人民新聞

時評・短評  テント村より

 

釜ヶ崎パトロールの会  かねはぎ あつし

2003年 6月25日
通巻 1148号


 ニガウリの炒め物が好きだ。なすびの炒め物が好きだ。スイカ半分を一人で食べるのが好きだ。種もそのまま食べて皮もかじって、Tシャツがスイカの汁でピンクの日の丸!──私は、カブトムシ以下だ。
 もっとニガウリが食べたい。なすびが食べたい。私は店の軒先のスイカの値段に暴力性を感じる。あんな水のかたまりが千円も二千円もしていいわけがない。「そこまで言うのなら畑を作ればいい」となったことは不思議ではない。だが、どこに!扇町公園があるじゃないか!三年前、世界貧困者サミットでニューヨークに行ったとき、ブラジルの土地なし農民組合の女性の発言はこうだ。「…地主の土地や家をみんなで占拠して二〇〇万世帯に分配した…。土地は人民のためにある」…断固支持 さっそく扇町公園の野宿者テント村にプランターを並べて花壇を耕した。テントの裏に越冬闘争で使った腐った畳があった。もうどうにもならない。「…これを畑にしよう!」…見事である。野宿者のテント村空間の拡大だ。できあがった野菜は、炊き出しに使おう。確かに規模は小さい。しかし、規模は小さくても至る所に自立的空間を立ち上げること、ここに思考を置こう。
 さて、私には農業の知識はほとんどない。店の園芸コーナーの何種類とある肥料・農薬・大道具・小道具達の前では、立ちつくして見つめ合うしかない。
 「この肥料はこうです」「この農薬は爆弾の材料は入ってません」…ごもっともです。当然のことながら一切の言動のない植物の種の前でも、私は為す術なしだ。我が家のネコ(太田裕美)みたいに、ニャーニャー言ってればそれなりに考えるが、もうチンプンカンプンだ。こうなるともうほっとくしかない。お天気まかせしかない。イヤ、そもそも農業ってそんなに難しいものか。種から芽が出て花が咲いて実になって…。これが植物のサイクルだ。これは弁証法である。
 スーパーで買った宮崎産のニガウリを見て考える。ニガウリといえば宮崎だ、鹿児島だ、沖縄…。暑い所でできる野菜だ。しかし、大阪と宮崎の気温がどれだけ違うというのだろう。とりあえずニガウリを一個丸ごと土に埋めてみた。…数日後、芽が出てしっかり育ち始めた。大阪産のニガウリである。これは凄い。次はトマトを丸ごと土に埋めてみた。これも芽が出てきた。だいたいトマトなんてアンデスの山で育つものだ。ほっといて育たないわけがない。種をだんごで埋めた。ほうれん草と小松菜密集!なすびいいぞ。ピーマンがんばれ!昨日はついにスイカを埋めた。
 で、公園事務所「…自給自足ですか」と、それだけ。

 

 

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