「家を出てすぐにでした。親指ほどの石がなげつけられたのは…。・・・一瞬何が起こったのかわかりませんでした。恐ろしさと悲しみと悔しさで一杯になり、後から後から涙が出てきました。・・・/拉致された方々のことを思うと悲しくなり、同時に怒りもわきます。ですが、私にした行為は許されることなのでしょうか!私達が何も感じていないと思いますか!石が当たれば痛いし、それによって傷つけられた心はもっと痛くて深いのです。」
被害にあった中三女生徒の作文である。拉致報道以降こうした事件が続いたため、学校は、チョゴリを着て通学することを禁止せざるを得ず、女生徒たちは今も第二制服等で登下校をしている。
このほかにも、中二女生徒が、男子高校生五人に囲まれ、暴言を浴び、たばこの箱を投げつけられたり、初等科の六年生女児が登校中、中年男から「拉致するぞ」と暴言を浴びたりしている。
これまでも、核疑惑(九三年)テポドン発射(九八年)など北朝鮮に関する扇情的報道がくり返されるたびに、チョゴリ(民族服)の切り裂きなどの民族暴力がくり返されてきたが、だいたい一ヶ月程度で鎮静化に向かっていたそうだ。しかし、今回は、半年以上経った今も鎮静化していない。
東大阪朝鮮中級学校は、生徒数四三二名(うち女生徒は二一八名)、日本最大の朝鮮人集住地域である大阪市生野区にある。同校が、日朝首脳会談(昨年九月)後に起こった子どもたちへの民族暴力をアンケート調査したところ、男子生徒の二一%、女生徒の五二・三%が何らかの暴言・暴行を受けていた。男子生徒も一年生は二四%、二年生九%、三年生一・三%と学年が進むにつれて減少しており、明らかに反撃されそうな高学年は避け、反撃できない年少者や女生徒が狙われているのがわかる。
「もし、日本の学校で、女生徒の半数が通学時に突然襲われるかもしれないという脅威に晒されていたら、社会や保護者はどんな反応をするでしょうか?」と夫校長は問う。実際同校では、昨年九月以降半月にわたって、学校の正常の運営が不可能だったにもかかわらず、社会的注目度は低く、当事者の自己防衛努力に任されている。
加害者の人数を見ると二人が、三〇・七%、三人以上が五〇%で、合わせると八割を越える。つまり反撃できない年少者や女性を数人で取り囲み暴言・暴行を働くという卑劣漢の姿が浮かび上がる。
深刻なのは、加害者が低年齢化していることだ。加害者を年齢別に集計すると、一〇代が七六・三%と圧倒的多数を占めている。拉致報道以前の民族暴力は年齢の偏りはあまりなかったというから、近年の特徴なのだ。
生野区で、「朝鮮学校を楽しく支える会」の長崎由美子さんは、「ショッキングな結果です。日本の教育の歪みが象徴されているとも言えます。しっかりとした歴史教育がなされていないために、マスコミ報道を鵜呑みにしてしまうのでしょう」と語る。
「こうした事態を日本人として許せない」として「ストップ!子どもたちへの民族暴力 行動する日本人の会・大阪」が、発足する。呼びかけ人の戸田ひさよしさんに、目的・具体的行動などを聞いた。
(編集部)
戸田:自分の子どもが周りの人間の誰からか突然襲われるかもしれないという身の危険を感じながら毎日学校に通わざる得ない情況を、私達日本人は、想像すら困難なのではないでしょうか。
私達はまず、人の親として、社会人として考えねばならないと思います。
「民族暴力」とは、民族的な偏見・嫌悪感・差別意識によって引き起こされる暴力・嫌がらせなどを意味して名付けたのですが、特に子どもへの暴力・嫌がらせは許せないという思いで、この運動を呼びかけました。
以前から日朝間で何かある度に朝鮮学校の子どもたちが怖い目にあっているという話を聞いていました。この「国際化」の時代、私の親族の中にも朝鮮学校に通う子どもがいたりしまして、「他人事」ではなく、子どもにそんなことをする卑劣漢は許しておけないという気持ちは前から持っていました。
今や痴漢行為が犯罪であることは周知のこととなりましたが、子どもたちへの暴力も立派な犯罪です。こうした民族暴力の抑止には様々な方法があると思いますが、実際に市民が現場でとっちめて突き出すという実例(民間人でも犯罪に対しては「現行犯逮捕」ができる)をいくつか作ることが一番効果的だし、またそういうことができるのだという啓発宣伝をするだけでも、良識ある市民には激励を与え、卑劣な行為者には「見られている」という意識を与えて相当な抑止力になるだろうと思います。
編:会員を日本人に限る理由は?
戸田:在日外国人には、協力会員として参加していただきます。それは、今後もし何かがあった場合、在日朝鮮人の方に攻撃の矛先が向けられるということが想定されるからです。そもそも襲撃する加害者はまず日本人なわけで、その意味では日本社会の問題です。そういう加害者を生み出し、煽る社会だから、それを日本人として正していこうという運動です。だから保守派であろうが北朝鮮や総連大嫌いの人であろうが、日本人のおとなとして「子ども達への卑劣な暴力は許せない」という一点で思想信条を越えて、大いに共同してもらいたいと思うわけです。
それでも、心ない連中からの妨害も予想されますから、表に名前も連絡先も出して受けて立つよ!という人を役員にしてみんなで行動し、この運動を広げていきたいですね。。
編:今後の活動や抱負をお願いします。
戸田:当面の必要課題として、民族暴力にさらされている府下一二の朝鮮学校周辺地域ごとにグループを作り、乗降駅などで、ビラまきなどの啓発活動を行います。ビラには各グループの世話人の住所・連絡先を書き込んで、何かあった場合には、連絡をしてもらい、相談にも応じたいと思っています。朝鮮学校での公開授業や見学交流会にも積極的に参加していきます。
地域でこういう運動が根付いていくことが重要だと考えています。各地域グループが独自の活動スタイルを作りだし、大阪だけではなく兵庫・京都、さらには全国に広がってもらいたい、と思っています。
七月四日の結成集会では、朝鮮学校生徒達が、拉致報道以降に受けた嫌がらせや、その中で考えたことなどを日常生活を舞台にした寸劇として披露してくれます。是非結成集会に参加いただき、会員になって下さい。
「ストップ!子どもたちへの民族暴力 行動する日本人・大阪」結成集会が上記の要項にて開催される。編集部も呼びかけ人となっている。参加を呼びかける。 (編集部)
日時:7月4日(金)
午後7時〜
場所:エルおおさか5F
連絡先:06-6907-7727(戸田)
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