【インタビュー】私たちはなぜ、「連合」加盟を決断したのか?
変革の方針を明確にした「連合」の中で
「非正規雇用労働者の組織化」「均等待遇」を実現する!

管理職ユニオン東京 書記長 設楽清嗣さん

2003年 6月5日
通巻 1146号

 「いよいよ日本労働運動がおもしろくなる」と旗を揚げた「全国ユニオン」は、地域をベースに中小零細企業の労働者やパート・派遣労働者などが組織しているコミュニティ・ユニオンが集まってできた新しい産別組織だ。昨年11月3日に結成大会を開き、5日連合へ加盟申請した。
 コミュニティ・ユニオンの連合加入方針は、2001年秋、「コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク」総会で提起された。一年かけて討議を続けた結果、(1)全国ネット総体として連合加盟は行わない、(2)加入条件が整ったユニオンが加入することを決め、昨年11月に「全国ユニオン」結成、連合への加盟申請と動いたのである。
 しかし、連合側は、「連合結成時の経緯もあり慎重に対応する」として先送りとなり、加盟は6月の中央委員会で決定されることになった。
 加盟決定を前にした5月下旬、連合加盟方針を提起した中心人物の一人である設楽清嗣さん(東京管理職ユニオン書記長)に、「なぜ、連合加盟なのか?」その胸の内を聞いた。(編集部)


もはや、連合・全労協・全労連の違いはない!

「均等待遇」をいかに実現するか
 我々が、『連合』加盟を考えた理由は、『連合』が3年前に決定的な方針を社会的にアピールしたからです。『連合』は「非正規雇用労働者の組織化を重点化する。そうしない限り日本の労働組合の発展はない」と明言し、「その根幹となる要求は均等待遇である。パートタイム・派遣社員が正社員と同じような労働をしているにもかかわらず、それに相応しい待遇を得ていないという状態を改めなければならない」という方針を提起しました。画期的だと思いました。
 2点目は、非正規労働者を組織化するために、『連合』は各地区に個人加盟の「連合ユニオン」結成を決め、この「連合ユニオン」が既存の単産や組合とバッティングした場合には、積極的に調整する=組合員の複線化した組織化(二重加盟)もあり得るということを、5年前に当時の『連合』会長である鷲尾氏が私との対談の中で、明言しました。
 現在の労働運動の閉塞を、『連合』がどう打開するかについて、2点の方針を出したわけです。この新方針を見て、我々も『連合』について考え直すべきだと思いました。
 確かに、『連合』がこの方針に沿って、どれほどのことがやれているのかという点については、決して肯定的に語れる状態ではありません。しかし、これは『連合』だけの弱点ではなくて、全労連であろうが、全労協であろうが、均等待遇問題と労働組合への複線的組織化については、前進をはかれていないのです。

やれてないのは、みんな同じ
 実際、東京管理職ユニオンが争議・組織化に入った時に、既に企業内組合がある場合があります。その企業内組合が連合系であったことも沢山ありましたが、こちらも事前に話をしたりして極力捻れないような努力をしたせいもあり、喧嘩になったことはほとんどありませんでした。
 しかし、全労協系の組合とバッティングした時、二つくらいの組合からひどく怒られたことがありました。企業内組合には、「縄張り意識」があって、これを荒らされることについては強い拒否反応があるわけです。これは、連合系であろうが、全労協系・全労協系であろうが違いはないのです。
 『連合』が結成されて10余年経てわかってきたのは、「皆同じだ」ということです。とりわけ「やれていないこと」についてはみんな同じように責任があり、実際できていないのです。
 5年程前に全労協系組合の中で、「失業者問題」について、新しい方針を提起しましたが、しばらく棚晒しにされました。その事について意見書も書きましたが、「議論したくない」という雰囲気でした。左派といわれる組合の中でも、新しいことについて躊躇する保守的な体質が間違いなくあるのです。
 私たち東京管理職ユニオンは、独立系のコミュニティ・ユニオンとしてやっていますが、もはや、連合・全労協・全労連の違いはありません。極論すれば、その違いは政治的な立場だけ、あるいはどの国会議員を支持するかといった、二次的なものだけだといえます。労働組合運動の中身は、ほとんど変わらないのです。
 同じように皆弱点を抱えています。連合結成で、3つのナショナルセンターに分裂して10年経ちましたが、「何も変わらなかった」という所から出発しなければなりません。

混沌とした矛盾の中で格闘する
 じゃあ変えるためにはどうしたらいいのか?
 『連合』が、方針を転換したことは明快です。全労連も全労協も、『連合』のようには「均等待遇・複線的組織化の容認」を明確には言っていません。方針が保守的なんです!逆に『連合』の方が積極的だし、野心的です。やれているかどうかは、どこもやれていないけど、少なくとも新方針を提起したという点は『連合』を評価できます。だったら、『連合』に入ってその方針を推進すべきであると考えています。
 今『連合』の中にも、改革を推進する考え方と守旧的考え方が混在しています。当然です。これは全労協も全労連も同じだし、これからもあります。その混沌とした自己矛盾の中でやっていくことが重要だと思っています。
 つまり、『連合』は変わろうとしている。そして、その新しい方針が評価できるのならば、「均等待遇と複線化」という労働運動大変革の一翼を担いたい、というのが率直な気持ちです。
 言っておきますが、私は「連合を変える」などという不遜な考えは持っていません。あくまで、『連合』の新方針を断固支持し、「均等待遇と複線的労働組合の組織化」という労働運動の変革の一翼を担いたいということです。
 我々「コミュニティー・ユニオン全国ネットワーク」の中でも、約3分の1の人たちが『連合』加盟に躊躇しています。「大きな組織に飲み込まれてしまうのではないか?」という危惧だと思います。コミュニティユニオンの周辺では、「かつての合同労組運動が、総評全国一般に統合されたために衰退した」として反対している人もいます。

「連合」からの援助は期待せず
 「『連合』に加盟すれば、資金援助を期待できるのか」という議論をする人がいたので、私は激怒したことがあります。実際『連合』からは「いくら加盟費を払うことができるのか?」と聞かれているくらいで、「資金援助を期待できるから『連合』加盟を決める」といったさもしい話ではないのです。「非正規労働者の組織化」を目標に置いて前進しようとしている時に、『連合』から援助を受けて得をしようなどというさもしい考えで『連合』加盟はあり得ません。財政的負担がかかっても、『連合』と共に未組織の非正規労働者の組織化を前進させるということです。
 コミュニティ・ユニオン運動とは、(1)組織は個人加盟を基本とし、(2)未組織の非正規雇用労働者を徹底的に組織する、(3)地域コミュニティーの団結を大切にするという3点です。
 『連合』が、「連合ユニオン」を結成したということは、我々のコミュニティ・ユニオン運動に触発されたということです。だったら、我々がやろうとしていることを『連合』の組合と協力しながらやっていけばいいじゃないですか。我々の特徴と力と蓄積を生かして、『連合』の中で努力するということです。

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