またまた「野宿者差別」の行政が

大阪市が野宿生活者の荷物を
「ゴミ」として撤去─焼却!

2003年 6月5日
通巻 1146号

 5月29日午前10時頃、JR大阪駅前バスターミナルの一角にある、歩道橋階段下で、大阪市建設局西北公営所梅田出張所の指示を受けた環境事業局職員によって、付近で野宿している人たちの荷物が、事前通告もなしに「ゴミ」として撤去され、その日の内に焼却される、という事件が起こった。
 通常、こういう場所にあるものを撤去する場合、事前に貼り紙するなど、「事前通告」を行うようになっている。ところが、当日はそのような通告は一切なく、明らかに人の荷物である、と判断できるようなバッグや鞄をハサミまで持ち出して、バチバチと、バッグ等のひもを切って、撤去している。その場に居合わせた数人は、慌てて荷物を取り返すことができたものの、他の十数人の人たちの荷物は運び去られてしまった。
 撤去された品物の中身は様々だ。着替え・靴・日用品をはじめとした生活必需品、通帳・印鑑・保険証などの貴重品、そして子供さんの写真や、卒業証書など、決してお金には換えることの出来ない、大切な思い出の品もあった。
 すぐさま、荷物を撤去された一人が、大阪駅前の道路管理を管轄している「大阪市建設局西北公営所」に電話を掛けた。「貴重品もあるから、処分しないで保管しておいて欲しい」旨を伝えると、対応した職員から「大事なものであれば保管しておく」との返事が返ってきている。ところが、その日の内に荷物は焼却されてしまっていたのだ。
 6月2日と13日の2回にわたって、「釜ヶ崎パトロールの会」などの支援者も交え、「西北公営所梅田出張所」との交渉が行われた。焼却の事実確認と、「現場の状況を把握できていなかったことは、不十分だったかもしれない」との発言はあったが、2日の交渉では、「荷物を置いてる野宿者が悪い」「そんなに大事なものなら身につけて歩け」という信じがたいような暴言を吐き散らかす始末。その背後に透けて見えるのは、やはり「野宿者排除」の考えである。
 建設局の結論は、「適正な道路管理業務の一環だった」「事実確認をやり直すつもりはない」、そして「謝罪と補償についてはお答えいたしかねる」というものであった。
 この回答を受けて、6月16日(月)、被害者らは、大阪地方検察庁と大阪弁護士会に対して、刑事告訴と人権救済の申し立てをそれぞれ行った。被害者をはじめとする野宿の人たちと支援者たちは、今後も抗議行動や行政への申し入れを継続していく予定だ。
 口先で「ホームレスの自立支援」といいながら、野宿生活者の暮らしを脅かす行政のやり方は、絶対に許されるものではない。  (小比類巻 新)

「釜ヶ崎パトロールの会」(交渉の詳細など掲載)…http://www.geocities.co.jp/WallStreet/9279/

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人民新聞社

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