「貧乏人ファイトクラブ」集会レポート

貧乏人間抜けなケーサツを
手玉にとって大暴れ〜!の巻

2003年 6月5日
通巻 1146号

緒戦の勝利

 ◯月×日。午後十時、本日の集会場である「高円寺駅前」に赴くと、既に「集会」は始まっていた。
 持ち寄った酒と袋物のつまみを取り囲むように十数人が車座になって座り込んでいる。首謀者の一人が持ち込んだ発電器にアンプが繋がれており、かなりの音量でロックが鳴り響いている。投光器が「集会場」を煌々と照らし出し、黒地に白の「貧乏人ファイトクラブ」の旗が燦然とはためく。
 この「集会」を見て振り向かない通行人はいない。「なんだこりゃ?」「何か始まんの?」と聞いてくる者がいれば、すかざず仲間に引き入れる。そのうち踊りが始まり、徐々に盛り上がりを見せようとした時だった。
 「君たちここで何やってんだ!すぐに解散して家に帰りなさい!」。近くのポリボックスから三人のケーサツ官がやってきた。

「逮捕するぞ」

 しかし、たった三人でこの暴徒集団を鎮圧できるわけもない。「何言ってんだ。この野郎!帰れ帰れ!」と野次られてすごすごと帰っていった。この緒戦の勝利に集会はさらに盛り上がったのだが・・・・。
 しかし、天下の軽視庁はそれほど甘くはない。三〇分後、一〇人を越える制服が隊列を組んでこちらに向かってくるではないか。
 さっき撃退された隊長とおぼしき制服が「テメーらフザけんじゃねえ!さっさと片づけろ!」と、うって変わって高圧的な態度で恫喝。公安らしい私服も数人いる。確かにヤバイ雰囲気だ。見せしめ逮捕もあり得る。
 「責任者は誰だ!」と隊長が怒鳴るのだが、誰に聞いても「私はただの参加者でございます」「じゃあ誰なんだ責任者は!」「誰なんですかねぇ」こんな会話が続く。埒があかないケーサツは、「早く片づけろ!音楽を消せ!」と怒鳴り散らすばかりだ。
 一方貧乏人は、「ファイトクラブ」と言ってるんだから一応ガンとぶつかってから退くのかと思いきや、いきなり「どうもすいませ〜ん。片づけま〜す」。これにはケーサツも拍子抜けして「わかりゃいいんだよ。俺たちも好きでやってるんじゃないんだから」とおとなしくなった。貧乏人集団は、「おまわりさんもストレス溜まりまくりでしょう?音楽止めるから、一緒に飲んで憂さを晴らそうよ」などとちょっかいをかけながら片づける振りだけはして、ダラダラと時間を引き延ばす。

隊長はマジギレ

 こんなウダウダとしたやりとりにケーサツも埒があかぬと判断したのか、「じゃあ、本当に片づけて帰るんだぞ」と言って引き上げ始めた。そして隊列が駅に吸い込まれて見えなくなったその瞬間、発電器が回りライトが点灯し、大音量のロックが鳴り響いた。みんな踊りまくっている。何という裏切りだ。ケーサツとの約束も信頼関係あったもんじゃない。
 ケーサツは、血相を変えて飛んで帰ってきた。隊長はマジギレ!「お前らいい加減にしないと逮捕するぞ!」などと怒鳴り散らしている。
 こうなると、ファイトクラブのペースだ。「あれー、おかしいなぁ、何で急に音が出たの?壊れちゃったのかな?」とか何とか言いながら発電器を叩いている。ケーサツの隊長は、ただただ「早く片づけろ!帰れ!」を繰り返すばかり、貧乏人は、頭を掻きながら、「おかしい、本当におかしい」を繰り返している。
 これまた三〇分くらい埒のあかない会話を繰り返していると、隊長の怒りも長くは続かない。しまいに、「お願いだから帰ってくれよ」と懇願調に。すると「帰れって言ったって、終電終わってるもんね。じゃあ電車動かしてよ」「酒飲んでるけどバイク乗っていいの?」と切り返し、「電車動かせ!」「貧乏人は帰る家がないぞ!」のシュプレヒコール。
 さらに三〇分、埒のあかない会話を続けていると、隊長は「じゃあ、本当に本当に、片づけて帰るんだぞ」と言って引き上げ始めた。そして隊列が駅に吸い込まれて見えなくなったその瞬間、又もや・・・。

逃げ帰るケーサツ

 これが三回は繰り返されただろうか、今度は一台の中型ワゴン車が集会場に横付けされ、ケーサツ官が乗り込み、徹夜の番となった。かわいそうなケーサツは、帰るに帰れないのだ。貧乏人は、これを見てさらに勢いづき、音楽かけまくり、踊りまくりの集会が続いたのだが、さらに追い打ちをかける。横付けされたワゴン車を取り囲み、「ねえ、おまわりさん。俺たち寝る所がないんだよ。車の中で寝かせてくれよ」と車を揺すり、ドアを開けようとする。夜中の三時。眠っていたケーサツは、驚いて飛び起き、エンジンを始動させて、帰っていったのである。恐るべし!貧乏人ファイトクラブの大勝利の瞬間であった。
 ファイトクラブ勝利の秘密は、駆け引きのうまさや戦術の巧みさだけではない。「責任者」なるものを作らず、、一端はびこったら絶対に退かない執念が見える。ケーサツとの約束や秩序を意に介さない開き直りも彼らのファイトを支える重要な要素だろう。
 貧乏人ファイトクラブは、毎週東京のあちこちに浸出し、急速に仲間と支持者を広げている。近く「貧乏人新聞第3号」も発売予定。
∧追記∨ファイトクラブが大阪進出の噂がある。ヒマな貧乏人は、集まるしかない!

人民新聞社

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