人民新聞

イスラエルに根こそぎにされても堪え、再び成長する

サボテンとパレスチナ

T・ムハマッド (ガザ現地報告)

2003年 6月15日
通巻 1147号

アーティスト・モハマド

 モハマド・アブ・サル(Mohammad Abu Sall)は、パレスチナ人アーティストである。彼らパレスチナ人アーティストの作品は、ガザ地区中部にあるブレイジ難民キャンプから発信されるインターネットホームページ(http://www.palestine-art.com)で見ることができる。しかし彼自身は、イスラエルの軍事占領のため、自分の展覧会にも、ほとんど出席できなくなっている。
 「私は、封鎖や包囲、またインティファーダのために、ラマラで開催された二回目の個展=『アイデンティティ』や、米国での三回目になる個展にも出席できず、『最後の一〇人展』にも出席できなかった」とモハマドは言う。
 最近でも彼は、米テキサス州・ヒューストンにある、アート・カー美術館(http://www.artcarmuseum.com/)で開催される第三回『メイド・イン・パレスチナ』展に参加するよう招待されていた。これは米国で開催される、、パレスチナ人アーティストの作品の、もっとも包括的な展覧会とされている。
 イスラエルの占領による移動の制限には、主に二つのタイプがある。まず、占領地内都市間での移動制限である。先日、イスラエル軍は、一六歳から三五歳までのパレスチナ人に対して、占領地から外へ出ることを禁止した。このため二七歳のモハマドは、テキサスの展覧会どころか、ガザを出ることすらできなかったのである。
 彼は展覧会で、『フォーリン・ボディ』というタイトルの絵画群を出展する予定だったという。その作品は、イスラエル軍の装甲車が彼が仕事に行くのを遮った時に思いついたそうだ。「それは、路上で人々を妨げる軍事的な機械であるという事実に加えて、私はそれを抽象的な物体として、芸術作品として、また新たな光景として見たのです。そしてその作品群に『フォーリン・ボディ』という名前をつけたのです」と彼は言う。

国境の閉鎖

 先日、私はパレスチナ人権センター(http://www.pchr-
gaza.org)を訪れ、カリル・シャヒン氏に話を聞いた。パレスチナ人に対して毎日のように行われている移動制限について、詳細な文書類を手に入れるためである。パレスチナ人権センターは、ガザ地区における最新の人権侵害の情報も集めているのだ。
 「ガザ地区は、三つの地域に分割されており、さらにこの三地域内には、外界から完全に閉ざされている区域が三ヵ所あります。その区域とは、@ラファとハンユニスがある『マワシ区域』と、Aガザ北部の『セヤファ区域』、Bファー・ダロム入植地周辺です」とシャヒン氏は語ってくれた。
 イスラエル人入植地は、ガザ地区の四〇%を占めており、それがこの分断の主な原因である。一見すると、近郊の街並みのように見えるこれら軍事基地(入植地)は、南北を結ぶ主要幹線道路を支配しており、入植者が、彼らのためだけに建設されたバイパスを通って移動する毎に、イスラエル軍はこの幹線道路を封鎖するのである。
 域外移動に関しては、また別の状況がある。ガザ地区の唯一の出口である、ラファ国境の検問所は、以前は一日中開放されていたのだが、今は一日に五時間しか開放されていない。このため、一日に三〇〇人しか国境を通れないのである。以前は、外国に住むパレスチナ人は、訪問許可を持っていればガザ地区に入ることを許されていたが、現在は全くできなくなった。そして最近出された軍令で、三五歳以下のパレスチナ人男性は、占領地域から外へ出ることが全くできなくなったのである。
 「占領軍は今年一月七日、『一六〜三五歳のパレスチナ人が、ラファ検問所を通っての域外移動を禁止する』という軍令を出しました。国境においてパレスチナ人がこれに従わなければならない、というのは、侮辱的な扱いでもあります」とカリル・シャヒン氏は、言っている。

忍耐・不動性・成長の象徴

イスラエル当局はいつも、「渡航禁止はイスラエルの安全のためだ」と言うが、カリル・シャヒン氏はこれを否定する。彼の見解によれば、「パレスチナ人労働者がグリーンライン(パレスチナ被占領地とイスラエルの境界)を通ってイスラエルに仕事を探しに行っているという事実は、「安全のためだ」という誤魔化しのウソを証明しており、パレスチナ人に対する集団処罰であるという本当の目的を明らかにするものだ」と言う。さらに、「第四回ジュネーブ会議や、他の国際人道法によると、集団処分は禁止されており、場合によっては戦争犯罪である」とシャヒン氏は述べている。
 パレスチナ人への規制に加え、現在、イスラエル軍は一般の外国人、特に国際平和活動家に対しても嫌がらせを強化している。少なくとも二人の「国際連帯運動」(ISM)の平和活動家が国外追放され、ガザ地区に入る全ての外国人は今、「被害を受けてもいかなる責任も軍に問わない」という誓約書に署名することをイスラエル軍から求められ、また「イスラエル軍の作戦を妨害しようとする」いかなる団体の者でもないと宣言することを求められている。これはパレスチナ人の生命と財産の絶滅を意味しているのである。
 私は、パレスチナ人がそのような破壊された生活をどのように耐え忍んでいるのか理解するために、モハマドに彼の作品の着想と焦点について尋ねた時の、彼の次のような答えを思い出す。
 「私はサボテンに注目しています。サボテンは破壊された村を表し、とても忍耐強い植物だからです。サボテンは、パレスチナ人にとって不動性を象徴する像です。根こそぎにされた時間を表すと同時に、やがて再び成長し始めることを象徴しているのです」。   (六月二日記)

 

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