の一部とし、同国の首都とする。同地域の各部分は単一の連続体とし、相互間及びイスラエル国と連結し、領土的一体性をもたせること。旧市街のユダヤ人地区はイスラエル国の一部とし、同国の領土に加える。
 エルサレム旧市街のムスリム地区・キリスト教徒地区・アルメニア人地区はパレスチナ国の一部とする。
 エルサレム市二地域間の自由な通行を妨げる障壁などを作ってはならない。両者が望むなら、同市の入口に検問所を置くことはできる。
 パレスチナ側エルサレム市当局とイスラエル側エルサレム市当局は、共通する市政事業を運営するため、平等原則に基づいて、合同委員会を設ける。この委員会は正・副委員長を置き、その選出は両者からそれぞれ選出され、正と副は二年毎に交替する。初代職位はくじ引きで決める。
D聖地‥両者は聖地の特殊性と、それぞれ三大一神教の信者にとって重要な意味をもつことを認め、尊重する。
 ハラム・アル・シャリフ(テンプル山)はパレスチナ国の一部とする。
 西の壁(嘆きの壁)はイスラエル国の一部とする。
 ハラム・アル・シャリフ、西の壁、及びその隣接地区の考古学的及びその他の発掘事業は、両者の合意に基づく。
E領土の交換‥領土の交換は両者の合意に基づく。
F領土外の道路‥西岸地区とガザ回廊を結ぶハイウェイを建設し、それをパレスチナ領とする。このハイウェイは、イスラエル国内の道路網と接続してはならない。
G安全保障‥両国は自国及び自国民の安全に関する権利をもつ。両国はお互いに相手国に対する武力行使及び武力による威嚇を放棄する。両国はお互いに相手国の住民や施設などへのテロ行為やテロ計画に対して闘う。両国は、外国の軍事力を自国領土内に置かないことに同意する。もし一方がこれに違反した場合、他方は自衛のために必要な措置を講じる権利をもつ。
 パレスチナ国は今後二五年間、攻撃用重火器で武装しないことに同意する。この義務は、イスラエル国が他のアラブ諸国と平和条約を調印した段階で消滅する。
 両国はお互いに相手国の領空利用に関して協定を結ぶ。
H入植地‥パレスチナ国領土となるべき土地にいる入植者は、イスラエル軍占領が終結する前に、全員完全退去する。
 入植者退去後の入植地は、建物やその他の不動産を無傷のままパレスチナ側へ引き渡す。これは、帰還難民の生活再建へのイスラエル側からの寄贈とみなす。
I水資源‥ヨルダン川から地中海までの全土にある水資源は両国の共有とする。
 水資源の管理・分配を行なうイスラエル・パレスチナ最高委員会を設置。水資源分配は両国の人口数に基づいて公正・平等に行なう。両国は、例えば海水の脱塩化などの水資源開発プロジェクトを共同して行なう。
J難民‥両者は、パレスチナ人の悲劇を、倫理的で、公正で、実現可能で、両国の性格や基本的必要性を考慮に入れ、お互いに同意できる解決方法に従って解決しなければならないことに同意する。
 イスラエルは、一九四八年から一九六七年までの各戦争において、この人間悲劇を引き起こした主たる責任があることを認める。両者は、歴史研究者 ─イスラエル人・パレスチナ人・外国人─ による「真実委員会」を設置し、難民悲劇が生じた正確な原因をあらゆる面から研究・調査し、その客観的結論を三年以内に発表することに同意する。この研究結果は、両国の学校教科書に入れて子孫に伝えることとする。
 イスラエルは、パレスチナ難民の帰還権を基本的人権の一つとして認める。この権利に基づいて、難民は、パレスチナ国またはイスラエル国へ帰るか、賠償を得て外国に永住するかを選択することができる。これは次の原則に基づいて行なわれる。@イスラエルは、歴史的な傷を癒す公正な方法として、一定数の難民が、現在イスラエル領となっている地へ帰還することを認める。その数は合意によって決定し、一〇年を限度として、年次ごとに妥当な数の帰還をはかる。A難民一人一人に対して、イスラエル内に残した財産や人生の機会喪失への賠償を行なう。賠償金は国際基金を設立して、その機関を通じておこなう。イスラエルは、難民がイスラエル内に残した財産価値などを考慮して、相当額の資金を国際基金に出資する。Bパレスチナ国が同国へ帰還することを希望する難民及び西岸地区とガザ回廊に居住する難民を吸収できるように、住居・雇用などの問題に関して、イスラエルは国際基金に協力して、パレスチナ国を支援しなければならない。
K国連決議の履行‥上記項目@から項目Hまでを実現した時点で、両国は、「国連決議二四二号と三三八号を完全履行した」と国連安全保障理事会へ共同で報告する。項目Jを実現した時点で、両国は国連決議一九四号を完全履行したと国連へ報告する。
L意見の違い‥両者は、この協定項目の履行状況を監視する国際委員会の設置を認める。両者に意見の違いが生じた場合、この委員会がそれを仲裁する。
M以上の協定が完全履行された段階で、イスラエル・パレスチナ紛争が終結したとみなされる。

 

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