もんじゅ判決

今後、改造工事NO!
再処理ストップを!

たんぽぽ舎・柳田 真

2003年 3月5日
通巻 1137号

 1月27日、名古屋高裁金沢支部は、『高速増殖炉「もんじゅ」の設置許可は無効だ。原子炉施設についての国の安全審査は誤りで全面的なやり直しを必要としている』と判決しました。但し「地震による事故の危険性」(耐震設計)などは残念ながら却下(負け)されました。
 全体的には朗報で、大きな意義をもつ判決です。数多くの原発裁判で、初めての勝利でもあります。判決の勝利の3点と、却下された点(負け)と今後の課題について、日本核武装の疑惑について私見を述べさせていただきます。

勝利の中身─3点


 判決の全文(約900頁)を見ていないので、新聞報道(要旨)を私流にまとめますと3点。
(1)もんじゅは試運転開始早々(1995年)ナトリウムもれ事故を起こした。その事故は安全審査では予想しなかった形で始まったし、事故を拡大させないために重要な床ライナ(鉄板)と呼ばれる鋼鉄内張りの健全性についての検討が誤り。
(2)蒸気発生器の伝熱管破損の危険性について─高温ラプチャ(破裂)発生の可能性を排除できず、水と反応したナトリウムが炉心に至り、制御不能などで炉心崩壊を起こす可能性がある。
(3)炉心崩壊事故の危険性=安全審査には再臨界の際のエネルギー評価が欠落し、積極的な調査を尽くしたか?─は大きな疑問。
 総じて常識で言えば、「安全」審査の名に値しない審査が、国策の名で、さも権威があるかに扱われてきていたのが、今回の判決では誤りと判断されたのです。この意義は巨大です。これは長年の運動の反映でもあります。


負けた点(却下されたもの)

 ほとんどのメディアで「完全勝訴」の垂れ幕を掲げる住民側弁護士の写真が掲載されたこともあり、判決の負けた面(却下された面)が過少に扱われている印象があります。今後、浜岡原発(東海大地震の震源域の真上に4機もある。さらに5機目を建設中)や島根原発など、地震や地盤(耐震性)で電力会社と闘っている運動体に影響が心配されるので、あえて述べておきます。
 1月28日の「東京新聞」に載った、もんじゅ訴訟争点表を参考にすると、「地震による事故の危険性について」住民側の主張は却下されています。判決全文(900頁位)をよく検討してからでないと詳しくは言えませんが、地震・地盤の判決の影響を軽視してはいけないと思います─今後の前進のために。


地震による事故の危険性

◇住民側
 「安全審査時の耐震設計審査の基準の手法は現在の水準と比べ、古く妥当ではない。複数の断層が同時に動くと損壊する恐れがある」
●2審判決
 「活断層の連続性は認められず、同時活動の可能性も極めて小さいと考えられる。耐震設計などの原告らの主張は、すべて理由がない」

今後の課題
*国の上告は不当だ!
 上告理由は憲法違反しか認められません。判決の認定した事実が違うとか、法律の解釈に疑問があると言うようなことは上告理由にならないのです。
*もんじゅ改造工事はNO!
 国の魂胆=もんじゅ改造工事の着手やめよ。工事予算は凍結せよ。福井県、敦賀市が同意しなければ工事は止めてくれます。
*もんじゅを廃炉に!の運動を盛り上げる。もんじゅは税金のムダ使いだ。
*再処理工場をやめさせる。プルトニウムの使い道がなくなるわけだから。
*大事故の起きる前に、原発から撤退せよ─急いで!


なぜ強行か?─日本核武装の疑惑

 もんじゅ判決について数多くの報道と評論が出ています。にもかかわらず、触れられていない重要な問題があります。それは─なぜ日本はこれほどもんじゅにこだわるのか?なぜ再処理工場(プルトニウム抽出)にこだわるのか?─です。国家財政が400兆円を超す国債(借金)で破綻寸前なのに、なぜ巨額の税金を投入し続けるのか?─です(もんじゅだけですでに1兆円を超える税金プラス人件費が投入されている)。
 私は、日本の保守支配層の深層底流に、脈々と流れる日本核武装の狙いがあると思います。
 もんじゅをやめれば、再処理(プルトニュウム抽出)をやめれば…、プルサーマル(普通の原子炉=軽水炉でプルトニウムを燃やす)をやめれば…、その瞬間に日本のプルトニウム(原水爆の材料)は余剰になります。(今でも余剰だが)アジアと世界から疑惑の眼と非難が集中します。北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に文句も言えなくなります。もんじゅ廃せ 原発やめろ!の運動は、日本の核武装を防ぐ反戦平和運動としても、重要な位置を持つと思います。

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人民新聞社

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