「イラク復興」の利権に群がる現代の「死の商人」たち
戦後処理・復興事業をめぐって、利権争奪戦が始まった。ブッシュ政権は、自国の主導権を頑として譲らない。戦争の目的が何であったのかは、彼ら自身が示している。正義も道理もない侵略戦争を始めておいて、「血を流したのは俺達だ」と言って傀儡政権を樹立したり、その国の資源を略奪していいはずはない。
アフガンでは、破壊するだけ破壊して、空爆の真の目的であったパイプラインの建設に目途が立つと、アフガンからさっさと引き上げて、日本をはじめとする他国に復興資金拠出を押しつけた。具体的には、米国の石油資本である「ユノカル」の中央アジア支配人であったカルザイを大統領に就け、ブッシュ政権の念願だった天然ガスパイプライン建設には着手したが、国際社会に約束したはずの復興資金は全く出していない。ブッシュの言いなり=小泉政権が、中心となってそのツケを払っている。
ブッシュ政権はイラクにあっても、「戦後復興」の名の下に、親米イラク人を暫定統治機構・臨時行政機構などにつかせて親米傀儡政権を樹立し、世界第2の埋蔵量をもつ石油に関する利権はじめ、さまざまな権益を米国系企業に与えようとしていることは間違いない。
すでにブッシュ大統領のお膝元、テキサス州の石油資本やブッシュ政権内の各閣僚が関与するエネルギー産業・軍需産業・ゼネコンなどが復興費を当て込んで計画を練っているという。「死の商人」と言えば、かつては武器商人を指していたが、今は、兵器産業と投資会社を通して繋がった建設業界が、その名に値する。その代表は、弊紙でも紹介した「ベクテル」である(1124号参照)。
戦争はアメリカにとって、巨大な公共事業として機能している。国民の5%以上が常に勤務し、毎年日本の実質予算と同額が支出される。日本の公共事業との違いは、人々の生命を直接破壊しながら、資金の出所が他国であることだ。しかもドルは国際的な決済通貨であるために、ただ印刷しただけで価値あるものとして扱われる。これを放置するなら、戦争は失業や不況の時に求められる危険な手段となるだろう。
アメリカが破壊した建物を再建するのに日本がカネを払い、しかもアメリカに受注する権利があるとするなら、なるべく多く破壊した方がトクになってしまう。
今回のイラクでも、日本は復興費用の拠出を求められている。しかも復興に関わる企業は、ほぼアメリカ企業が独占し、国連の関与すら拒否している。その一方、副大統領を出したハリバートン社は早々と受注を決めている。
今回の戦争で明確になったこと
今回の戦争で明確になってきたことは、次の2点である。
すなわち、この戦争は、(1)米国の新保守主義者の言い分にあるように、一方で武力で侵攻し、中東諸国に親米そして親イスラエルの傀儡政権を樹立させる新たな帝国主義戦争である。とともに、(2)中東地域の石油、天然ガスなどのエネルギーを収奪する新たな植民地主義戦争である、と言うことである。
さらに、新保守主義(ネオコン)メンバーのひとり、元米中央情報局(CIA)のジェームズ・ウルジー元長官は、次のことを公言してはばからない。すなわち「イラク戦争は新たな中東づくりの一部にすぎない。敵は(1)イランの宗教支配者、(2)イラクやシリアのファッシスト、(3)アルカイダなどのテロリストだ。米国と連合軍の進軍は続く」と。
正義も道理もない戦争復興に日本政府は金を出すな!
このように、21世紀の世界各国のあり様を根底から揺さぶり、破壊するのが「ブッシュ・ドクトリン」であり、米国の対イラク戦争である。戦後復興もこの策略にそって行われるのは明白である。このような策略に加担することは、全世界の不安定性を増加するだけである。
この3月、米英両国が出したイラク攻撃に関する「新決議」が国連安保理で承認されない場合、日本政府は「戦後復興費を拠出しない」と言明していた。
日本政府は、自ら言明していた通り、正当性がない戦争の戦後復興に一切拠出してはならない。戦後復興はイラク国民自身の手にゆだねるべきである。決してアメリカ政府の意のままにさせてはならない。日本政府は、このような戦後復興の名を借りた侵略政策に対して、貴重な国民の税金を1円たりとも拠出してはならない。
一方、日本政府は「人道支援」を強調している。しかし、過去の歴史をつぶさに見るにつけ、日本政府の人道支援が現地で十分効果を上げ、機能しているとは言えない状況がある。したがって、実績と信頼性があるNPO/NGOを日本政府は財政面から積極的に支援すべきである。
さらに日本政府は、「盟友」である米国に対し、戦後復興に拠出した国の間で完全な国際一般競争入札を行うなど、これにより米国系企業さらにブッシュ政権に関連する企業に復興事業が優先的にまわらないよう進言すべきである。くれぐれも世界各国から集めた資金が、「勝てば官軍」として米国系産業、企業の利権とならないよう監視しなければならない。
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